こんにちは。藤本です。
今回はリスニング対策で最も重要なシャドーイングの方法を解説したいと思います。
そもそもなぜシャドーイングか
どのように脳の中で英語を理解しているか?
まずリスニングがどうやって出来るか、というメカニズムを理解しておきましょう。
脳の中には、覚えた単語や構文が格納されています。
これを辞書と言います。
そして、耳から英語を聞いたときに、脳は聞こえた音と、脳の中に格納されている辞書とをマッチングさせて意味を探ろうとします。
そして、マッチングが成功したら、聞こえた音が何の単語か、どのような構文かが理解できるわけです。
英語が聞き取れない3つの原因
英語が聞き取れない場合、3つの原因があります。
1つはそもそも知らない単語や構文を使っている場合です。
これはスクリプトを見ても意味が分からない場合が当てはまります。
読んでも分からない文章や単語は、当然聞いても分かりませんよね。
この場合は、どれだけシャドーイングをしてもリスニングは上がりません。
リスニング以前にまずは単語や構文を覚えて、スクリプトを読めば意味が分かる状態にしましょう。
2つ目に単語自体は覚えていても、発音を間違って覚えているケースです。
このケースは、スクリプトを読んだ段階では分かるけど、スクリプトを見ながら音源を聞くと
「あれ?今この単語発音した?」
という箇所があるので、そこで分かります。
つまり自分が思っている発音と、実際の発音がかけ離れていて、聞こえた音がその単語だと認識できないわけですね。
これもまずは正しい発音を覚えることが先決になります。
3つ目は、スクリプトを読んだら分かるし、スクリプトを見ながら音源を聞くと、きっちりどの単語も発音しているのは分かるけど、スクリプト無しで聞くと分からないというケースです。
この状態の場合、音源を聞き始めて最初の数秒はついていけるけど、だんだんついていかなくなるという現象が良く起こります。
これは、先ほどの脳のプロセスのうち、聞き取れた音と、脳の中に格納している辞書とをマッチングさせる脳の回路が弱いことから起こります。
脳の回路が弱いと、マッチングのスピードが遅いんですね。
だから、最初の方はついていけても、そのうち脳がオーバーフローして、ついていけなくなります。
シャドーイングの効果
シャドーイングが有効なのは、この3つ目の原因の場合です。
だから、1つ目、2つ目でつまづいている場合は、シャドーイングの効果はあまりありません。
まずは単語と構文をしっかり覚えましょう。
3つ目の原因の場合、マッチングさせる脳の回路が弱いのですが、シャドーイングはこの脳の回路を鍛えてくれます。
だから、シャドーイングを正しく行なうと、聞こえてきた英語が脳の中で辞書とマッチングされるスピードが速くなり、常に聞こえてきた音とほぼ同時に内容が理解できるようになります。
シャドーイングで気を付けること
シャドーイングは既に持ち合わせている辞書と、聞こえた音とをマッチングさせる脳の回路を鍛える方法なので、正しく実施することが重要です。
この実施方法が間違っていると、効果がほとんどないばかりか、時間と労力を使うことになり、むしろマイナスの影響が大きくなります。
シャドーイングの正しい方法
では、どのような方法が必要かを説明します。
全部で8つのステップで行います。
1.1分間の音源とスクリプトを準備する
まず音源を準備します。
この音源は、
①崩れていないフォーマルな英語
②スクリプトがあること
③ナチュラルなスピード
であればどのような音源でも構いません。
何もなければ公式問題集の音源を使うのが最も良いです。
公式問題集の音源は1分以上あるので、その音源を1分前後の長さで区切ります。
音声を分割するソフトなどがあるので、それを使って1分前後の切りが良いところで分割します。
このときに、1分前後、という長さは必ず守ってください。
この後のプロセスを考えたときに2分以上の音源だとシャドーイングの完成まで時間がかかり過ぎて、効果が落ちます。
長くても1分15秒までで区切ってください。
2.スクリプトの理解
スクリプトを見て、全文を理解します。
先ほど説明した通り、シャドーイングの効果は、既に頭の中に入っている単語・構文と、聞こえる音とをつなぐ回路を鍛えることです。
よって、知らない文章をどれだけシャドーイングしても効果はありません。
なので、最初に準備した英文のスクリプトを全部理解するようにします。
分からない単語や構文はあらかじめ調べて理解するようにします。
3.スクリプトを見ないでシャドーイング
最初にスクリプトを見ないで、音源だけを聞いてシャドーイングをしてみます。
これを3回ほど繰り返します。
このプロセスの目的は、一旦単語を見ずに、単純にどう聞こえるかを確認することです。
単語によっては自分が思っている単語の発音と実際の発音が違うことがあります。
スクリプトを見ながら音を聞くと、自分がこういう発音のはずだと思い込んでいる頭で聞いてしまうので、一旦スクリプトを見ずに音を確認します。
4.スクリプトを見ながらシャドーイング
次にスクリプトを見ながらシャドーイングします。
これも3回繰り返します。
このプロセスの目的はスクリプトを見てもついていけない箇所を認識することです。
その箇所は自分が思っている発音と聞こえてくる発音とのギャップがあるということです。
この箇所については、聞こえてくる音が正しい発音なので、発音の認識を改めるようにします。
いわば発音の辞書を作っていく作業ですね。
5.1センテンスごとに分けて暗唱する
イヤホンを一旦外して、ワンセンスずつスクリプトを口に出して読みながら暗唱していきます。
このときは音源は聞きません。
1つのセンテンスをスクリプトを見ずに100%言えるようになれば、次のセンテンスに移ります。
このプロセスの目的は、①構文を頭の中に入れてしまうことと、②口の筋肉を英語用に鍛えることです。
まず①の目的ですが、構文を頭の中に入れることで、この後のプロセスで行うシャドーイング時に、辞書と発音とのマッチングが出来るようになります。
次に②の目的ですが、英語の発音って日本語の発音と違う筋肉を使うので、慣れないうちは詰まらずにワンセンテンス発音できなかったりします。
ワンセンテンスずつ暗唱することで、口の筋肉を英語用に鍛えていき、ワンセンテンス詰まらずに発音できるようになります。
6.全スクリプトを音源を聞かずに音読する
次に全スクリプトを音読します。
この段階でも音源は聞きません。
3回行いますが、徐々にスピードを上げていきます。
最後の3回目は早口言葉レベルにします。
このプロセスの目的も口の筋肉を英語用に慣らすことです。
特に早口言葉レベルでしゃべることで、この後のシャドーイングのスピードについていきやすくなります。
7.スクリプトを見ながら1分間の音源を聞いてシャドーイングをする
1分間の音源を聞きながら、スクリプトを見てシャドーイングします。
1回だけで良いです。
このプロセスの目的は脳の回路の構築です。
目から入ってくる構文や単語の情報と、耳から実際に聞こえてくる音とをマッチングさせていきます。
8.スクリプトを見ないで1分間の音源を聞いてシャドーイングする
最後に、スクリプトを見ないでシャドーイングをします。
これは100%の精度になるまで何回でも行います。
このプロセスの目的も、脳の回路を強化することです。
聞き取れる音と、脳の中に入っている構文や単語とをマッチングさせていきます。
100%の精度というのは、自分の口で発音した音を録音して、音源とタイミングを合わせて同時に音を流すと、ピタリ一致しているレベルです。
これが出来るようになるまでは慣れないうちは数時間かかることもあると思います。
慣れてくれば1時間ほどで出来るようになります。
シャドーイングに関してよく頂くご質問
「時間がかかり過ぎる場合どうすればよいか」
1つの音源を100%の精度にするのに時間がかかり過ぎる場合、具体的には3時間以上かかる場合は、音源を半分の30秒にして実施します。
単純計算ですが、30秒にすれば完成までの時間も半分になるはずです。
慣れるまでは短い音源でシャドーイングを行うようにして、慣れてくれば1分間の音源に戻します。
「シャドーイングはどのくらい続ければ良いか」
このシャドーイングを1週間続けた後、それまで聞き慣れた音源を聞いてみると明らかに英語の聞こえ方が変わっているはずです。
英文がゆっくりというか、くっきり聞こえる感覚になると思います。
同時に、脳の回路が鍛えられるので英文を聞いて意味を理解するまでのスピードも速くなっています。
この効果は3-4日では感じられません。
なので、最低1週間は続けてみて下さい。
ただし、シャドーイングを1週間行っても、その効果を感じるのは1-2日ほどになります。
やがて元のような聞こえ方に戻ってしまいます。
ですので、可能であればずっとシャドーイングを継続したいところですが、上記のような100%の精度で行うには時間がかかり過ぎるので、こればかりやるわけにはいきません。
そこで、1週間シャドーイングを継続したら、次の1週間は多聴を行い、また次の1週間はシャドーイングを行うなど、多聴とローテーションを組んで行うようにします。
そうすると、2度目には効果が3-4日ほど続くようになり、3度目には1週間ほど続くようになるなど、次第に効果が長続きするようになります。
「実施してみたが、効果が感じられない」
1週間行っても効果が感じられない場合は、以下の3つのどれかが原因の場合が多いです。
①1分間の音源を使っていない
5分とな長い音源を使って実施した場合、100%になるまで時間がかかり過ぎ、精度も95%ぐらいで妥協してしまうことが多くなり、結果として効果が出ないことになります。
②手順をどこかアレンジしている
8つのステップのうちどこかを省略したり、アレンジしたりしていると、そのステップで目的にしていることが達成できずに効果が出ないことがあります。
③100%の精度の判定が甘い
100%にせずに95%ぐらいで妥協してしまうと、効果が薄いです。
大変ですが、100%になるまできっちりやり続けましょう。
「言われた通りにやっているが効果が感じられない」
稀に100%のシャドーイングを行えていても効果が出ない場合があります。
シャドーイングを行うと普通の人は、頭の中で音と辞書を結びつける回路が働くのですが、その回路を働かせずに英語を「音」として聞き取ってしまい、その「音」を忠実に再現できてしまう人です。
経験上、子供の頃から音楽をやっていた人などに多いです。
こういった人たちにもう1つ上のレベルの方法があります。
それがオーバーラッピングです。
シャドーイングは、聞こえた音源を0.5秒遅れぐらいで発音する方法ですが、オーバーラッピングはその時間差を作らず、完全に音源とシンクロさせて声を出す方法です。
これはもちろんスクリプトを暗唱していることが前提になる方法ですが、これを行うとより音源と一致しているかが明確に分かるようになります。
またそのときに、「音」を意識するのではなく、頭の中で構文や単語を意識しながら発音するようにします。
そうすると音と辞書とをつなげる回路が働くようになります。
まとめ
以上、シャドーイングの方法とそのメカニズムについて書いてみました。
実際に、過去にはこの方法で、IELTSリスニングセクションのスコアが5点台から7点台に、6点台から8点台まで一気に伸びた人も多数います。
なかなか大変で実施するのに気合いが必要ですが、効果は絶大なので、是非実施してみて下さい。