4-4)IELTSリーディングセクションの取り組み戦略をマスターする

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①タイムマネジメント

IELTSリーディングではタイムマネジメントが重要です。

3問目が読み終われない方へのお勧めペース配分

ポイントはペース配分

  • リーディングで3問目が最後まで読めない、あるいは最後まで読めてもスコアが安定しない大きな原因はペース配分が悪いこと
  • 同じリーディングの実力であっても、このペース配分を変えるだけでスコアが変わることがある

 

3つのパッセージの難易度

  • 統計的には1問目がもっとも易しく、3問目が最も難しいことが多い。
  • ただし、個別の試験では必ずしもそうなっていないことも多く、1問目が最も難しいケース、2問目が最も難しいケースもある。
  • 3問目が難易度が高いから3問目に最も時間をかけるべき、という指導がされることもあるが、必ずしも毎回当てはまるとは限らないので、固定的な選択はしない方が良い。

 

お勧めのペース配分

  • お勧めするのは3問とも20分ずつ均等に時間配分すること。
  • 何問目が最も難しかったかは読んで解いてみてから結果として分かることであり、最初から時間配分に傾斜をかけることは出来ない。
  • もちろん1問目、2問目が20分以内で終われるのであれば、3問目に長い時間かけるのは問題ない。

 

絶対に避けなければならないこと

  • 1問目も2問目も20分以内には終わらないというのが多くの受験生の実態。問題は、最初の2問が20分で終わらなかったときの対応。
  • ここで多くの受験生は、20分で終わらなかった場合、そのまま解き終わるまで時間を延長して続けてしまう。その場合、当然3問目が残り20分以下という状態でスタートすることになる。
  • これは単に3問目が最後まで終わらない、という結果だけではなく、より深刻な事態を招く。
  • 例えば残り15分で3問目をスタートした場合、「急いで読まないと最後まで読めない」「全部は読んでいられない」という焦る気持ちが自然に芽生え、目は走らせているが内容が全く頭に入ってこない(空読み)状態になる。この状態になると、正解率が急落する。
  • この落差は、想像以上に大きく、通常の半分以下といったひどい結果になることも多い。

 

20分で1パッセージ最後まで読み終われない場合

  • 1問目、2問目で20分に到達した場合、強制終了する
  • 1問目、2問目で残り数問が残っていたとしても、適当で良いので残りの答えを埋めて、次の問題に移る。
  • こうすると3問目に20分残せるので、空読みにならず落ち着いて読める可能性が高くなる。
  • 1問目、2問目の最後の数問は当てずっぽうで答えることになるが、その中でも一定の確率で正解にはなるし、ここで捨てた設問数は、3問目を空読みして落としてしまう設問数よりも圧倒的に少ない水準になる。

 

分かっていても本番では出来ない人もいる

  • 20分強制終了ルールを頭に入れている人でも、いざ本番になって、1問目、2問目を取り組んでいるときは「このまま数分延長して途中まで取り組んできた問題を解き終えた方が良いのでは?」という誘惑にかられることがある。
  • 試験本番中は、目の前の設問で損をすることが大きく見えてしまい、全体的な視野で考えられなくなることが多い。
  • しかし、1問目、2問目を強制終了したことでの損よりも、3問目を焦って読むことでの損の方が大きい、というのがポイント。
  • 加えてIELTSは、全40問が同じ重みでカウントされるため、全40問の中でトータルに正解数を増やすことを考え、最もスコアを伸ばしやすいところを伸ばすことが重要
  • 1問目、2問目を強制終了するというのはある意味、勇気が必要人間の本能として、途中まで読んだ馴染みのある内容を最後までやった方が、新しい文章を読むよりも効率的に思える。でも、客観的に見ると、それは間違った判断

 

3問とも強制終了しても7.0は獲れる

  • これまでも何人も実例として、1問目、2問目、3問目いずれも時間内に終わらずに強制終了したのに7.0以上獲得できたケースがある。
  • 重要なのは最後まで読み切ることではなく、時間内に読めた箇所について、しっかり根拠をもって回答できることである。
  • 1問目、2問目、3問目でそれぞれで10問正解すれば7.0に届くので、スコアを獲るためには、スピードよりも精度を重視することが重要である。

 

②設問の取り組み順

どういう順番で取り組むのかによって回答にかかる時間や精度を大きく改善することができます。

IELTSリーディングでは本文と設問をどういう順番で読むのか

原則、設問を先に読んで本文を後から読む

  • 基本的には設問を先に読んだ方が良い。
  • 後で何を問われるか分からないまま本文を読もうとすると、本文の全てを満遍なく読まなくてはならない。そうすると、本当は設問に関係ない場所であっても、理解出来なければ何度も読み直したりして、無駄な時間が発生する。
  • また、長い文章を最初にすべて読んで、その内容を覚えておくのは難しい。結局設問に答える段階で、もう一度読まなくてはならなくなる。
  • 逆に、設問で何を聞かれるかがあらかじめ分かっているなら、関連しそうな箇所だけを重点的に読み、そうでない箇所はサラッと読み流すことも出来る。
  • また設問のために再度本文を読み直す必要もなくなる。

 

でも、全設問を先に読む必要はない

  • そもそも全設問に先に目を通したところで、すべての設問を覚えていられない。
  • 全設問ではなく、必要な設問だけに先に目を通す。
  • 本文を一度読み終わればすべての設問に対して回答が出来ている状態を目指したいので、本文に情報が出てくる順番に設問を先読みして、設問に答え終わったら次の設問を読んで本文の続きを読んでいく

 

本文にはどういう順番で設問の情報が出てくるのか

  • リーディングは主要な設問タイプが6つあるが、この設問タイプによって、本文に情報が出てくる順序が変わる
  • 設問タイプを以下のように2つに分ける
    • タイプA:空欄補充問題、TF/YN問題、選択肢問題、リストマッチング問題のうち「②サマリータイプ」と「③文章と文章をつなぐタイプ」
    • タイプB:リストマッチングのうち「①文章と単語をつなぐタイプ」、パラグラフ選択問題、Heading問題
  • タイプAは、設問の出題順のまま本文に情報が出てくるタイプ。タイプBは、設問の出題順のまま本文に情報が出てくるとは限らないタイプ。
  • さらに、1つのパッセージにつき2~4の設問グループに分かれているが、異なる設問グループの設問ではどちらが先に本文に情報が出てくるか分からない。
タイプAのみのパッセージの例

すべてタイプAの例

設問が1-4がTF問題、5-9が選択肢問題、10-13が空欄補充問題のようにいずれもタイプAの場合、各設問グループの中では、設問の順番通りに本文に情報が出てくる。

つまり、TF問題の中では1の情報が2の情報よりも先に本文に出てくるし、選択肢問題の中では5の情報が6の情報よりも先に出てくる。

しかし、TF問題の先頭の1の情報と、選択肢問題の先頭の5の情報、空欄補充問題の先頭の10の情報はどれが最初に本文に出てくるかは分からない。

従って、この設問パターンで、本文を読む前に先読みをすべき設問は

各設問グループの先頭の1,5,10である。

この3問の情報を探しながら本文を読んでいく。

さて本文を読んでいって最初に出てきた情報が1だったとする。

そこで、

設問1を回答して、その次の設問2を先読みする。

先読みを終えたので、次に2、5、10の情報を探しながら本文の続きを読んでいく。すると

本文の中に5の情報が出てくる。そこで設問5に回答して、次の設問6の先読みをする。

この段階では2、6、10の情報を探しながら本文の続きを読んでいく。

するとパラグラフBで6の情報が出てきたので、設問6に回答して、次の設問7を先読みする。

本文に戻って続きを読むと

すると10の情報が出てきたので、設問10に回答して、次の設問11を先読みする。

以降、同じように設問に答えたら、次の設問を先読みして本文の続きを読んでいく、ということを繰り返すと、本文を最後まで読み終わった段階で、全設問回答し終えているという状態になる。

タイプBも含まれたパッセージの例

タイプBを含んでいる例

設問が1-4がHeading問題、5-9が選択肢問題、10-13がリストマッチング問題のようにタイプAとタイプBが両方含まれている場合、タイプAだけは設問の順番通りに本文に情報が出てくるが、タイプBは必ずしも設問の順番通りに本文に情報は出てこない。

従って、この設問パターンで、本文を読む前に先読みをすべき設問は

選択肢問題グループの先頭の5のみである。

あとリストマッチング問題は設問文は読まないが、リストにある単語だけは見ておく。この場合リストはDr.X、Dr.Y、Dr.Zのような人物名が並んでいるので本文中にこれらの人物名が出てきたらそこで設問文を読むようにする。

ということで、5の情報とリストにある3人の人物名を探しながら本文を読んでいく。

さて本文を読んでいってパラグラフAの中で5の情報が出てきたとする。

そこで、

設問5を回答して、その次の設問6を先読みする。

次に6の情報と3人の人物名を探しながら本文の続きを読んでいく。すると

パラグラフAの後半でDr.Xについての記述が出てきたとする。

ここで設問10-13をチェックしていく。そこで設問12がDr.Xに関連する内容であれば12を回答する。

そして本文の続きを読んでいく。

そしてその後、6に関する情報や人物名が出て来ずにパラグラフAを最後まで読み終わったとする。

この段階でHeading問題の1問目、パラグラフAに関する回答をしていく。選択肢i~ivをチェックして該当するものを選択していく。

そして次のパラグラフBを読んでいく。

パラグラフBの中で6に関する情報が出てきたとする。そこで、

設問6に回答して次の設問7を先読みする。

その後パラグラフBの続きを読むが、設問7の情報や人物名は出て来ずにパラグラフBを読み終わったとする。

ここでHeading問題の2問目に回答していく。選択肢でパラグラフAで回答したもの以外の選択肢をチェックしていき、該当するものを選択していく。

以降、同じように設問に回答しながら本文を読んでいくと、本文を最後まで読み終わった段階で、全設問回答し終えているという状態になる。

 

③本文を読む際のポイント

その他、本文を読む際に気を付けたいポイントをまとめてみます。

本文のキーワードを見逃さない

キーワードが専門用語になると難易度が上がる

  • どのパッセージにも中心テーマになる単語がある。例えば「光合成について」「自動運転ついて」など「〇〇について」というテーマの「〇〇」に当たるのがキーワードである。
  • 当然ながらキーワードにあたる単語はパッセージの中に何度も出てくる
  • そのキーワードが「光合成」とか「自動運転」のような一般的な言葉なら問題はないが、一般のネイティブであってもその分野に詳しい人しか知らないような専門用語(特定の動物の名前や化学物質など)がキーワードになっているケースがある。
  • そのような専門用語がキーワードとなっている場合、その専門用語が何を意味するものかが分からないと、何度もその単語が出てくるため、本文の理解度が著しく落ちてしまう

過去専門用語がキーワードとなっていた例

  • thylacine(フクロオオカミ:絶滅したオオカミの一種)
  • phytochromes(フィトクロム:植物中の光を感知する分子)
  • qanat(カナート:古代のトンネル掘削技術)
  • implicit theories(暗黙理論:知能に関する理論)
  • oxytocin(オキシトシン:脳内で作られる化学物質)

 

キーワードの説明は第1パラグラフ前半に出てくる

  • 専門用語が分からないのはネイティブも同様である。
  • そのため、著者は専門用語をキーワードにして英文を書く場合は、必ず第1パラグラフ前半(キーワードが出てくる前に導入がある場合も、遅くともそのキーワードが出てきた直前・直後)で、そのキーワードの説明をしている。
  • パッセージの早い段階で出てくるため、これを見逃す人もいるが、そうなるとその後の内容の理解は厳しくなる。
  • 第1パラグラフ前半で出てくるキーワードの説明を見逃さないようにすることは重要である

 

本文を読んでいる最中に探している情報を忘れてしまう場合

メモを有効活用する

  • IELTSのリーディングは、問題を先読みできるのが大きな特徴だが、その問題先読みをしても、本文を読んでいるうちに何の情報を探しているのか分からなくなることがある。
  • 1つの情報だけを探しながら読む場合は良くても、2つ、3つの情報を同時に探しながら読むシーンになると、苦労する方も多い。
  • 対処法として、設問を読んで、本文から探さなければならない情報を、一言、二言で良いので、日本語でメモしておくと良いペーパー受験の場合は本文の余白、コンピュータ受験の場合は手元の用紙に、今から何の情報を探すかをメモしておく。設問の内容を忘れた場合は、それを読めば良い。
  • メモする時間はかかるが、英語の設問を読み直して内容を見直すよりは短い時間で済む
  • さらにメモをすることで、覚えやすくなるという副次的効果もある。メモした時点で覚えてしまったということもある。
  • もちろん探す情報が少ない場合は、いちいちメモする必要はない。3つ以上の情報を同時に探せない、とか、2つになったらもう駄目だとか、自分の限界値を知っておけば、そのときだけメモ作戦を実践すればよい。
本文が難しすぎて内容が頭に入ってこない場合

本文の難しい場合、設問は易しい

  • IELTSリーディングでは、本文が難しいときは、設問は簡単で、本文が易しいときは、設問は難しく作られることが多い。これで難易度のバランスを取っていると考える。
  • 本文を読み始めて「単語が難しい」「テーマに全く知識がない」「内容が抽象的」など「難しい」と感じた場合、「本文が難しいときは、設問は素直なことが多い」ということを思い出すと良い。例えば、パラフレーズが使われていないとか、固有名詞などで関連箇所が探しやすいとか、紛らわしい選択肢がなくて、簡単に絞れたりなど。
  • 従って本文が難解でも、分からないなりに読んでいけば、何とか解答できることが多い。あきらめないで、食らいつくことが大事。
  • その結果、「全く手応えがなかったが、結果を見ると思った以上に正解できている」ということがよく起こる。

 

本文が易しい場合、設問文で油断しない

  • 逆に本文が読みやすい文章がある。身近なコンピュータの話題だったり、有名人の伝記だったり。こういう文章はわりとスラスラ読めることが多い。
  • しかし、こういうときは要注意。設問に引っ掛け問題が多めに含まれている傾向がある。紛らわしいパラフレーズ、単数形と複数形の違い、助動詞の在り無し、比較級と最上級といった細部を見逃すと、間違ってしまうような設問が含まれることが多い。
  • その結果、「読めたし手応えがあったのに、結果を見ると思った以上に悪かった」ということがよく起こる。
  • 本文を読み始めて「分かる」「読みやすい」と感じたときは逆に、設問文を慎重に引っ掛けに掛からないように進めていく必要がある。

 

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