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①設問をパターン化し型通りに設計する
ライティングで時間がかかり過ぎる原因
- 時間がかかる原因の多くは設計に時間がかかっている。
- Task1(アカデミック)であれば、図表をどのような切り口で書けば良いのか、Task2であれば、どんな賛成意見・反対意見を書いていけば良いのか、それをゼロから考えると時間がかかる。
- もし最初から、図表の切り口のパターンや、Task2の賛成意見・反対意見のアイデアパターンが、準備されていて、そこから選ぶようにすると時間は短縮できる。それを準備する。
ライティングのスコアは設計の精度に依存する
- ライティングの4つの採点基準のうち2つは設計の精度を問われる基準。
- 設計を間違えた場合、記述の段階でそれをリカバリーするのは不可能。
- あらかじめチェックされる設計上のポイントをすべて織り込んだ設計パターンを準備しておき、それを使って設計するのが安全。
②英文をテンプレート化しその表現だけを使う
なぜ「テンプレートを使うべきじゃない」と言われるか
- まずIELTSの採点には「memorise」という項目があり、採点官が「暗記した表現である」と判断した場合は、減点対象になる。
- もう1つの理由は、ご質問にも書かれている通り、先生も、何度も何度も同じ表現を見せられて飽き飽きして、ストレスを抱えている、ということ。
- 特にネイティブの先生にとっては、テンプレートというのはどうしても無味乾燥な表現なので、もっとエッジの効いた表現にしたいと思うもの。
- この2つの理由から、テンプレートを作るな、という先生は多くいる。それは確かに正論だし、理解できる。
私のテンプレートに対する考え方
- 私の場合は、英語を極めたい人に向けて発信していない。IELTSは目標達成のための手段にしか過ぎない。
- だから完全な英語でなくても、IELTSの関門さえ突破してもらえれば、あとはさっさとその先の留学なり、移住なりを実現して、目標を達成してもらうことが最優先。
- その意味では邪道かもしれないし、他の先生から怒られるかもしれないが、英語的な正しさ、正論よりも、スコアを獲るための方法としてテンプレートの使用を推奨している。
スコアを最優先に考えると何を取るべきか
- 現実問題として、IELTSのTask1、Task2を書くのに、普通のノンネイティブは60分でテンプレート無しで書けるかというと、ほとんどの受験生にとっては、書き終わらないリスク、ミスを重ねるリスクの方がずっと高い。
- もちろん自由に書いても書き終われる、ミスなく書ける方は、テンプレなんて無い方がいいに決まっている。でも実際は、自由に書いた場合、書き終われない、ミスが大量に含まれる表現を使ってしまう方が大半。これが日本人受験者の実態。
- 書き終わらない場合のマイナス、ミスを重ねるマイナスは、暗記していると判断されるマイナスにも匹敵するし、もしかしたらより大きいかもしれない。
- だったら仮に減点されたとしてもテンプレートを使ってミスなく、最後まで書けるメリットの方が大きい人は多い。
- ライティング最強の戦略は減点されないテンプレートを使うこと。
インターネットにあるテンプレを使うリスク
- インターネット上に無料で転がっているテンプレートはリスクがある。以前、あるサイトでテンプレートが公開されていたが、残念ながらそのテンプレートは、明らかな間違いを含んだテンプレートだった。
- にもかかわらず、当時私の講座を受講生の3-4人に1人くらいが、そのテンプレートを使っていた。つまり本番の受験でもそれぐらいの割合の受験生がそのテンプレートを使っていた可能性がある。さすがにそれだけの割合で使われたら採点官もガンガンマイナス評価したことでしょう。しかも間違いを含んでいるという。。。
- そういう理由で私自身はテンプレートを公開することは控えているが、テンプレ戦略は推奨している。
そもそもパラフレーズとは何?
- パラフレーズとは、同じ意味を別の表現で言い換えること。
例えば「外食する」と言いたいときにeat out
と言ったり
go outside to eat
と言ったり
have lunch/dinner at a restaurant
と言ったりする。
どれも「外食する」という意味では同じ。
だから「外食する」と言いたいときに、上記のような様々な表現を使ってあげるというのがパラフレーズ。
パラフレーズは何のために行うのか?
- 簡単に言うと「単調だと飽きる」ということ。
例えば以下の文章を見て、どう思うか?
日本では銀行にお金を預けるという習慣が長く続いていた。だから銀行にお金を預けるという習慣が当たり前のように良いものとされていて、リスクを取ってお金を運用するというスキルが育たなかった。しかし、最近は銀行にお金を預けるという習慣が弱まってきて、リスクを取ってお金を運用する人が増えている。
この中には
「銀行にお金を預けるという習慣」
というフレーズが3回
「リスクを取ってお金を運用する」
というフレーズが2回
出てくる。
言っている内容は分かるし、日本語として間違ってはいないが、単調さを感じる。
そしてまどろっこしい。
このように、短い間に何度も同じ言い回しが出てくると、読み手は文章に単調さを感じてしまう。
情報は正しく伝わっても、これは良い文章とは言えない。
ではこうするとどうか?
日本では銀行にお金を預けるという習慣が長く続いていた。だからこの預金という習慣が当たり前のように良いものとされていて、リスクを取ってお金を運用するというスキルが育たなかった。しかし、最近はこのお金に対する消極的な習慣が弱まってきて、積極的にお金を投資に使う人が増えている。
繰り返しのフレーズをやめて
「銀行にお金を預けるという習慣」を「この預金という習慣」や「このお金に対する消極的な習慣」に、
「リスクを取ってお金を運用する」を「積極的にお金を投資に使う」に、
それぞれ言い換えている。
それだけで、文章に単調さがなくなる。
これがパラフレーズの効果。
評価されるパラフレーズと評価されないパラフレーズ
- パラフレーズならば何でも評価されるってわけではない。
- 場合によっては、頑張ってパラフレーズした結果が減点を招くこともある。
- Many car accidents occur in the USA.(アメリカでは多くの交通事故が起こっている)
という説明をした後に、
「UKでも交通事故が多い」
という説明をしたかったとする。
ところがここで
- Many car accidents also occur in the UK.
だとあまりに同じ表現なので、少しこの一文をパラフレーズして書きたい。
以下に4つがパラフレーズの候補。
A: Many car accidents also occur in England.
B: Many traffic accidents also occur in the UK.
C: There are also many car accidents in the UK.
D: The UK also suffers the similar trend.
この中でどれが評価されて、どれがされないか?
ケースA:間違ったパラフレーズ
- A: Many car accidents also occur in England.
は本来
- Many car accidents also occur in the UK.
と言いたかった文章のうち、the UKをEnglandにパラフレーズした。
ところが・・・
これはやってはいけないパラフレーズ。
なぜかというとUKとEnglandはイコールではないから。
UKのことをEnglandと言ったら、北アイルランドやスコットランドは入らない。
「日本」のことを「東京」と言い換えるのと同じ。
このパラフレーズを見た英国人は
「これは2つの単語を敢えて使い分けていて、EnglandはUKとは違って~、という話をしたいのだろうか・・・」
と混乱する。
このように、一見同じ意味に思えるけど、実はネイティブの感覚では意味が違うという単語はたくさんあるが、そうと知らずに意味が違う単語をパラフレーズとして使ってしまうのは間違い。
例えば
economicとeconomical
は
economic:経済の
economical:節約の
という全く違う意味の単語。
economic growth:経済成長
の代わりに
economical growth:節約の成長(?)
と書くとアウトになる。
このように同じに思えるけど実は違った意味の単語で置き換えるパラフレーズは、評価どころか減点されるパラフレーズになってしまう。
ケースB:間違ってはないけど単調さを感じるパラフレーズ
- B: Many traffic accidents also occur in the UK.
は本来
- Many car accidents also occur in the UK.
と言いたかった文章のうち、car accidentsをtraffic accidentsにパラフレーズしたケース。
これは間違いではない。
厳密に言うと違いはあるが、読者の混乱を招くほどではない。
なので、パラフレーズとしては正しい。
ただ、ここでは「USAでは事故が多い」という話の後に続く一文ということを考えて、その2つの文章を並べてみると
- Many car accidents occur in the USA. Many traffic accidents also occur in the UK.
この2つの文章が並んでいたとしたらかなり単調に感じる。
それは構文が全く同じだから。同じ構文の一部の単語だけをパラフレーズしているだけ。どんなに単語を変えたところで、構文の単調さがある文面は評価されない。
ケースC:単調さを感じないパラフレーズ
- C: There are also many car accidents in the UK.
は本来
- Many car accidents also occur in the UK.
と言いたかった文章を、There is構文を使ってパラフレーズしたわけ。
ちなみにこのケースでは、car accidentsやUKといった単語自体は、パラフレーズしていない。
しかし、このパラフレーズは評価される。
Bと同様に、USAの一文と並べて見ると
- Many car accidents occur in the USA. There are also many car accidents in the UK.
単調さを感じさせない。
これは構文が違うから。そして構文が違うと、たとえ使っている単語が同じでも全く印象が違う。
それぐらい構文をパラフレーズする力は大きい。
同じ単語を使っても、読者が単調でないと感じればそれで良い。
そして面白いことに、構文が違えば同じ単語でも印象が違うから同じ単語を使っているにも関わらず、語彙力の評価もマイナスにはならない。
語彙力が乏しくても構文力があればそれをカバーできる。
ケースD:論理性を感じさせるパラフレーズ
- D: The UK also suffers the similar trend.
は本来
- Many car accidents also occur in the UK.
と言いたかった文章を、UKを主語にした構文を使ってパラフレーズした文章。
さらに「many car accidents」を「the similar trend」と言い換えている。
この2つの表現ですが、実は、単語だけを見ると同じ意味にはならない。
「自動車事故」と「類似の傾向」は全然違う意味の言葉。
しかし、USAの文章に続いて使われたときに限っては、読者は同じことを指していると分かる。
- Many car accidents occur in the USA. The UK also suffers the similar trend.
この2つの文章が続けて使われると、パラフレーズとして成立する。
これが、ケースCよりも一段上を行くパラフレーズ。つまり論理構成を意識したパラフレーズ。
このパラフレーズのコツは、最初の表現を抽象化してパラフレーズするということ。
「the similar trend」というのは、「many car accidents」を抽象化している。
逆に言うと「the similar trend」を具体化したのが「many car accidents」。
パラフレーズの4つのレベル
ということで、
A:同じ意味にならない間違ったパラフレーズ
B:単語は違うけど構文が同じパラフレーズ
C:異なる構文が使えているパラフレーズ
D:その文脈で成立する表現を使ったパラフレーズ
という4つのレベルがあるが、それぞれ
A:語彙面でマイナス評価
B:構文面でマイナス評価
C:構文面でプラス評価(語彙面はマイナスにならない)
D:語彙面、構文面、論理面でプラス評価
といった結果になる。
③適切な順序と時間配分で取り組む
Task2からスタートしていいのは目標スコア6.0以下の人だけ
- 多くの参考書にはTask2から取り組め、ということが書かれている。
- その理由は単純にスコアの重み。IELTSのライティングはTask1:Task2=1:2の重みでスコアが配分されるため、より配点の高いTask2から始めろ、というのが多くの参考書の根拠になっている。
- ただ、この考えには、ある1つの前提が隠れている。それは、少なくともTask2を最後まで書くことができれば、Task1は途中で終わっても良い、という考え。
- Task1が途中で終わった場合、スコアは最高で6.0止まりになる。つまり、Task1は途中で終わっても良い、という戦略が取れるのは、目標のライティングスコアが6.0までの方に限る。それ以上のスコアを目指す場合は、どちらから始めるにしても、両方きちんと最後まで書ききることが大前提になる。
よく見られる傾向
- 多くの人はスタートした方のタスクが長引く傾向にある。Task1から始めた場合は、目標時間の20分を越え、Task2のための残り時間が40分を切るケースが多く、逆にTask2から始めた場合は、目標時間の40分を越え、Task1の残り時間が20分を切るケースが多い。
- これは、最初の方は残り時間が多くあると思って、ついペースを考えず書きすぎてしまったり、長く見直し時間を取ったりしてしまうのが原因。
ライティング6.0以上を目指すならTask1からスタートしろ
- ライティングのスコア6.0以上を目指す人は、Task1からスタートするのがお勧め。
- 6.0以上を目指す場合、基本的には両タスクを最後まで書ききることが前提になる。
- そのときに、Task2から始めると、Task2の時間が40分をオーバーする傾向がある。Task1の時間がその分削られる。例えばTask2の時間が3分オーバーすると、Task1の残り時間が17分。17分というのは、本来Task1に割くべき20分から15%時間が短縮されている状態。
- Task1から始めた場合、やはりTask1の所要時間は延び気味になる。仮に3分オーバーしたとすると、Task2に使える時間は37分。37分というのは、本来Task2に割くべき40分から7.5%時間が短縮されている状態。
- ここで人間の心理として、残り17分でTask1を書き上げるときと、残り37分でTask2を書き上げるのは、どちらが冷静でいられるかというと後者。15%と7.5%を比べると、明らかに15%も時間が削減されたら、人間冷静ではいられないが、7.5%なら何とか平静でいられるレベル。この差が大きい。
- Task2から始めた場合、Task2を書き終えるのは少なくとも開始時間30分を越えている。一方でTask1から始めた場合は、試験時間の半分に到達する前にTask1を終えていることが多い。
- 残り十数分でもう1つタスク(Task1)が残っているという状態と、時間を半分以上残して、1つのタスク(Task1)を終えてしまっている状態とで、どちらが安心感があるかというとやはり後者の方が安心。
- ということで、6.0以上を目指す場合は、Task2からスタートするのがお勧め。
Task1とTask2の時間配分
- 一般的にはTask1:20分、Task2:40分と言われるが、これはスコアの配分から出てきた考え方。
- しかし、実際は文字数で考えるべき。Task1:150ワード、Task2:250ワード、という文字数から考えると、Task1、Task2にかけるべき時間は1:2ではなく3:5。
- 60分で考えると、Task1:23分、Task2:37分が文字数の割合から考えられる時間配分。
Task1の時間配分(23分)
- 最初の1分:設問を理解し、設問タイプを判別する。
- 次の3分:各段落での記載事項を決定する。
- 次の16分:記述を行う。
- Introduction:1分
- Overview:3分
- Body:12分
- 最後の3分:見直しする。
Task2の時間配分(37分)
- 最初の1分:設問を理解し、設問タイプを判別する。
- 次の4分:各段落での記載事項を決定する。
- 次の28分:記述を行う。
- Introduction:4分
- Body1:11分
- Body2:11分
- Conclusion:2分
- 最後の3分:見直しする。