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スピーキング対策を合理的に進めるための方針についてまとめます。
①はじめに
IELTSのスピーキングに対してどのように取り組んで行けば良いかを考えてみます。
スピーキングにおける悩み
IELTSスピーキングセクションのスコアが安定しない理由
- スピーキングセクションでよく聞かれる悩みの1つが「スコアが安定しない」というもの。
- 実際に同じ受験生が2日連続で受験してもスピーキングのスコアだけは1.0程度変動することが見られる。他のセクションではここまでの変動は少ない。
- これは、そもそもスピーキングが採点官の主観が最も入りやすいセクションという背景もある。
- 採点官によって4つの採点基準(流暢性・語彙・文法・発音)のどこに重きを置くかが微妙に異なり、例えば文法は正しいが流暢性が低いという受験生は、文法重視の採点官には評価されるが、流暢性重視の採点官には評価されないということがある。
- また、「聴き取り能力」が採点官によって異なり、ノンネイティブの発音が聴き取れない採点官もいれば、難なく聴き取れる採点官もいることから、評価が分かれるポイントとなる。
- ただ、どのような採点官に当たるかは、受験生がコントロールできないものであり、ここを気にしても仕方ない。受験生が出来るのはどのような採点官に当たっても平均的に評価されるスキルを身につけることである。
スピーキングに関するよく聞く悩み
- スコアの安定性以外でよく聞く悩みとしては「口から英語が出てこない」というもの。
- 言いたい内容が頭にあったとしてもそれが即座に英語にならない、という悩み。
- もう1つが、「そもそもどんな対策したらいいか分からない」というもの。
- リスニングやリーディングは学生時代も学習経験があり、何を学習したらよいかイメージが出来る。それに対してスピーキングはほとんど学習経験がないため何をやったらよいか分からない、という受験生は多い。
誤ったスピーキング対策
典型的な誤った対策
- これらの悩みに対して、ひとまず英会話のサービスを使うという人は多い。
- かつてなら英会話スクールに通い、少し前ならオンライン英会話を使い、最近だとAIを使って会話の練習をするという人も多い。
- が、これだけでIELTSのスコアが伸びるという人は少ない。
- 原因は、これらの英会話の練習の大半は、その場で考えた英文をその場でしゃべっているだけ、というケースが多いから。
- その場で作った英文を、その場で講師やAIから訂正されたとしても、その記憶はレッスンが終われば失われ、記憶に残り続けることが少ない。ましてスキル化されていつでも再現できるレベルにはなることはない。
- スピーキングはライティング以上に即応性が必要であり、「知識」として知っている、というレベルでは対応できない。ほとんど何も考えないレベルでいつでも再現できる「スキル」の状態になって初めてスコアとして反映されるようになる。
②スピーキングの本質的な課題と対策の方向性
スピーキングの悩みを解決する本質的な考え方について説明します。
スピーキングの悩みの本質
スピーキング対策の本質はスキル化
- 「口から英語が出てこない」も「英会話のサービスを使ってもスコアが上がらない」も本質的には同じ悩みで、どちらも「スキル化」が出来ていない、ということ。
- スキル化のために必要なのは一定量のインプットとアウトプット。
- まずインプットの量が足らないと、口から英語が出てくる状態にはならない。スピーキングは即応性が必要なため、頭の中でゼロから英作文する時間はない。決まったフレーズを塊として覚え、それを組み合わせてしゃべる、という感覚が必要。覚えていないフレーズが本番で突然口から出てくるということは絶対にない。
- 英語を喋れている人も実は脳の中にストックしているフレーズを組み合わせて話しているだけ。流暢なスピーキングはインプットあっての話。
- またインプットだけでも不十分。頭の中にあってもそれは所詮知識でしかない。一定量のアウトプットを行う必要がある。
- 言いたいことに対して、頭の中にあるフレーズを実際に組み合わせて、口から出してみる、という経験を繰り返すことによって、脳で考えたことを英語で発音するというスキルが鍛えられる。
全方位でスキル化するのは時間がかかり過ぎる
- 「一定量」のインプットとアウトプットだが、何を目的にするかによって「一定量」の意味が変わる。
- たとえば「旅行先で買い物をする」を目的にするならば必要なインプットとアウトプットはわずかである。一方、「アメリカの大企業経営者に対して交渉して説得する」を目的にするならば必要なインプットとアウトプットは膨大になり、数年単位の準備が必要になるだろう。
- その点、「IELTSでスコアを獲る」という目的は比較的少ない時間で対応可能。なぜならば「評価・減点ポイント」が明確であるということと、「試験で問われる内容」が限定的であるから。
- その意味でまず「評価・減点ポイント」の理解と、「IELTSでの出題傾向」を理解することが重要になる。
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