5-1)合理的なライティング対策を実施する

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ライティング対策を合理的に進めるための方針についてまとめます。

①はじめに

IELTSではライティングが最もスコアが上がりにくいと言われていて、このライティングに対してどのように取り組んで行けば良いかを考えてみます。

ライティングにおける悩みと誤った対策

IELTSライティングでよくある2つの悩み

  • 1つ目の悩みが「時間が足らない」というもの。
  • IELTSライティングは60分でTask1とTask2の2つのエッセイを書かなければならないが、60分で2つのタスクをこなすのは大変。初受験時は最後まで書ききれないことも多い。
  • もう1つの悩みが「どれだけ努力してもスコアが上がらない」というもの。
  • 何か月もかけてライティングの対策をしてきて、「今回のライティングは会心の出来だった!」と満足したものが書けても、返ってきたスコアはいつもと変わらないということが何度も続く。こちらは努力が報われる感じがないためダメージが大きい。

 

典型的な誤った対策

  • 時間が足らない状況に対して「設計をせずにすぐに書き始める」受験生も多いが、これは間違った対策。
  • 設計無しに書いても必ず行き詰るし、出来上がったライティングがひどいものになることも多い。内容を考えながら書いたり、書き直しになる箇所も多く、結果的に余計に時間がかかることも多い。
  • また、スコアが上がらない状況に対して「難しい単語を使えばスコアが上がる」という対策に走る人も多いがこれも間違い。
  • ライティングで6.0が取れない、6.5が取れない、という状況だとしたらその原因は「語彙力」ではなく、ほとんどが「論理性」か「文法」。
  • 正確な原因を知らずにどれだけ対策してもスコアは微動だにしないことが多い。
ライティングのスコアが上がりにくい試験特性がある

ライティングのスコアが簡単に変わらないそもそもの理由

  • 意外かもしれないが、ライティングはほとんど対策していなくても何かを書き上げていれば4.5取れる。多少の準備をした場合は5.0になる。つまりライティングの下限値は意外に高い
  • 一方、上限値についてはかなり厳しい。ネイティブが準備なくIELTS受験した場合でもライティングは6.5と言われる。ネイティブが準備して臨んだ場合も7.5止まりのケースが多い。通常の日本人受験生が取れるのはマックスで7.0。しかもライティング7.0取れるのはかなり少数であり、オーバーオール7.0達成している人でも実はライティングだけは6.5止まり、というケースの方が多い。
  • つまり受験生の大半は5.0、5.5、6.0、6.5の4つのスコアのいずれか。この4つのスコアに初心者から上級者まで含まれるため、0.5の差はかなり大きいことが分かる。
  • 従ってそう簡単に0.5上がらない仕組みになっている。

 

②ライティングの本質的な課題と対策の方向性

ライティングの悩みを解決する本質的な考え方について説明します。

ライティングが最後まで書ききれない理由

時間がかかってしまう原因

  • 大きく3つの原因がある。
    • 1.設計の精度が低く、後から書き直しが多く発生している
    • 2.設計自体に時間がかかり過ぎている
    • 3.記述に時間がかかり過ぎている

 

「1.設計の精度が低く、後から書き直しが多く発生している」

  • Task1もTask2もいきなり書き始めるのではなくて、最初に設計を行って、どんなことを書くかを決めていく。
  • その設計はTask1で3分、Task2で5分程度をかけて、書く内容を精緻に決めていく。
  • Task1(アカデミック)であれば、図表をどのような切り口で書けば良いのか、Task2であれば、どんな賛成意見・反対意見を書いていけば良いのか、など記載時に考える必要がほとんどないレベルまで設計で決めておく。

 

「2.設計自体に時間がかかり過ぎている」

  • 設計内容をゼロから考えると時間がかかる。
  • 従って、最初から、図表の切り口のパターンや、Task2の賛成意見・反対意見のアイデアパターンを準備しておき、そこから選ぶように設計していくと時間が短縮できる。
  • パターンを覚えたら、そのパターンを使って設計する練習をしていく。これは色んな問題を見て、覚えたパターンを当てはめて設計していく練習。
  • パターンをスムーズに当てはめられるようになるまで、ある程度の数稽古は必要。一定以上の数をこなしていくと、短時間で設計が出来るようになる。

 

「3.記述に時間がかかり過ぎている」

  • 日本語が思い浮かぶのに、英語にするのに時間がかかる人の特徴として、その場でこれまで見たことも書いたこともない表現を何とか作り出そうとする傾向がある。
  • 例えば、「大量生産をする」という言い方をしたいときに「大量生産」=mass productionという単語を思い付いたら、次に「~をする」に当たる単語を一生懸命考える。それで、よく分からないまま適当な動詞をそこに当てはめようとする。こういう思考でライティングをすると、時間もかかるし、間違う確率も高くなる。
  • 「何とか、同じ意味を、自分が知っている範囲で、表現できないか。」と考える。そうすると、ずっと時間短縮が出来る。
  • ただ、自分が知っている範囲の表現を使うことで時間短縮は出来るのですが、当然、自分が知っている表現が少ない場合は、そんなことをしていても、書ける範囲が非常に狭くなる。
  • そこで、自分が知っている表現をどんどん増やしていくことが大切。覚えた数が一定の分量に達すると、表現できる範囲が広がっていく。
書けたと思ってもスコアが上がらない理由

自己評価と結果が一致しない原因

  • 大きく2つの原因がある。
    • 1.自分基準で出来たつもりになっているだけ
    • 2.練習と本番の差が大きい

 

1.自分基準で出来たつもりになっているだけ

  • 出来たつもりなのにスコアが変わらない場合、ほとんどの原因はこれ。
  • たとえば「どんなに時間を使って単語を調べて書いてもいい」と言われて書いたライティングのスコアが5.5だとしたら、その人の基準は5.5ということ。だからその人がどんなに会心の出来だと思っても、本番のスコアは5.5止まり
  • 「3時間かけたのだから5.5なんてことはない」と思う人も多いが、実態はかなりの割合の方が、3時間かけて書いても5.5の水準。知らないポイントや、自分で気づいていないミスが大量にあり、それらの減点が重なってスコアが下がっている
  • 減点されるポイントを知らずに自分の基準内でどれだけ時間をかけてもやっぱり基準内のスコアしか出ない。
  • このため、まずは客観的に減点されるポイントや、高いレベルの英文を知る、ということが大事。IELTSライティングの採点基準を知り、その目線で自分の英文や高いレベルの解答例を分析して、どこが減点されているのか、どうすれば評価されるのか、を理解する。
  • 自分の英文を自分で客観的に評価できない場合は添削が有効添削の目的は「自分基準を客観基準に修正してくこと」。頭で理解している評価されるポイントを、実際に自分も実践できているかを、客観的に検証する。
  • 自分の中では論理的だと思っていることでも、他人が見ると意味が伝わらなかったり、必要なことが書けていなかったり、ということが多々出てくる。あるいは自分が正しいと思う単語や構文でも、場面によっては不適切な使い方だったり、自分が知らない文法違反を犯していたり、ということも分かる。
  • 添削は、特にIELTSの採点基準を知っている人にチェックしてもらうのが最終的には必要。

 

2.練習と本番の差が大きい

  • 本番で出来たつもりなのにスコアが変わらない場合のもう1つの理由は、本番での再現力が弱いこと。練習や添削では良い結果なのに本番でスコアが安定しない場合は、こちらが主な原因。
  • 特に練習と違って時間制限がある本番では、設計が不十分でロジックが甘くなったり、練習ではしないミスをしたりすることが増える。
  • 再現力を高めるためには以下2つが必要。
    • アイデアや表現をストックして覚える
    • 制限時間内でアウトプットする練習をする
  • 特にアイデアや表現のストックは重要で、考えたことがあるアイデアや、使ったことがある表現だけでライティングが書けるようになるとアウトプットの質が一気に安定する。
  • 気をつけたいのは、1つ目の原因である自分の基準が十分に高まっていない段階で、むやみやたらと単語を覚えたり、時間制限を設けてアウトプットする練習ばかりをしないこと。
  • 順番としては、まず自分の中の基準を高めること。それらが十分高まったうえで、次のステップとしてストックしたアイデアや表現を覚えて、制限時間内にアウトプットできれば、自分の感触と返ってきた結果は一致するようになる

 

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