
①IELTSスピーキングの公式な評価・減点ポイント
IELTSは公式には以下4つの項目でスピーキングを評価・減点しています。
流暢性と一貫性(Fluency and Coherence)
1)「繰り返し」「修正」の頻度が低い
- 「繰り返し」や「修正」なく数センテンス連続で話し続けられる
- 7.0以上であれば3センテンス以上連続が目安
- 若干の「繰り返し」や「修正」は含みつつも一定時間話を続けられる
- 7.0以上であれば2分間連続が目安
2)「言葉探しでの中断」が少なく、速度が安定している
- 言葉探しで中断する頻度が低い
- 「速く話せる」よりも「ゆっくりでも安定した速度で話せる」が高評価
- 簡単な内容と複雑な内容で話すスピードに大きな違いがない
3)適切に「接続表現」を使えて、理解しやすい組み立てになっている
- センテンスとセンテンスの関連を示す接続表現を幅広く、かつ適切に使えている
- 聞き手にとって理解しやすい長さで話せる
- 聞き手にとって分かりやすい順序で説明されている
語彙力(Lexical Resource)
1)多様な語彙が使えている
- 話題に合わせた多様な語彙が使えている
- 語彙を柔軟に柔軟使用できている
2)コロケーション、イディオムを使えている
- 適切なコロケーションが使えている
- 上手くイディオムが使えている
3)パラフレーズできている
- 必要な場面で効果的にパラフレーズが使えている
文法力(Grammatical Range and Accuracy)
1)多様な構文が使えている
- 単文だけでなく複文が使えている
- 関係詞を使って複雑な内容を表現できる
- 第3者の行動を使役構文で表現できる
2)文法ミスが少ない
- 内容に合わせた正確な時制が使えている
- 仮定法が正確に使えている
- 冠詞が正確に使えている
- 前置詞が正確に使えている
発音(Pronunciation)
1)正しく理解しやすい発音ができている
- ほとんどすべての単語を正しく発音されている
- 理解できる水準のアクセントになっている
2)発音がコントロールできている
- 幅広く、自然な発音になっている
- リエゾンが使えている
②IELTSスピーキングの非公式な評価・減点ポイント
スピーキングは採点官が主観的に判断するセクションなので、公式な評価項目とは別に、以下の内容も直接・間接に評価に影響を与える可能性があります。
回答内容
スピーキング試験はコミュニケーションの試験でもある
- スピーキングの場合は、ライティングと異なり、公式の評価項目に「設問に対して正確に答えているか」は含まれていない。
- しかし、試験が採点官と受験生とのコミュニケーションの形式である以上、たとえ英語が流暢であったとしてもコミュニケーションが成立しない状態をポジティブに評価されるとは考えにくい。
- 公式の評価項目にないことからライティングほど厳格に内容は見ていないと思われるが、設問に対してあまりに関係ない内容を回答するのは避けた方が良い。
試験官は受験生に興味を持っていない
- 設問に関係ある内容だとしても、聞き手である採点官がまったくついていけないような内容を一方的に話されてもコミュニケーションが成立しているとは言えない。
- 基本的に採点官は受験生には興味を持っていない。1日何人という受験生に接するし、そのほとんどは二度と会うことはないからである。
- 特に自分の専門分野のこだわりや自分の主張を事細かに説明する人もいるが、採点官にとってはどうでも良い話なので、自分の思いを伝えようとするのではなく、ある程度誰でも分かるような一般的で簡単な内容を説明したい。
- どうしても一部の人間にしか分からない内容を説明する場合は、その内容を知らない人でも分かるように説明したい。
表情・アイコンタクト・ジェスチャー・声のトーン
視覚情報はコミュニケーションの大きな割合を占める
- 人間は、ただ音声だけで説明を聞くよりも、視覚と聴覚を使って説明を受ける方が圧倒的に理解しやすい。
- たとえば「ここから左にまっすぐ行って、その後突き当りを右に曲がって・・」という説明をただ音声で聞くよりも、相手が左側を指さしながら「左にまっすぐ行って」、その後折れ曲がるジェスチャーをしながら「突き当りを右に曲がって」と言ってくれた方が理解しやすい。
- こういったノンバーバルな要素は、コミュニケーションの成立にとても大きな役割を果たすため、全く使わないのはもったいない。ジェスチャーは積極的に使いたい。
感情を込めて話す
- 一昔前の機械の声で「ソノトキワタシハウレシカッタノデス。」と抑揚なく言われるよりも、感情たっぷりに「そのとき、私はめーっちゃ嬉しかったんだよ!!」と言われる方がしっかり内容が理解できるし、記憶に残る。
- 特に日本人は表情やトーンに感情が現れない人が多いので、少し大げさなぐらい表情や抑揚を使っても良い。
人間関係構築
試験官も人間であり感情を持つ
- 評価に採点官の感情が影響するとは考えたくないが、採点官も人間であり感情がある。ネガティブな感情が評価を低めたり、ポジティブな感情が評価を高めることも無いとは言えない。
- 実際に、試験中の受け答えの中で、試験官を笑わせてハイスコアを獲れたというケース、ディスカッションの中で試験官に「interesting!」と唸らせてハイスコアを獲得したケースが報告されている。
積極的に関係性を作る
- 試験時間内も試験時間以外も含めて、なるべく採点官と関係性を作り、ポジティブな感情を持ってもらえるように努めると良い。
- 試験前であれば、採点官と対面したときに明るい表情であいさつし、出来れば一言二言会話をする。受け答えもハキハキ答え、試験終わりには楽しく会話出来たことと、感謝を伝える。余裕があれば軽いジョークを言っても良い。
自信とマナー
声の大きさで評価を落とす可能性
- 日本人には控えめが美徳、という価値観があるがゆえに声が小さい人が多い。
- 特に、普段外国人とコミュニケーション取ることに慣れていない人や、受験経験が少なく緊張している人は声が小さくなりがち。
- さらに試験中、試験官の表情が曇るケースがあり、そこで多くの受験生は「自分の英語が通じていない」「間違った英語を話している」と判断して自信を失い、ますます声が小さくなることがある。
- 実際そういうケースもあるかもしれないが、実は単純に声が小さくて聞き取れない、というケースも多い。正しい英語なのに、単純に声のボリュームが足らなくて採点官に届かない、というのはとてももったいないケース。
自信の重要性を過小評価しない
- 声は敢えて大きめぐらいで良い。そしてしっかり試験官の目を見て話す。「伝わらないのは聴き取る方が悪い」ぐらいの気持ちで自信を持ち続けたい。
- 聴く側からしても、自信なさげに聞き取れないほどの声でボソボソしゃべられるよりも、自信ある様子で堂々としゃべっている方が、同じ内容でも良く見えるため、ポジティブな評価につながりやすい。
- 特に欧米では自信がない態度はかなりネガティブな評価を受けるので、日本人が思っている以上に自信ありげな態度が評価に与える影響は大きい。
- ただ自信と横柄は違うので、威圧するような態度は良くない。あくまでマナーは守って、節度ある態度は崩さないように、でも自信はあるように見せたい。
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