
目次
①3つの基礎スキルのマスター順序について
3つの基礎スキル「文法的理解力」「文脈的理解力」「論理的理解力」をマスターしていく順序について説明します。
「文法的理解」⇒「文脈的理解」⇒「論理的理解」の順で身につける
- 「論理的理解」は「文脈的理解」が出来ていることが前提、「文脈的理解」は「文法的理解」が出来ていることが前提。このため「文法的理解」が出来ていないのに「文脈的理解」「論理的理解」の取り組みを行ってもあまり効果がない。
②「基礎スキル1:文法的理解力」について
返り読みしないで一度で構文構造を正確に捉えられる文法的理解についてまとめます。
読み直しが発生する最大の原因
- 最大の原因は語彙力の不足と文法力の不足
- 可能性としては、この後に説明する「文脈的理解」「論理的理解」の不足が原因の場合もあるが、それよりも「文法的理解」の不足が原因である可能性が圧倒的に高い。
- 語彙力については語彙カバレッジ98%の法則で述べた通り、知らない単語がない状態か、ある状態かが理解度には大きく影響する。これは読んでいる本人にとっても自覚しやすい原因。
- 一方の文法力については自身の文法力不足を自覚していない人も多い。これは仮に全く文法を知らずに、ただ出てくる単語から意味を推測するような読み方であったとしても、何となく理解出来た感覚があるからである。しかし、現実には文法力が不足で読み直しているケースはとても多い。
例えば以下の英文を前から返り読みせずに意味が取れるだろうか?
- Although the project, which had been initially dismissed as impractical by several experts, eventually gained international recognition, its success was largely attributed to the persistence of a small but dedicated team.
一度で意味が取れない場合、文法力が不足している可能性がある。
【日本語訳】そのプロジェクトは、当初複数の専門家に実現不可能だと退けられたにもかかわらず、最終的に国際的な評価を得たが、その成功は主に小規模ながら献身的なチームの粘り強さによるものだった。
二度読み・返り読みの頻度が減る
- 二度読み・返り読みの最大の原因が解消され、読解スピードが速くなる。
- センテンスの8割以上は理解できるようになる。
- IELTSの1つのパッセージを20分以内で最後まで読めるようになる。
リーディングスコアが6点台に安定して乗る
- センテンスの8割以上が理解できて、1つのパッセージを20分以内で読み切れるようになれば必然的にリーディングスコアも6.0以上が安定して取れるようになる。
③「基礎スキル2:文脈的理解力」について
単語も構文だけでなく、文脈も含めて意味が腹に落ちるようになるための文脈的理解についてまとめます。
単語も構文も分かるのに意味が分からない、という現象
- 単語も分かる、構文も分かる、直訳はできるのに、中身の意味が分からない、というケースがある。
- こういった課題は苦労する人と苦労しない人がくっきり分かれ、特に苦労しない人にとっては感覚が分かりにくい。そういう人にとっては「単語と構文が分かれば、当然意味は分かるはず」という感覚。
- しかし、実際はこのようなケースで苦労している人は割と多い。
意味が分からなくなる人の傾向
- 根底にあるのが、「英文を読むときに、その著者が伝えようとしていることを理解しようとしていない」ということ。中身を理解することを目的にするよりも、「目を動かす」「文字面を眺める」「読んだという事実を作る」ことに主眼がある。
- そのため以下のような現象が見られる。
- 単語を辞書通りの意味でしか訳せず、文脈に応じた適切な訳ができない
- パラフレーズや比喩表現が何を言い換えているのかが分からないし、分かろうともしていない
- 代名詞が指しているものが何かを理解しようとしない
- 時制のニュアンス、助動詞のニュアンス、定冠詞theのニュアンス、比較級のニュアンスなどを無視している
- 省略された情報を補って読もうとしない
- 結果として、日本語訳を作ることは出来ても、その日本語訳を見てどういう内容なのか自分でも分からない、ということがしばしば起こる。
逆に意味が理解できている人の傾向
- 一旦直訳したあとに以下のような修正や推測を行って、自分にとって意味が分かる内容に変換してから理解している。
- 辞書通りの訳だと意味が分からないから、前後関係から適切な訳を探す
- パラフレーズや比喩表現のままでは前後の話がつながらないから、その言葉が、それまで出てきたどの言葉を言い換えた表現なのかを考える
- 代名詞が何を指しているか分からないと、意味が理解できないから、代名詞がその前の文章の何を指しているか探す
- 前後の文脈が合わなかったり矛盾していたりするので、時制や助動詞、定冠詞、比較級などの見落としがないかを再確認する
- 意味が分からず気持ち悪いから、何か省略されている情報がないかを前後関係から推測する
”腹に落ちる”という感覚
- 意味が完全に理解できているかどうかを自分で判断するために「内容が腹に落ちているか」は極めて重要な指標。逆にモヤモヤ感が残る状態であれば完全には理解しきれていないと考えるべき。
- 腹に落ちていれば以下のような状態になる。
- 完全にスッキリと理解出来た感じがある
- 他人に向けて自分の言葉で説明できる
- 映像化してシーンが脳裏に浮かべられる
- 逆に「こう解釈したけど前後の話とつながらない」という違和感や、「こう思うんだけど合っているかな」という不安を感じる場合は、だいたい間違っていると考える。
自分の言葉に置き換える
- 英文を直訳ではなく、自分でも理解できる言葉に変えて理解する。
- 単語の訳は、必ずしも辞書通りでなくても良い。前後関係から考えて、一番ふさわしいと思う訳にする。
- 最終的に自分でも意味が分かる訳にすることが大事。
たとえば
- disdain
という単語にはよく「蔑む(さげすむ)」という訳がついています。ところがこの「蔑む」という日本語は、普段あまり使わない人もいますね。そしてその意味を正確に分からないままにしている人もいるでしょう。
しかし、その意味を「蔑む」というよく分からない日本語のまま覚えてしまうと、当然英文を読んでいてdisdainが出てきたときに「蔑む」としか訳せません。そうすると、その人の中では意味が本当の意味でイメージできません。
でも例えば「蔑む」がよく分からない人でも「軽蔑する」なら、理解できる人も多いでしょう。「軽蔑する」でも分かりにくければ「見下す」「馬鹿にする」ぐらいまでかみ砕けば理解できるのではないでしょうか?
「見下す」「馬鹿にする」という訳をつけて初めて腹に落ちた意味として理解できます。
文脈的意味の感覚を養うために
- 文脈に沿った意味を当てはめる、という感覚が分かりにくい場合は、日本語訳がついた英文を用意して、自分の日本語訳との違いを見比べてみると良い。
- あるいは英文を自分で訳してみた後に、ChatGPTでその英語を日本語訳してもらって、その差を確認しても良い。その際に、文脈的な意味解釈を見るために、1つのセンテンスだけでなく、1つのパラグラフ丸ごと日本語訳してもらうと良い。「直訳ではなく自然で分かりやすい日本語で訳してみて」という指定をするとさらに良い。
The new rules sounded fair at first, but in reality, some members found themselves fighting an uphill battle to keep up.
- 【辞書的直訳】(モヤモヤ感が残る訳)
その新しいルールは最初は公平に聞こえたが、実際には、一部のメンバーにとってはついていくのに上り坂の戦いを強いられた。
- 【自然な訳(腹に落ちる訳)】
その新しいルールは最初は公平に聞こえたが、実際には、一部のメンバーにとってはついていくのが非常に困難なものだった。
細部を見落とさない
- 主語、述語、目的語、補語の骨格さえ分かれば英文のおよその意味は取れる。しかし、時制、助動詞、冠詞、単複、比較級などの細部のニュアンスが取れないと正確な意味が取れているとは言えない。
- 前後の文脈との関係を考えてみて、「話がつながらない」「矛盾している」ように感じるのであれば、これらの細部を見落として解釈している可能性がある。
例えば以下の英文の1文目と2文目を読んでみて矛盾を感じる人はいないだろうか?
- The researcher conducted a study to understand the lasting effects of the medication and reached a conclusion within a half year. At the time, medications normally took several years to observe the long-term effects.
1文目は「結論は半年以内に出た」となっていて、2文目は「数年かかる」となっている。この2つに矛盾を感じるのであれば、細部を見逃している可能性がある。
よく見ると1文目は
- The researcher conducted a study to understand the lasting effects of the medication and reached a conclusion within a half year.
のように「the+単数形」になっていて「1つの特定の薬」についての説明であることが分かる。一方で2文目は、
- At the time, medications normally took several years to observe the long-term effects.
のように「the無し+複数形」となっていて、「世の中の一般の薬」について述べた内容であることが分かる。
よって、「冠詞theの有無」「単数形か複数形か」といった細部まで確認することにより、1文目と2文目には矛盾が無いことが分かる。
例えばこの英文に対して、【True/False/Not Given】の設問として以下のように聞かれていた場合
- The medication took several years to show its long-term effects.
設問文の中の以下の部分に注目してみると
- The medication took several years to show its long-term effects.
本文で全く同じ表現が出てくるため
- The researcher conducted a study to understand the lasting effects of the medication and reached a conclusion within a half year. At the time, medications normally took several years to observe the long-term effects.
2文目を根拠にTrueと答えてしまう人が続出する。しかし、この設問文では
- The medication took several years to show its long-term effects.
のように「the+単数形」となっていて、「1つの特定の薬」について聞かれた設問であるため、本文で根拠にしなければならないのは2文目ではなく、1文目である。
- The researcher conducted a study to understand the lasting effects of the medication and reached a conclusion within a half year. At the time, medications normally took several years to observe the long-term effects.
よってこの設問の回答はFalseとなる。
このようにtheがついているか、単数形か複数形かといった細部を読み込めないと正解を導けない問題もある。
文脈から省略された言葉を補う
- あるセンテンスが腹に落ちない内容に見える場合、何か省略された言葉があるのではないかと疑ってみる。
- 主語が無い文章であれば主語は何か、目的語が省略されているのであれば目的語は何か、比較級があるのに比較対象が省略されている場合は何と比較しているのか、考えてみる。
- 省略されているということは書かなくても分かる、ということなので、少し考えればすぐに判明することも多い。
- 特にそのセンテンス単独で考えるのではなく、前後の文脈との整合性から考えてみることが大事。
- 正確に省略された言葉が補えると、明らかに前後の文脈と一貫性がある流れになるため、腹に落ちる解釈になる。
- Sample A completed the reaction successfully, while Sample B – identical in composition – failed.
このfailedを例えば「間違えた」と訳したとする。
しかし、主語が無生物主語のSample Bであり、主に人間が主語になる「間違えた」という意味だと文脈的に意味が合わない。
ここで着目すべきは接続詞whileである。このwhileは対比するものを並べる場合に使う表現なので、whileの前のSample Aと、whileの後ろのSample Bは対比的なものとして説明されていることになる。
同様に両者の述語であるcompletedとfailedも対比的に使われていることが分かる。
- Sample A completed the reaction successfully
- Sample B – identical in composition – failed
さらにcompletedの後ろにはthe reactionという目的語があるが、これがfailedの後ろには省略されていることが分かる。
すなわち後半は省略部分を補うと、
- Sample B failed the reaction
となることが分かる。これは「反応を完了できなかった」といったニュアンスになる。
- Apples contain 10 mg of vitamin C per 100 g. They are grown mainly in temperate regions. Strawberries are richer.
この文章の最後のセンテンスは単独で解釈すると「いちごはより豊かである」という意味になるが、「いちごの何」が「何と比べて」豊かなのかが分からない。
しかし、前の文脈を見ると、「りんごのビタミンCの含有量」の話が書かれていることから、「いちごのビタミンCの含有量」が「りんごと比べて」豊かだと言いたいことが分かる。
パラフレーズが見破れるようになる
- 単語を「辞書的意味」だけでなく、「文脈的意味」で捉えられるようになると、IELTSリーディングで頻出のパラフレーズが見破りやすくなる
引っ掛けの設問が回避できる
- 細部を見逃さずに正確なニュアンスで理解できたり、省略部分を補って読めるようになると引っ掛けの設問に引っ掛からなくなる
情報探索系の問題に強くなる
- パラフレーズで情報を混乱させたり、引っ掛けの選択肢を作って引っ掛けさせるのは、IELTSリーディングの情報探索系問題(True/False、空欄補充、選択肢)の常套手段であるためこれらの設問の正解率を高めることにもつながる
④「基礎スキル3:論理的理解力」について
一文一文の理解だけでなく、パラグラフ全体で言いたい内容を理解する論理的理解についてまとめます。
結局全体で何が言いたかったのか
- 一文一文のセンテンスは構文も意味もよく分かる。だけど、1つのパラグラフを読み終わったときに、このパラグラフで何を論じられていたのかが全く頭に残っていない、ということはないだろうか?
- こうなると、せっかく一度読んだパッセージを、何を言いたかったのかを確認するためにもう一度読み直さなければならない。
- IELTSリーディングの時間がない場面では極めて大きなロスになる。
パラグラフ全体の内容が頭に残らない理由
- 原因は、脳のメモリが1つ1つのセンテンスを訳すことに100%使われているから。そして、時間を気にしながら、どんどん次のセンテンスを目で追っていく状態。
- このため、パラグラフ全体で何を言っているかを解釈する脳のメモリが残っていない。
「センテンスの役割」を考えながら読む
- 1つ1つのセンテンスには、議論を展開していくための「役割」がある。
- 例えば「テーマにつなぐための導入の役割」「テーマを設定する役割」「結論を述べる役割」「結論の理由を説明する役割」「理由を分かりやすくするために具体例を示す役割」など。
- パラグラフを読んでいく際に、各センテンスの意味だけでなく、「そのセンテンスに与えられた役割」を考えていく。そのセンテンスはこのパラグラフの中ではどういう役割を果たすために存在しているのか?という問いかけをしながら読み進める。
- センテンスの意味と役割を同時に考えることは難しいが、センテンスの意味を解釈した後に、一瞬だけ役割が何かを考える時間を取っても良い(0.5秒で良い)。最初は難しいが、慣れてくると徐々にセンテンスの役割がはっきりと見えてくるようになる。
- これが分かるとパラグラフ全体で何を言いたいのかが分かるようになってくる。
「センテンスの役割」は「パラグラフの構造」を意識すると理解しやすい
- 英文のパラグラフにはある一定の構造がある。
- 特に重要なのがトピックセンテンス。
- トピックセンテンスの役割と、それ以外のセンテンスが持つ役割のパターンが分かれば、パラグラフ構造や、各センテンスの役割はかなり単純で明快なものとなり、パラグラフ全体で言いたい内容も理解しやすくなる。
トピックセンテンスの役割はそのパラグラフの「テーマの予告」
- 英語のパラグラフにはトピックセンテンスと呼ばれる特殊なセンテンスがある。
- このトピックセンテンスの役割は「そのパラグラフで述べるテーマを予告する」ことである。
- これは日本語には無い概念なので、日本語話者にとっては分かりにくいが、英語ネイティブは子供の頃から常にトピックセンテンスを意識して読む習慣が出来ている。
- トピックセンテンスは「予告文」なので、そのパラグラフで述べられる内容は必ずそのトピックセンテンスで予告された内容に関連する。
- 逆に言うとトピックセンテンスが分かれば、そのパラグラフを細かく読まなくても何のテーマが語られるのかが分かる構造になっている。(あくまでテーマが分かるだけであり、そのテーマに対する結論や理由は中身を読まなければ分からないことも多い)
世界で2番目に広い国土を持つ国がある。
それはカナダである。
カナダは西はバンクーバーから東はプリンスエドワードアイランドまで約1,000万㎢の面積を誇っている。
この文章で多くの人は2番目のセンテンスである「それはカナダである」をトピックセンテンスと捉えてしまうが、これは正しくない。
このパラグラフで述べたいのは「2番目に広い国土を持つ国」であって、「カナダ」ではない。
従って、このパラグラフのトピックセンテンスは最初のセンテンスということになる。
確かに著者が伝えたいことは「カナダが2番目に広い国だ」ということかもしれませんが、もし2番目のセンテンスをトピックセンテンスとして捉えた場合、このパラグラフで扱う概念はカナダのこと全般になってしまうので、国土面積のみならず、人口、経済、宗教、気候など他の要素も取り扱うことになってしまう。
この場合、最初のセンテンスを親の文章(=トピックセンテンス)、第2センテンス以降を子どもの文章(=サポートセンテンス)と捉える方が自然。
トピックセンテンスは、そのパラグラフで何を扱うかを示す「目次」のようなものである、と捉えると分かりやすい。
トピックセンテンスの4つの出現パターン
- トピックセンテンスの出現場所は以下の4パターンがある。

- 文頭タイプ:パラグラフの冒頭の一文がこれから述べる内容を予告するトピックセンテンスになっている。全パラグラフの8割はこのパターン。
- 反論タイプ:パラグラフの冒頭は、一般読者にとって常識的な内容や、既に過去に終わった話、あるいは前のパラグラフで説明済みの内容などになっており、それらに反論するような形で、逆接の接続表現に続いてトピックセンテンスが現れる。
- 疑問回答タイプ:パラグラフの冒頭、または導入文の後が疑問文になっている。その疑問文がこれから述べる内容の予告になっておりトピックセンテンスになっている。
- トピックセンテンス無し:パラグラフのどこにも内容を予告するようなセンテンスが入っていない。
トピックセンテンスに応じてパラグラフの展開パターンが決まる
- トピックセンテンスの後は、以下のように決まった形で展開される

- 文頭タイプ、反論タイプ:さらに以下3つのパターンに分かれる
- トピックセンテンスに「クレーム」と呼ばれる著者の主張表現が含まれている場合、その後の展開はそのクレームに対してWhy(なぜ)かHow(いかに)かのいずれかで展開される。
- 「クレーム」は以下の4つのパターンがある。
- 主張を示す助動詞(should、must)が使われている
- 推論を示す動詞(seem, appear, look)が「現在形」で使われている
- 主観的な程度を示す形容詞(important, large, difficultなど多数)が「現在形」で使われている
- その他「~と思う」という意味を含む単語が「現在形」で使われている
- トピックセンテンスに「とある」「いろいろな」など直接答えを言っても良さそうなのに敢えてぼやかして、焦らした表現が含まれている場合、そのぼやかした表現、焦らした表現の中身についてのWhat(何)の説明が展開される。
- トピックセンテンスにクレームもぼやかした表現も入っていない場合、そのトピックセンテンスに書かれた通りのテーマで展開される。
- 疑問回答タイプ:トピックセンテンス(疑問文)に対する著者の回答が展開される。
- トピックセンテンス無し:何が展開されるかは分からない。
疑問文の後の展開例
日本語の会話の中でも、
「昨日、すごく腹が立ったんだよね。なんでだと思う?」
という疑問文が出てきたときに、当然その理由が次に続くと期待しますよね。
それが
「ところで、明日さあ~」
という話を始めたら、さすがにツッコミますよね。
「腹が立った理由を話せえよ!」
となりますね。
そう、疑問文の後ろにはその答えが来るものなのです。
リーディングも同じです。
リーディングの中に疑問文が入ることがありますが、疑問文が書かれた場合は、その後ろには必ずその答えが書かれています。
それを予想しながら読む、ということです。
「川は文明を維持するのに必要か?」
という疑問文があったら、Yesか、Noかの答えが続いているはずです。
「なぜ川は文明を維持するのに必要か?」
という疑問文があったら、その理由が続いているはずです。
「川はどのように文明を維持しているのか?」
という疑問文があったら、その手段が続いているはずです。
このように疑問文があればその疑問文に対する答えが続いていると予測しながら読んでいくと、それぞれの文章の役割がよく分かります。
クレームの後の展開例
ネイティブと会話をしたときにやたらと「why?」と聞かれることはないでしょうか?
「カナダが好きなんです」「Why?」
「この本面白いよ」「Why?」
「IELTSって難しいと思う」「Why?」
日本人としては「え?この話に理由いる?」ということでもやたらと「Why?」と聞かれます。
これはなぜかというと、それが英語ネイティブの感覚だからですね。
でもネイティブもどんな会話でも常にWhyと聞くかと言えばそうでもありません。
これはあるルールがあるんですね。
それは「主張したら理由を説明しなければならない」というルールです。
ネイティブからすると、主張した場合はその後に理由の説明が続くのが当然、という感覚なんですね。
だから相手が主張だけして、理由を説明しないと「Why?」と聞かなければ気が済まないわけです。
ここで疑問に思うのは「主張とは何か?」ということですね。
これについては見分け方がいくつかあるのですが、ここでは簡単に
「主張とは主観的なことを言うこと」
と考えておきます。
「主観的なこと」の反対は「客観的なこと」なので、「客観的でないこと」は「主観的」であり、「主張」と考えます。
例えば
「彼はいつも100点を取っている」
は「客観的な事実」なので、主張ではないです。
でも
「彼はいつも高得点を取っている」
は主観的なので主張です。
違いは分かりますかね?
「彼が100点を取っている」というのは事実であり、人によって認識が変わるものではないです。
しかし、それが「高得点」かどうかというのは人によって基準が違いますね。
ある人から見ると80点は高得点かもしれませんが、別の人から見たら80点は高得点とは言えないかもしれません。
このように人によって判断が違うことが主観的であり主張である、ということですね。
この性質をリーディングで利用します。
つまりリーディングを読んでいて「主観的な主張」が来たら、その後は「Why」を説明してくれているはずです。
「Why」が既に説明済みの場合は、どうやって?どのように?という「How」という説明が来ます。
つまり、主観的な主張が書かれた後は「Why」か「How」が来ると予測して読み進めます。
例えば
「コンピュータは現代社会には欠かせない」
という一文が書いてあったら、これは欠かせないと思う人とそうでない人がいるわけだから思いっきり主観的な意見、つまり主張ですね。
なので、その後に「Why」か「How」が来ると予想します。
すると次に
「今やコンピュータを使っていない会社はない」
という一文が書かれていたとします。
この一文は一見、最初の一文と関係ない文章のように見えますが、上記のような「予想」があれば、
「この一文は最初の一文の理由を説明したものだな」
と分かりますね。
そうするとこの
「コンピュータを使っていない会社はない」
という文章は本当は
「(それはなぜかというと)今やコンピュータを使っていない会社はない(からである)」
という文章で、括弧の部分が省略されたものだと分かります。
これを予測しながら読むんですね。
そうすると
「コンピュータは現代社会には欠かせない」
「今やコンピュータを使っていない会社はない」
という2つの文章は、ただ意味もなく並んでいるわけではなくて、「主張」と「その理由」という役割をそれぞれ果たしていることが分かります。
ステップ1:トピックセンテンスを探す
- 8割が文頭タイプになることから、まずは冒頭の一文がトピックセンテンスであることを想定して読み込む。
- その冒頭の一文が以下の5つの内容である場合は文頭タイプ以外になる可能性が高い。
- ①疑問文 ⇒ 疑問回答タイプになる
- ②「多くの人たちは~だと考えている」と書かれている ⇒ その後に多くの人たちの考えを否定した新しい考えが提示される可能性が高い(反論タイプ)
- ③掘り起こす必要性がない過去の終わった話 ⇒ その後に、後日談や現在の話が展開される可能性が高い(反論タイプ)
- ④既に前のパラグラフで説明済みの内容 ⇒ その後に、説明済みの内容を否定したり(反論タイプ)、説明済みの内容をさらに深堀する疑問文が投げかけられたり(疑問回答タイプ)、そのまま最後まで予告文が無かったり(無し)する可能性が高い
- ⑤あまりに具体的過ぎる話 ⇒ その後に、話が一般化されて抽象的な内容になることが多い(反論タイプ、疑問回答タイプ、無し)
- これら5つ以外の場合は文頭がトピックセンテンスになっている可能性が高い。
ステップ2:クレーム・ぼやかした表現の確認
- 文頭タイプと反論タイプの場合、トピックセンテンス内に「クレーム」があるかを確認する。
- 「クレーム」が含まれていない場合、さらに「ぼやかした表現」「焦らした表現」があるかを確認する。
ステップ3:パラグラフの展開内容を予測する
- ステップ1と2の結果から、トピックセンテンス以降の内容を予測する。
- トピックセンテンス無しの場合は、予測不能なのでパラグラフの内容を読み込む。
- 疑問回答タイプの場合は、その疑問に対する著者の回答が続くことを予測する。
- 文頭・反論タイプで、トピックセンテンスにクレームが含まれている場合、クレームに対するWhy(なぜ)か、How(いかに)のいずれかが続くと予測する。なお、既に理由が説明済みの場合を除き原則Whyで展開されると考える。
- 文頭・反論タイプで、トピックセンテンスにクレームが含まれておらず、「ぼやかした表現」「焦らした表現」が入っている場合は、その「ぼやかし」「焦らし」に対してWhat(何)で展開されると予測する。
- 文頭・反論タイプで、「クレーム」「ぼやかし・焦らし表現」が含まれていない場合は、そのトピックセンテンスから想定されるテーマが展開されると予測する。
ステップ4:予測が当たっているかを確認しながらパラグラフを読む
- トピックセンテンス以降のセンテンスを読みながらステップ3で予測した通りの内容になっているかを確認していく。
- 予測した内容と外れる内容が記載されていた場合、その記載内容は実は文字通りの意味ではなく、裏の意味がある、あるいは何か著者の意図があってその場所に記載されたものと考える。
裏の意味を示す例
| 表現例 | 表面的な意味 | 実際のニュアンス | 例 |
| do not ~ until X | Xまで~しない | X以降は~する | He didn’t start working until 30. (30歳以降働き始めた) |
| only X is better than Y | XだけがYよりも良い | Yは2番目に良い | Only New York City is larger than Los Angels in the USA. (LAは2番目に大きい都市) |
| the last X to do | 最後に~するX | 絶対に~でないX | She is the last person to betray him. (裏切ることはあり得ない人物) |
| nothing if not | ~でなければ何もない | とても~である | The teacher is nothing if not strict. (その先生はとても厳しい) |
| nothing more than | ~以上のものではない | 単なる~である | The story was nothng more than a rumor. (単なる噂にすぎない) |
| at worst | 最も悪ければ | 悪くてもこの程度(思ったよりまし) | The dalay will cause inconvenience at worst. (せいぜい不便を招く程度) |
パラグラフの読解速度と理解度が上がる
- トピックセンテンスを読んだ段階でのその後の展開予測の精度が高くなると、全く予測無しに受け身的に文章を読んでいくよりも読解速度が速くなり、理解の粒度も上がる。
パラグラフの概要を簡単につかめる
- 各センテンスの役割を理解しながら読めるようになると、パラグラフを一度読んだだけで全体で言いたいことが掴めるようになる。
内容理解系の問題に強くなる
- パラグラフの概要が素早く理解できるようになり、IELTSリーディングの内容理解系問題(Heading、パラグラフ選択、リストマッチング)の正解率を高めることにもつながる
⑤自力でうまくトレーニング出来ない方へ
(「4-3)IELTSリーディングの出題傾向を理解する」に移る)
