こんにちは。藤本です。
リスニング力やライティング力などと比べて、スピ―キング力のトレーニング方法というのは、あまり確立されたものが無かったりします。
ゆえに、IELTSの取り組みをしている人の中でも、スピーキングセクションは放置されているケースが多く、放置しないにしても、スカイプの英会話レッスンをただ漫然と受講しているだけ、という人が多いと思います。
残念ながら放置したり、漫然と英会話をするだけでは、なかなかスピーキング力は上昇しません。
そこで、今回はIELTSスピーキングのトレーニングについてまとめてみたいと思います。
目次
はじめに:IELTSスピーキング対策の理論
まずIELTSの特性とスピ―キングの特性について見てみたいと思います。
その特性が分かると、この後に行うトレーニングの納得度が高まります。
1.IELTSスピーキングセクションの傾向
IELTSのスピーキングセクションは、似た質問が何度も出る、という特徴があります。
実際に記録を取っていくと、特にPart1では、何度も同じ質問が出されることが分かります。
受験する時期により、質問の入れ替えはありますが、例えば
・(社会人なら)仕事の内容
・(学生なら)勉強の内容
・今住んでいる場所の話
などは、ほぼ共通して常に出題される質問です。
その他の質問も、週末の話や、スポーツの話、買い物の話など、出題されるテーマは一定の範囲の中に納まります。
これは、IELTSが誰でも答えられるような質問を準備する必要上、そうならざるを得ないのです。
だから過去の出題履歴などを追っていけばある程度出題される問題も予想可能、ということになります。
そしてIELTSのスピ―キングは、Part1、Part2、Part3に分けて出題されますが、Part2の1分間スピーチ以外は、考える時間が与えられません。
つまり聞かれたら即、答えなければならないわけです。
Part2にしても、準備できる時間は1分間です。
例えば、「最近経験したパーティ」というテーマで、パッと思い浮かぶなら良いですが、
「パーティなんて最近経験してないぞ、何言ったら良いんだろう・・」
と考えるうちにあっという間に1分間は経ってしまったら最悪です。
IELTSのスピ―キング試験で困るのは、そもそも何について話せばよいかのネタが浮かばないことがあることです。
それを極力なくすために、事前に予想される出題に対して、何を言うべきかを準備しておくというのが、IELTSスピーキング対策として大きなポイントになります。
パーティのことを聞かれたら、この経験について言う、とあらかじめ決めておけば質問に対して即答できる確率が高くなるわけですね。
2.スピ―キング力上昇の原理
次に、スピーキング力がどのように上昇していくかの原理を整理しておきます。
まず
「スピーキングはその場で英作文をしながらしゃべるのではなく、知っているフレーズ(数ワードのかたまり)を組み合わせて口から出すものである」
と考えましょう。
ちょっと意外かもしれませんが、日本語だって、実は考えて作文しているのではなく、知っているフレーズを組み合わせてしゃべっているんです。
例えば、
「お世話になっております。」
という表現、社会人でお客さんと接する仕事であれば、日々使う言葉ですね。
この言葉、文法的には
「お+世話+に+なって+おります」
と分解が出来ますが、だからと言って、いちいちその文法要素を考えながら作文したりしていませんよね。
完全に
「お世話になっております。」
という決まり文句のワンフレーズで覚えています。
そして、このワンフレーズは、多くの人は、学生時代までは使うことがないフレーズです。
だから大学生の会話にこのフレーズは出てきません。
しかし、社会人になって数か月も経つと
「もしもし、わたくし、株式会社〇〇の××と申します。いつもお世話になっております。△△部長はいらっしゃいますでしょうか?」
という流れで、ほとんど考えずに口から流暢に出てくるようになります。
もちろん、ここで使った
「わたくし、株式会社〇〇の××と申します。」
「~はいらっしゃいますでしょうか?」
もそれぞれワンフレーズで覚えてしまっています。
これがスピーキングの実態です。
「スピ―キングとは、知っているフレーズを組み合わせて口から出すもの」
というニュアンスは伝わりますでしょうか。
だから、その場で英作文をしてしゃべるという方法で、スピーキング力を鍛えようとすると、とても遠回りになります。
スピ―キングはフレーズで覚えて、そしてその数を増やす、というのが近道なんです。
第1ステップ:準備作業
では、最初にお伝えした2つのポイント(言うべき内容を準備しておく、フレーズで覚える)を踏まえて、IELTSスピーキング対策について説明していきます。
1.ネタの準備
まず最初はネタの準備です。
IELTSスピーキングセクションで想定される質問に対して、どんなことをしゃべるのかというネタを準備していきます。
想定される設問や過去に出題された質問は参考書にも書かれているし、ネットで探せばいくらでも出てきます。
これらの設問を集めて、「アクティビティ」「日常」「場所」「人」などの項目にグルーピングしていきます。
(グルーピングすることで、この後にお話するネタの使いまわしがしやすくなります。)
そして、それらの質問に対して、どのようなことを答えるかネタを準備していきます。
例えば、「尊敬する先生」という質問であれば、話を展開しやすそうな先生を一人決めておきます。
「今まで訪れた印象深い場所」というテーマであれば、話を展開しやすそうな場所を1つ決めておきます。
このとき、例えば質問が50問あったら50問すべてに違うネタを準備する必要はないです。
むしろ、50種類の答えなんて作るのも大変だし、覚えるのも大変です。
だから、なるべく1つのネタを複数の質問に紐づけて、色々な質問に対して、1つのネタで使いまわせるように準備しておきます。
例えば私の場合、「すき焼き」というネタがありました。
「すき焼きとは、日本の鍋料理で、薄くスライスした牛肉を野菜と共に、醤油、砂糖、みりんで味付けした料理である。」
という10-15秒くらいの英文スクリプトです。
そのネタを使えそうな質問は、すべてこのネタに話を持っていっていました。
例えば、「好きな食べ物は何ですか?」と聞かれたら、「私はすき焼きが好きです。すき焼きとは・・・」と持っていってネタにつなげる。
「最近パーティをしましたか?」と聞かれたら「最近すき焼きパーティをしました。すき焼きとは・・・」とつなげる。
すき焼き関連で思い浮かぶいくつかの質問を、あらかじめこのネタに紐づけておきます。
そうすると準備するネタの数を減らすことができます。
このように、複数の質問で使いまわせるようなコアなネタを10個ぐらい作っておくネタ作りもかなり楽になります。
2.フレーズのテンプレート化
次に、参考書にある解答例や、英会話系の教科書にある使える表現をどんどんノートに書き出していきます。
これがフレーズのベースになります。
ここで「使える表現」をどのように選択するか、ということですが、これは主語や目的語を入れ替えれば他の内容でも使える表現を選択していきます。
いわば、スピーキングのテンプレートを作っていくような作業です。
例えば
This job gave me a good opportunity to know various areas of business.
という文章があったときに
~ gave me a good opportunity to ~「~は~する良い機会を与えてくれた」
というフレーズは、主語やto以下が変わっても使えそうだなと思ったら、その部分をノートに書きとって覚えていくんです。
それらのフレーズは、主語がこれで、述語がこれで、みたいに理屈で覚えるのではなく、音と意味をセットにして、まるで1つの単語かのようにかたまりで覚えていくと良いです。
そうして覚えたフレーズが一定量を超えると、言いたいことが覚えたフレーズの組み合わせで言えるようになってきます。
3.スクリプトを準備する
1.のネタを、2.のテンプレートを使いつつ、スクリプト化していきます。
Part1用なら15秒、2‐3センテンスくらい。Part2用なら1分半くらいのスクリプトを準備していきます。
この作業は2と同時並行してやってもOKです。
全部50問くらい(余裕があればもっと)スクリプトを準備すると良いです。
面倒かもしれませんが、実はこの50問のスクリプトを作るプロセスが重要です。
50問分のスクリプトを作ろうと思うと、色んな表現を使わざるを得ないので、スクリプトのバラエティが強制的に増えていくんですね。
これが自分が使える表現の幅をぐっと広げてくれます。
それからこのスクリプトは第2ステップで修正作業をかけていきますので、最初の段階では正しさはあまり気にせず、どんどん作っていきましょう。
短期間で一気に作ってしまうのがコツです。
こうして50問(もしくはそれ以上)のスクリプトを準備していきます。
最初に書き起こすのは大変ですが、スクリプトは一度作ってしまえば、あとは受験のたびに同じものが使えますので、時間があるうちにさっさと済ませてしまいましょう。
第2ステップ:修正作業
第2ステップでは、準備した内容をどんどん進化させていくプロセスになります。
1.スクリプト修正
まずは第1ステップで作ったスクリプトを修正していく作業です。
ひとまず自力で作ったスクリプトは、文法ミスや不自然な言い回しがたくさん含まれていると思います。
これを他人の力を借りて添削していきます。
周囲に添削をしてくれそうな人がいるなら、そういう人に頼んで修正をしていきます。
そういう人がいない場合、一番良いのが、安価なスカイプ英会話を利用することです。
スカイプ英会話で、IELTSを想定した質問をしてもらい、その答えを言うときに、このスクリプトを使ってしゃべります。
そして、言い回しの修正を受けたら、その部分のスクリプトを上書きしていきます。
スカイプ英会話では、ゼロから頭の中で英作文してしゃべる練習をしていても、なかなか定着していきません。
なぜなら、その場で組み立てた英文なんて、次に同じことを聞かれたときに、自分でも同じ表現が再現できないものですし、その場で修正してもらっても、自分の知識を上書きする手段がありません。
だから準備したスクリプトを話してみて、そのフィードバックを受けることに専念した方が、よほど費用対効果は高いです。
苦労して作ったスクリプトを修正してもらえれば、記憶にも残るし、もちろんスクリプトを上書きすることで、記録にも残せます。
このスクリプト修正作業を繰り返して、ひたすらスクリプトのアップデートをしていくようにします。
2.発音矯正
この段階で、もう1つ修正する要素があります。
それは発音です。
発音は最終的には発音矯正のプロに修正してもらうのがベストだと思います。
が、そこまで時間とお金をかけなくても、IELTSの6.0や7.0なら、伝わりさえすれば何とかなるところがあります。
もちろん上記のスカイプ英会話でも、発音を修正してくれることがあると思いますので、それはそれで大いに活用してください。
それと同時に、是非実施して欲しいのが、自分の英語を録音して、自分で聞く、という作業です。
これは正直、面倒だし、聞くのも恥ずかしいのですが、一度やるとその効果が分かります。
自分の声って録音して聞くと他人の声のように聞こえますよね。
それと同じで、自分の英語を録音して聞くと、まるで他人の英語のように聞こえて、クセとか分かりづらい発音とかがよく分かります。
なので、録音をしながら自分の発音をチェック・修正していくというのは一定の効果があります。
第3ステップ:本番モード構築作業
暗唱と英語モード構築
IELTSスピーキングで最後に行うトレーニングが本番モードの構築です。
これは具体的には、試験前の1週間前から準備したスクリプトを暗唱していく作業です。
50問準備したのなら、その50問を口に出しながら覚えていく作業です。
この作業は必ず1週間続けて下さい。3日ではダメです。
なぜか1週間続けていくと、不思議と脳が英語モードに切り替わります。
英語モードに切り替わると、覚えたフレーズの組み合わせが自在にできるようになるし、不思議なことに覚えていないフレーズが自然に作れたりもします。
この英語モードを構築して本番の試験に臨めば良いのです。
3日間だとこの英語モードになりきれません。
なので、試験前1週間は是非、時間をとってこの暗唱作業を続けるようにしてみて下さい。
まとめ
ということで、ネタ・スクリプトを準備する、ということとフレーズで覚える、ということを軸としたIELTSスピーキング対策をまとめてみました。
少し面倒かもしれませんが、スピーキングは準備したら準備しただけ効果が上がりやすいですので、是非しっかり対策をしてみて下さい。
ライティング対策はこちらを参考にしてみて下さい。