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リーディングにおいて「英語を読んで理解する」ために必要な基礎スキルについてまとめます。
①はじめに
時間が足らない
- リーディングセクションにおけるほとんどの受験生にとっての最大の悩みは「時間が足らない、時間内に最後まで読み終われない」
- 60分で長文3つを読んで40問の設問に答える必要があり、1問につき1.5分で回答する必要がある。ゆっくりやっているヒマはない。始めて取り組んだ場合、時間内で最後まで解き終われない人がほとんど。
- ただし、これは表面的な悩みであり、その真の原因をさらに深堀していく必要がある。
正解率が低い
- 次に、時間以内に最後まで読めた場合でも正解率が低く、スコアが低迷する場合がある。
- あるいはベストスコアは高いものの正解率が安定していないというケースも見られる。
- これも単に正解率という表面的な悩みではなく、その真の原因を深堀していく必要がある。
リーディングが出来ない原因は1つではない
- 「時間が足らない」「正解率が低い」の原因は複数ある。
- しかもどの原因が当てはまるかは人によって大きな違いがある。
- これを正確に見極めずに安易な対策に目を向けてもスコアは簡単には上昇しない。
闇雲に読んでもスコアは上がらない
- 安易な対策としてよくあるのが「とにかく読む量を増やす」というもの。
- しかし、必要なスキルが身についていない段階でどれだけ読む量を増やしても、なかなかスコアが上がらない。
目を速く動かすことだけ意識しても無理
- これも安易な対策として、「時間が足らない」という課題に対して、物理的に目を速く動かす、という考えもあるが、意味はない。
- どれだけ目を速く動かしても、肝心の中身が理解できていなかったり、問題に正解できなければスコアは変わらず意味がない。
- リーディングは「時間内に読み終わること」が目標ではなく、「正解数を増やすこと」が目標。
「スキャニング」「スキミング」も正解ではない
- 最後に安易な対策として最もよく出てくるのが「スキャニング」「スキミング」。
- 一生懸命、スキャニング、スキミングを身につけようとする人が多いが、実はこれらはかなり上級レベルのテクニック。ネイティブに近い語彙力と経験がないとなかなかマスター出来るものではない。
- むしろよりスキャニングやスキミングのようなテクニックではない本質的な原因対策をした方が課題が解消される可能性が高い。
スキャニングとは
- 本文の中で設問に関係しそうな箇所をキーワードを頼りに探し、その箇所だけを読む技術。
- これを推奨している講師や参考書も多いが、これはIELTSでは一定レベル以上の語彙力を身につけていなければできない。
スキャニングが出来ない理由①
- IELTSでは本文の表現と設問の表現がパラフレーズされていることが多い。
- パラフレーズされた単語を同じ意味として捉えられる技術は上級者のみが持ち合わせる技術で、ノンネイティブにはかなり困難。
- それどころか、設問と同じ単語が使われた箇所は引っ掛けさせるためのダミーの情報で、本当に必要な情報は全く別の箇所に書かれている、ということすらある。
スキャニングが出来ない理由②
- Heading問題などは、1箇所の情報だけでなく、センテンスとセンテンスの関係性や文脈を読めなければ回答できない。
- ただキーワードを探すような読み方では答えられない。
スキャニングが出来るケース
- 「固有名詞」「年代」など、パラフレーズしようがない表現が使われている場合は、同じ単語や数値を探すことで、関連場所が特定できるケースがある。
スキミングとは
- パラグラフの最初の数行を読んで、その後に展開される内容を予測し、残りは読まないという技術。
- これを推奨している講師や参考書も多いが、これは英語特有のトピックセンテンスの概念や、トピックセンテンス以降の展開パターンが頭に入っている場合に可能になる技術で、トピックセンテンスという概念がない日本語話者にとっては困難。
スキミングが出来ない理由①
- 英語にはトピックセンテンスという概念があり、トピックセンテンスに書かれた内容によって、そのパラグラフは特定のパターンで展開されることが多い。子供のころからそういったパターンを読み慣れている英語ネイティブは、内容を事前に予測することが出来る。
- 一方、日本語にはそういった明確なパターンはない。パラグラフという概念も希薄だし、トピックセンテンスという概念はない。むしろ最後まで読まないと結論が分からないのが日本語の特性でもあり、予測してしまうと見誤ることも多い。このため、日本語話者にとって「予測する」という行為そのものが難解。
- パターンも教わらずに予測するのはただのギャンブルであり、極めてリスクの高い行為。
スキミングが出来ない理由②
- リーディングの設問は、パラグラフの最初の数行以外の箇所に根拠がある設問の方が多い。(例えばTrue/False問題、空欄補充問題、リストマッチング問題など)
- これらの設問に回答するためには、仮にパラグラフの最初の数行を読んで概要が掴めたとしても、それ以外の箇所を読まなければ回答できない。
スキミングが出来るケース
- 上記の「展開パターン」をしっかりと頭に入れた場合、実はスキミングは可能になる。ただ、そのパターンを体系立てて教わる機会は日本の英語教育ではかなり少ないため、多くのスキミング実践者はギャンブルで予測しているに過ぎない。
- またスキミングが出来たとしても上記の理由②の通り、多くの設問に回答するためには結局それ以外の箇所も読まなければならない。
②リーディングに必要な力と課題の原因
IELTSでスコアを獲得するには2つの力が必要
- リスニングと同様にリーディングにおいても2つの力が必要
- 「そもそも英語が理解できる」ための「英語基礎力」
- 「IELTS基準で正解できる」ための「IELTS対応力」

英語基礎力としての英文解釈には3つのレベルがある

レベル1:文法的理解
- 「単語の辞書的意味」と「構文構造の知識」を組み合わせて、センテンスレベルでは構文に忠実な直訳が出来る。
- ただし、辞書的な意味しか当てはめられないので、出来上がった日本語訳を自分で見ても意味がよく分からないことがある。
レベル2:文脈的理解
- 単語の意味として、辞書的な意味にこだわらず、前後の文脈に相応しい意味を考えて当てはめられる。
- 細部(時制、助動詞、単複、冠詞、前置詞、比較級など)を見落とさず、かつ正確なニュアンスで解釈ができる。
- 前後の文脈から省略された単語を推測できて、それを補って解釈ができる。
- 結果的に、日本語訳を作ったときに、その日本語訳だけを見て、自然に意味が理解できる。
レベル3:論理的理解
- パラグラフが持つトピックセンテンスやサポーティングアイデアなどの役割や、パラグラフの一般的な展開パターンを理解した上で、「各センテンスのパラグラフの中での役割」を意識しながら解釈が出来る。
- トピックセンテンスを読んだ段階で、そのパラグラフの内容がおよそ予測でき、その予測との一致・不一致を認識しながら残りのセンテンスを読むことが出来る。
- 結果として、パラグラフを一度読むと、そのパラグラフで言いたい内容をサマリーとして簡潔にまとめることが出来る。
IELTS対応力には4つの要素がある

設問の取り組み順序
- 設問先読みと本文読解を適切な順序で行える。
- 最適な順序で読むことにより、制限時間内での回答数を最大化することができる。
情報探索
- 設問で問われている情報を探しながら本文を読める。
- IELTSリーディングでは設問の表現が本文の表現と異なる(パラフレーズ)ことが多いので、単に単語を探すのではなく、情報を探しながら読める力が必要。
タイムマネジメント
- 制限時間60分を最適に配分できる。
- 必ずしも最後まで解くのではなく、正解数を最大化するための効果的な時間の使い方を知っていて、それが実行できる。
各設問のアプローチ
- IELTSリーディングには主要な6タイプの設問があるが、その設問タイプごとの適切なアプローチを理解して回答できる。
- 苦手な設問タイプをなくし、正解率を最大化できる。
時間が足らなくなる症状の本質
- リーディングで時間が足らなくなる最大の原因は「二度読み、返り読みが多い」ということ。
- 多くの受験生は、数えきれないほど本文を二度読みしたり、返り読みしていたりしており、これが大幅な時間ロスにつながっている。
- その証拠に、公式問題集を1文1文じっくり精読し、すべての文章を完璧に理解した後、そのパッセージをもう一度読んでみると、10分足らずで読めることが多い。
- 2度読み・返り読みがなくなれば、時間が足らないという悩みはほぼ解消する。
- スキャニングやスキミングの代わりに徹底して鍛えるべきは、二度読み、返り読みを極限まで無くすこと。
二度読み・返り読みが起こる原因は1つではない
- 英語基礎力の不足によって二度読み・返り読みが発生するケース
原因1:文法的理解(レベル1)でつまづいている
- 即座に意味を認識できる単語の割合が低い
- 構文を一度で把握できる率が低い
⇒それゆえに二度読み・返り読みが発生する

方針:「文法的理解」が出来る力を身につける
- まずは「単語の辞書的意味」を覚える。
- 「構文構造の知識」を覚え、構文を前から一度で取れるようにしていく。
原因2:文脈的理解(レベル2)でつまづいている
- 単語解釈の柔軟性が低く、辞書通りの訳でしか訳せないないため、文意が捉えられない
- 細部(時制・助動詞・単複・冠詞・前置詞・比較級など)を読み落としていて細かいニュアンスが取れていない
- 前後の文脈を考えずに読んでいるので、省略された内容や直接書かれていない意図が推測できない
⇒それゆえに二度読み・返り読みが発生する

方針:「文脈的理解」が出来る力を身につける
- 単語を辞書的な意味ではなく、文脈から相応しい意味で解釈できるようにする。
- 細部(時制、助動詞、単複、冠詞、前置詞、比較級など)を見落とさず、正確に解釈できるようにする。
- 省略された単語を推測できるようにする。
原因3:論理的理解(レベル3)でつまづいている
- パラグラフ構造を意識せず読んでいるのでパラグラフ全体で何を言いたかったのかを1度読んだだけでは把握できない
- 複数の人物や主張が出たときの違い、時系列的な前後関係、因果関係、対比関係などの関係性を整理できず混乱する
⇒それゆえに二度読み・返り読みが発生する

方針:「論理的理解」が出来る力を身につける
- トピックセンテンスの役割やパラグラフの展開パターンを理解して、一度パラグラフを読めばパラグラフ全体で何を言いたかったのかが理解できるようにする。
- 複数の人物の主張の違い、時系列の前後関係、因果関係、対比関係などを整理しながら読めるようにする。
- IELTS対応力の不足によって二度読み・返り読みが発生するケース
原因4:設問取り組み順が不適切
- 設問先読みを最適な順番で取り組んでおらず、設問への回答のために本文を読み直さなくてはならない
⇒それゆえに二度読み・返り読みが発生する

方針:最適な設問取り組み順で取り組めるようにする
- 本文を読み終わったときに全設問が回答済みの状態を作る。
原因5:情報探索の意識が弱い
- 本番で設問で問われている情報を探索するよりも、本文の内容理解を優先してしまっている
- 本文を読んでいる最中に、設問の内容を忘れてしまい、必要な箇所を見逃してしまう
⇒それゆえに二度読み・返り読みが発生する

方針:情報探索の意識を強く持ちながら読めるようにする
- 普段の練習時から「完全理解モード」と「情報探索モード」の切り替えを意識する
- 設問先読み時に探索する情報についての目的意識を強烈にセットする
原因6:タイムマネジメントが不適切で平常心で読めていない
- 時間制限がある中で焦って読んでしまい、内容が頭に入らないまま目で字面だけを追っている状態(空読み)になってしまい、内容が理解できない
⇒それゆえに二度読み・返り読みが発生する

方針:適切なタイムマネジメントを行う
- 適切な時間配分を行い、焦る状況が生まれないようにする
- 必ずしもすべてを読む必要がないことを理解する
正解率が低い・不安定な本当の理由
- リーディングで時間内には読み終えられるが、正解率が低い・不安定な最大の原因は「本文・設問文の読み方が粗い」ということ。
- 時間内に読み終わろうとして、ただ目を左から右に早く動かすことだけを行っても意味はない。意識を集中すべきは、英文の内容を理解することであり、目は早く動いているのに、中身が頭に入っていない読み方(「空読み」)で正解できるほどIELTSは甘くはない。
正解率が低い・不安定な原因は1つではない
- 英語基礎力の不足によって粗い理解になるケース
- ただしこのケースは本質的には「二度読み・返り読みが発生するケース」と同じ。理解レベルが十分でないがゆえに二度読み・返り読みをしているか、理解レベルが不十分なのに粗い理解のまま回答しているかの違いだけ。
原因1:文法的理解(レベル1)でつまづいている
原因2:文脈的理解(レベル2)でつまづいている
原因3:理論的理解(レベル3)でつまづいている
⇒それゆえに本文・設問文の解釈精度が低い

- IELTS対応力の不足によって理解度が粗くなるケース
原因4:特定の設問タイプが苦手
- 特定の設問タイプについて正確なアプローチが出来ていない
⇒それゆえに正解率が低い・不安定になる

方針:各設問タイプごとの正確なアプローチをマスターする
- 主要6タイプについて正確なアプローチをマスターし練習する
- IELTSリーディングスキルマップ詳細編では、これら基礎スキルと対応スキルを順にマスターするロードマップを示している。

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