
(「6-3)IELTSスピーキングの出題傾向を理解する」に戻る)
①IELTSスピーキングの取り組み戦略
スピーキング対策の方針
IELTSスピーキング対策で必要な準備は限定的
- 合理的なスピーキング対策を実施するでお伝えした通りスピーキング対策の本質はスキル化。
- そのために一定量のインプットが必要になるが、それはIELTSスピーキングの出題傾向を理解するで見てきた範囲の質問に対して答えられる程度で良い。
- またアウトプットとして、スピーキングはどこで評価・限定されるのかを理解するで見てきたようなポイントに耐えられる程度まで実施すればよい。
合理的なIELTSスピーキング対策
- このことから考えられる最も合理的な対策は、試験で出題されるテーマ・質問に対して回答を準備し、それを覚え、さらにその回答をいつでも話せる状態にスキル化していくことである。
減点されるリスク
回答を暗記することのリスク
- IELTSのライティングとスピーキングには、Memoriseという評価項目があり、回答を暗記して、ただそれを書いただけ、それをしゃべっているだけとみなされた場合は、減点となる。
- 回答を準備して暗記した場合は、このような評価をされるリスクがあることは理解しておきたい。
- スピーキングで特に回答を暗記していることが分かりやすいのは、以下の3つのケース。
- 設問に対してあまりに外れた回答をしている、あるいはどんな設問でも言えるような抽象的一般的すぎる回答をしている。
- スラスラ答えられる設問と、答えられない設問との差があまりに大きい。特に回答によって使われている語彙や文法のレベルが著しく異なる。
- 声に抑揚がなかったり、途中で「間」が入らないなど、ただセリフを読んでいるかのような話し方になっている。
リスクに対する考え方
- スピーキングの悩みの本質でもお伝えした通り、流暢に話せる人も実は頭の中では、覚えているフレーズを組み合わせて話しているに過ぎない。従って、回答を暗記してしゃべることとは、質的な違いがあるわけではなく、程度の差ということも出来る。
- なので暗記自体が悪いわけではない。むしろ一定量の暗記をしないと口から英語が出てくることはない。
- このことからスピーキング対策としてお勧めする暗記は、準備した回答の丸暗記ではなく、フレーズごとに区切り、フレーズ単位で覚えることである。
減点されない覚え方
- フレーズで暗記するときは、頭の中で思い浮かべる「言いたいこと」と、それを表現するための「英語のフレーズ」を紐づけるようにしていく。言い換えると、「言いたいこと」を頭に浮かべたときに、それを表現するために「英語のフレーズ」が口から出てくる、という神経回路を鍛えていくように意識する。
- これが出来ると、フレーズを少しカスタマイズしたり、フレーズとフレーズを組み合わせて準備していない設問に対してもしゃべれるようになる。
- これと逆の覚え方が準備した回答を単に「英文」として丸暗記すること。この覚え方だと準備していない設問に対しては太刀打ちできず、準備している設問に対する回答と大きな差がでてしまう。それどころか準備した設問に対しても、まるでセリフを読んでいるかのような抑揚のない、不自然に「間」がない話し方になりがちで、採点官に「暗記してきた」と見抜かれる可能性が高くなる。
②IELTSスピーキング対策の手順
スピーキング対策の4ステップ+2つのオプション
スピーキング対策は以下の4つのステップで行う
- ステップ1:出題される設問の収集
- ステップ2:回答の準備
- ステップ3:回答の修正
- ステップ4:暗唱+シミュレーション
加えて以下の2つのオプションも必要に応じて実施する
- オプション1:発音矯正
- オプション2:未準備の設問対策
ステップ1:出題される設問の収集
IELTSスピーキングの設問リスト
- IELTSスピーキングの出題傾向で説明の通り、IELTSのスピーキングではその時期に決まった設問リストがあり、そこから出題される。
- 設問リストはオフィシャルには非公開となっているが、主に海外のサイトで入手できることがある。これらの設問リストは、受験生からの報告をベースに作られたものであり、100%正しいとは言えないのが実情だが、どのようなテーマの設問が出ているかを知る手掛かりにはなる。
- また設問リストは原則4か月ごとに入れ替わるが、誰もが答えられるテーマである必要があることから設問は無限に存在するわけではなく、1年~数年単位で同じ設問が使われている。
設問リスト以外の情報ソース
- 現在リストに掲載されている設問以外にも、公式問題集や参考書などでは出題実績がある設問例を多数集めることが出来る。
出題される設問の入手
- 現在出題されている設問リスト、またはそれ以外の情報ソースから出題実績がある設問例を収集する。
- これでどのようなテーマ・設問があるのかを知ることが出来る。
ステップ2:回答の準備
Part1とPart2の回答を準備する
- 収集した設問の中のPart1とPart2を使って回答を準備していく。
Part3を準備しない理由
- Part3については受験生の回答を聴きながら採点官がその場で考える質問も多い。このため、準備してもその通りの質問をされる可能性がかなり低い。
- Part3はディスカッションという形式からも、覚えた表現を使うよりも、その場で対応しコミュニケーションを成立させることに注力した方が良い。
- オフィシャルな基準ではないが、体感的にPart1、Part2に比べて、Part3の回答がスコアに与える影響は低め。イメージとしては、Part1で「7.0以上」「6.0-6.5」「5.5以下」などの3段階評価が決まり、Part2で0.5単位の評価が決まり、Part3で+0.5とか、-0.5とかの微調整が行われている、という感じ。相対的にPart3の重要性は低い。
回答の準備は2段階で考える
- まず第1段階として質問に対して何を回答するかという「ネタ」を準備する。
- IELTSのスピーキングのテーマは「考えたことすらない」という質問や「すぐに思いつかない」という質問がある。こういった質問をされたときに内容を考えるために沈黙を作ってしまうのは良くないため、少なくとも「何について答えるか」はすぐに思い浮かぶようにしておく。
- 話す内容さえあれば英文はその場で思い浮かぶという場合は、この第1段階の準備だけでOK。
- 内容が決まっても、英文が即座に思いつかないという場合は、第2段階として「英文スクリプト」を準備する。
「考えたことすらない」質問の例
- 「あなたの好きなストリート(道)について教えて下さい」
- 「あなたの好きな川について教えて下さい」
「すぐに答えを思いつけない」質問の例
- 「最近買ったズボンについて教えて下さい」
- 「よく飛行機を使う知り合いについて教えて下さい」
回答は何問分準備すべきか
- お勧めするのはPart1を50テーマ、Part2を50テーマほど準備する。
- これぐらい準備しておくと、IELTSで出題されるテーマに回答するのに必要な最低限の表現・フレーズが一通り出てくるので、これらの表現・フレーズを覚えておけば、準備していないテーマ・設問に対しても何とかなる。
- 本当はリストにある質問すべてに対して準備しても良いが、その分暗記が大変になるので、現実的なラインとしては各50テーマ。
スクリプト準備方法
- 別ページ「スクリプト作成を攻略する」にて説明
- どれぐらいの長さのスクリプトを準備すべきか
- ネタを使い回す
- 汎用性が高い終わり方
- 入れるべき表現
- 使うべきでない表現 など
ステップ3:回答の修正
準備したスクリプトを洗練させる
- スクリプトを洗練化させる方法として代表的なのが「英会話サービス」の中で講師に修正してもらう、という方法。
- 英会話サービスは「誤ったスピーキング対策」で説明した通り、何の準備もなく、その場で考えた表現を使っていても進歩が少ないが、準備したスクリプトを実際に使って修正を受ける場として使うと効果的。指摘を受けた内容は即座にスクリプトに反映していく。
- もう1つの方法が「自分でしゃべってみて修正する」という方法。
- 実際に声に出してしゃべってみると「発音しにくい」と感じる箇所や、「自分が普
- 段使っている表現で同じことが言える」という箇所が見えてくる。そういった箇所があれば修正していく。
ステップ4:暗唱+シミュレーション
準備したスクリプトを暗唱しながら覚える
- 大事なのは実際に口に出しながら覚えること。
- 目と頭で覚えるのではなく、口に覚えさせるイメージ。
- 以下のステップで覚えていく。
- 1.英文を完全に理解する
- 2.スクリプトを見ながら発音してみる
- 3.詰まったり、口が動かない場合はその箇所だけ切り取って口を動かすトレーニング
- 4.スクリプトを見ずにすべての英文を言えるようになるまで発音を繰り返す
- 5.頭の中で「言いたいこと」と、「英文」を紐づけながら発音する
本番を想定したシミュレーションを行う
- 試験会場で目の前の試験官から質問をされた瞬間をイメージしながらシミュレーションを行うと良い。
- ジェスチャーや表情、声の大きさも本番を想定しながら練習する。
オプション1:発音矯正
正しい発音を理解する
- 準備したスクリプトを英会話サービスで講師にしゃべってもらったり、オンラインの読み上げサービスやアプリを使って、スクリプトをしゃべらせてみて、正しい発音を理解する。
自分の発音を客観的に聴いてみる
- 自分の声を録音してみると、正しい発音が出来ていなかったり、「あー」「えー」などのフィラーが多く入っているなど気づきがある。
どういう人が発音矯正が必要か
- スピーキングのスコアが常に6.0以上ある場合は、ほぼ発音は通じていると考えて良い。
- 6.0以下の場合や、会話中に試験官が聴き取れないような表情をする場合、発音矯正を検討しても良い。
発音矯正する
- 発音を判定するサービスや、発音矯正の専門サービスを使って、正しい発音に強制していく。
オプション2:未準備の設問対策
スクリプトを準備していない設問への対策
- 準備したスクリプトの練習だけでなく、準備していない設問に対する練習を行う。
- 準備していない質問をされたシミュレーションを行い、あるいは英会話サービスの中でランダムで質問をしてもらって、覚えているフレーズを組み合わせて何とか回答する練習を行う。
- 録音して、何を修正すればよいのかを蓄積していくとより応用力がつく。