こんにちは。藤本です。
今回はリーディングにおける少し厄介な課題について書いてみます。
英文の意味が分からない
単語も分かる、構文も分かる、訳せるのに、中身の意味が分からない、ということはないでしょうか?
実は、こういった課題は苦労する人と苦労しない人がくっきり分かれます。
そして苦労しない人にとっては非常に感覚が分かりにくい問題です。
私自身もどちらかというとこういった苦労はしなかったため、当初はその感覚が分かりませんでした。
「単語と構文が分かれば、意味は分かるはず」という考えだったのです。
しかし、数百人の生徒さんと接するうち、そういった方が少なからずいることが分かってきました。
ある生徒さんは、単語もしっかり覚えていて、文法の力もあるのに、文章を読むと理解できない、という状況でした。
原因
この課題の根底にあるのが、
「英文を読むときに、訳すことだけに意識があり、その著者が伝えようとしていることを理解しようとしていない」
ということです。
英文といってもそこには著者がいて、著者は必ず何かを伝えるために文章を書いています。
訳してもらうことを目的にしているのではなく、伝えたいことを伝えるのが英文の目的です。
だから本当は著者が伝えたいことが理解することが、本来のリーディングの目的なのですが、伝えたいことを読み取ろうとせずに訳すことだけに集中してしまうんです。
そのため
・単語を辞書通りの意味でしか訳せず、文脈に応じた適切な訳ができない
・パラフレーズや比喩表現が何を言い換えているのかが分からない
・代名詞が指しているものが何かを理解しようとしない
・省略された情報を補って読もうとしない
・文章の骨格ではなくそれ以外の重要でない情報に惑わされる
といった現象が出てきます。
これらは言い換えれば
・自分が理解できない訳であっても、辞書通りの単語の意味を当てはめることに違和感を感じない
・自分が理解できない訳であっても、パラフレーズや比喩表現が何を指しているかを考えようとしない
・自分が理解できない訳であっても、代名詞が指しているものを理解しようとしない
・自分が理解できない訳であっても、省略されたものが何かを考えようとしない
・自分が理解できない訳であっても、重要でない情報に重きを置いて訳してしまう
ということでもあります。
だから、訳すことは出来ても、自分で訳した内容がどういう意味なのか自分でも分からない、という事態になります。
中身を理解することに意識がある人にとっては、自分でも意味が分からない訳を作ってしまう、といことは考えにくい話だと思います。
なぜなら、自分でも意味が分からない訳をそのままにしようとは思わないからです。
一旦直訳したあとに
・辞書通りの訳だと意味が分からないから、前後関係から適切な訳を探す
・パラフレーズや比喩表現のままでは前後の話がつながらないから、その言葉が、それまで出てきたどの言葉を言い換えた表現なのかを考える
・代名詞が何を指しているか分からないと、意味が理解できないから、代名詞がその前の文章の何を指しているか探す
・省略されたままだと意味が分からず気持ち悪いから、何が省略されているかを前後関係から推測する
・微細な情報に惑わされると意味が分からないから、骨格だけを捉えようとする
という行動を行って、直訳を自分にとって意味が分かる内容に変換してから理解しています。
これをどの文章に対しても行い、1つ1つの意味が腹に落ちるまで無限に推測や修正を繰り返します。
だから自分でも意味が分からないという訳になることはありません。
この辺りは本当は英語の問題ではなく、国語の力なのかなと思います。
本を読むのが好きな人は、書かれている中身を理解することに集中します。
だから無意識に、比喩表現は何を言い換えたものかを探しながら読んでいるし、省略されたものを探しながら読んでいます。
でも、中身を理解することを目的にするよりも、「目を動かす」「文字面を眺める」「読んだという事実を作る」ことに主眼がある人は、そういった思考法がないので、自分でも意味が分からないままであっても、そこで終わってしまいます。
解決方法
では、どうすればよいのでしょうか?
根本的には、「訳す」ことよりも「著者が言いたいことを理解する」ことを重視するように思考を変えて行くしかありません。
もう少し具体的には3つの方法が有効です。
1.自分の言葉に置き換えてみる
英文を見たときに、直訳ではなく、自分でも理解できる言葉に変えて理解するトレーニングを繰り返します。
単語の訳は、必ずしも辞書通りでなくても結構です。
前後関係から考えて、一番ふさわしいと思う訳にします。
比喩表現やパラフレーズは何を指しているか自分が納得するまで探します。
とにかく、最終的に自分でも意味が分かる訳にすることが大事です。
ただし、、
自分の言葉に置き換えても、解釈が正しいか、自分でも判断できない場合も多いと思います。
そのときはその内容が理解できる人に聞いてください。
そういった人がいない場合、自己判断としてはひとまず以下のように考えて下さい。
正しく解釈出来ている場合、腹に落ちる、腑に落ちる、という感覚が得られます。
前後関係からも矛盾がなく、かつ言いたいことが「ははーん」「なるほど」「ふむふむ」という納得感を伴って理解出来た場合は、だいたい正しい解釈です。
逆に「こう解釈したけど前後の話とつながらない」という違和感や、「こう思うんだけど合っているかな」という不安を感じる場合は、だいたい間違っていると考えます。
2.5W1Hを補ってみる
1と同時に行っていただきたいのが、代名詞が何を指しているか、省略された主語や目的語は何なのかを確認しながら読む、ということです。
何が省略されているかすら分からないという場合は、その訳で5W1H(Who, When, Where, What, Why, How)が自分なりに説明できるか、ということを確認していきます。
特に主語に当たる部分(Who)と、述語や目的語に当たる部分(What)が何かを明確に確認していきます。
英文に明記されておらず省略されているなら、前後の関係から推測する、という作業が必要です。
これも慣れないうちは上手く行かないかもしれませんが、解釈が出来るようになると、明らかに文章の前後関係との流れが分かるようになり、「そういうことか!」と分かる感覚になります。
腹に落ちる、腑に落ちる、という感覚を大切にしながらこのトレーニングを続けます。
3.要約してみる
特に長い文章の場合、直訳では意味が分からなくなりがちです。
でも長い文章の中の骨格部分だけを理解する練習をすると意味が理解しやすくなります。
例えば
「SALBES36は、Farce100とタクノミノノエ酸を結合するLA1998を攻撃するのではなく、Farce100と反発するXOP2010に作用することにより、Farce100を無効化する」
という文章があったとしましょう。
この文章に出てくる名詞はすべてでたらめなので意味はないですが、でもこの文章が言わんとしていることが理解できるか、ということです。
試しに1つ質問です。
SALBES36は何を攻撃するのか?
A:LA1998
B:Farce100
C:XOP2010
中身を理解しようとしない方は、この文章の意味を理解しようとしないので、そこで思考が停止してしまい、訳が分からん、で終わってしまいます。
だから質問にも答えられません。
でも中身を理解しようとするなら、少なくとも
SALBES36は、LA1998を攻撃するのではなく、XOP2010を攻撃する
という骨格を見破れます。
このように、文章の骨格を捉えて、その部分を要約していく、という作業を行います。
この要約作業が出来るようになると、自然に著者が伝えたいことは捉えられるようになります。
まとめ
今回の話は、当てはまる人には深く当てはまるけど、そうでない人にとっては全く意味すら分からない内容だったと思います。
でも当てはまる人にとってはとても重要な話です。
共感できる場合は、以下の3つ
1.自分の言葉に置き換えてみる
2.5W1Hを補ってみる
3.要約をしてみる
を是非取り組んで頂ければと思います。