3-2)4つの基礎スキルを身につけて”聴き取れる”状態を作る

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リスニング基礎スキルとしての「単語認識力」「構文追跡力」「細部理解力」「自動解釈力」向上のためのトレーニングをまとめてみます。

① 4つの基礎スキルトレーニングの取り組み順について

4つの基礎スキル「単語認識力」「構文追跡力」「細部理解力」「自動解釈力」の取り組み順について説明します。

基礎スキルトレーニングの取り組み順序

「①単語認識力」をつけることが最優先

  • 「④自動解釈」は、「③細部理解」が出来ていることが前提、「③細部理解」は、「②構文追跡」が出来ていることが前提、「②構文追跡」は、「①単語認識」が出来ていることが前提。このため「①単語認識」が出来ていないのに②以降の取り組みを行ってもあまり効果がない。
  • 過去の経験上、「①単語認識」が出来ていない人が大半。逆に「①単語認識」が出来ることで一気にリスニングスコアが上昇する人が多い。

 

②「基礎スキル1:単語認識力」向上のためのトレーニング

耳から入ってきた音と、頭の中の単語リストをマッチングさせて単語を認識する精度とスピードを向上させるトレーニングについてまとめます。

単語認識の精度とスピードが上がるとどうなるか

単語認識力がつく前とついた後の状態を比較してみます。

 

単語が正確にクリアに聞こえるようになる

  • Before : 前後の単語の発音が混ざり合って1つの塊のように聞こえる
    After : はっきり1単語1単語認識できるようになる
  • Before : 最初の方は聞き取れていても30秒~1分ぐらい経つと脳がついていけない
    After : 長い英文を聴いても最後まで聴き取れるようになる
  • Before : ところどころ聴き取れる単語から全体の意味を推測している
    After : 推測を入れずに理解できるようになる
単語認識を阻害する2つの要因

主に以下の2つが正確で迅速な単語認識を阻害しています。

 

①発音認識のズレがあるため個別の単語が認識できない

  • 例えばcareerの発音を「キャリア」だと思っていると、実際は「クォリア」のような発音で、これを英文で聞いたときにcareerという単語と結びつかず聞き取れない
  • 例えばput it outの発音は「プットイットアウト」ではなく、前後の単語の発音がくっついて「プリラゥ」のような発音になる(これをリエゾンと言う)が、これが聴き取れない。

 

②聞き取った単語を脳内の単語リストとマッチングする検索スピードが遅い

  • 例えば音が聞えたときに、脳内の単語リストとマッチングするのに1秒かかってしまうと、その1秒の間に次の単語の音が入ってくるため、脳の処理が追い付かなくなる
「①発音認識のズレがある」場合の対策

単語の発音を正確に覚える

  • 発音認識がズレている単語については、個別に単語の発音を1つ1つ確認して覚えていくしかない。
  • でも9割の単語はスペルから想像できる通りの発音になっているので、すべての単語の発音をすべて確認する必要はない。約1割のスペルと発音がズレている単語の発音だけを覚えればよい。

 

発音しないスペルがある単語例

スペル発音記号発音(カタカナ)意味
debtdétデト借金
subtlesˈʌṭlサトゥ微妙な
disciplinedísəplɪnディサプリン規律
alignəˈlaɪnアラィン整列させる
vehiclevíːɪklヴィエコゥ乗り物
columnkˈɔləmカラム
pneumonianjuːmˈəʊóʊnjəヌモゥニア肺炎
receiptrɪˈsi:tレシート領収書
debrisdébriːデブリー破片、ごみ
aisleάɪlアィウ通路
fastenfάːsnファスン締める
mortgagemˈɔːgɪdʒモゥゲィジ担保、ローン
softenˈsɑ:fʌnソーフン柔らかくする
swordsˈɔːdソード刃物

 

スペルと違う発音をする単語例

スペル発音記号発音(カタカナ)意味
buryˈbɛ.ɹiベェリィ埋める
varyvɛəɹiヴェリィ変える
falsefɔ:lsフォールス間違い
heighthάɪtハイト高さ
provepru:vプルゥーヴ証明する

 

日本語と発音が違う単語例

スペル発音記号発音(カタカナ)日本語の発音
cabbagekˈæbɪdʒキャベッジキャベツ
croquettekrɔʊkétクルクェットコロッケ
mayonnaiseˈmeɪʌˌneɪzメヤネイズマヨネーズ
saladˈsalədセァレッドゥサラダ
yogurt jˈɔgətゥガートヨーグルト
buffetˈbuːéɪバフェイビュッフェ
studiostjúːdi`əʊテュゥディオゥスタジオ
tunneltˈʌnlタノゥトンネル
garagegˈærɑːʒラージュガレージ
Indonesiaɪn.dəˈni.zi.əインドニージャインドネシア
Israelˈɪzri:ʌlズリェルイスラエル
Malaysiamʌˈleɪʒʌマレィジャマレーシア
Ukrainejuˈkɹeɪnユークレィンウクライナ
Vietnamvìːetnˈæmビィェトナムベトナム
poundpάʊndパウンドポンド(通貨)
allergyˈælədʒiラディーアレルギー
virusˈvaɪɹəsヴァイラウイルス
vaccinevæˈksi:nヴァクスィーンワクチン
chaoskéɪɔsケイオスカオス
energyénədʒiナジーエネルギー
oasisəʊéɪsɪsエイシスオアシス

 

リエゾンの感覚を身につける

  • リエゾンは自分でも発音できるようになると聴き取りやすくなる
  • リエゾンのルールを覚えたうえで、実際に自分でもリエゾンの発音を練習していく

 

リエゾンのルール

①連結:前後の単語が独立して発音されず繋がって発音される

can I:「キャナイ」(n+aの連結で「ナ」)
like it:「ライキット」(k+iの連結で「キ」)
both of:「ボースォブ」(th+oの連結で「スォ」)

②脱落:前後の単語の発音の関係から発音が省略される

sit down:「シッダウン」(tの脱落)
last day:「ラスデイ」(tの脱落)
top level:「タッレヴェル」(pの脱落)

③同化:前後の単語の発音がつながって別の発音に変化する

let you:「レッチュー」(t+youで同化「チュー」)
did you:「ディジュー」(d+youで同化「ジュ―」)

①~③の組み合わせ

get up:「ゲラップ」(tの脱落、t+uの連結で「ラ」)

「②脳内検索スピードが遅い」場合の対策

検索スピードを上げるにはシャドーイングが有効

  • シャドーイングは聞き取れた単語を0.5秒以内に発音するトレーニング
  • シャドーイングを継続することで脳内のマッチング処理が0.5秒以内で行われるようになる。

 

なぜシャドーイングがマッチング速度向上に有効か?

  • 人間は通常、認識できた単語しか発音できない。
  • 0.5秒以内に発音する、というルールを強制的に課すことで、脳内では、頑張って0.5秒以内に単語を認識しようとする力が働くようになる。
  • これを繰り返すことで、脳内で英単語の音を0.5秒以内に単語リストにマッチングさせる回路が鍛えられ、単語認識のスピードが速くなる

 

シャドーイングをやったことがあるけど効果が出なかったという方へ

  • シャドーイングはただ形だけ実施しても効果がでない。
  • 正しく実施することが重要。実施方法が間違っていると、効果がほとんどないばかりか、時間と労力を使うことになり、むしろマイナスの影響が大きくなる。
  • その代わり正しく実施した場合は、1週間ほどで劇的な効果が感じられるようになる。

 

シャドーイングの正しい実施方法とは

正しい実施のために以下3つのポイントがある。

①シャドーイングは100%の精度で実施する

  • 100%とは、自分がシャドーイングをしながらしゃべった声を録音して、元の音源と同時に流した場合、完全一致するレベル
  • 90%の精度で終わった場合、聴き取れていない残り10%を放置したことになり、成長しない。残り10%を完璧に実施することで脳の成長が生まれる。

②短い音源を使って行う

  • シャドーイングで精度を100%にするには長い時間がかかる。1分間の音源でも慣れないうちは100%にするのに数時間かかってしまう。あまりに長く時間をかけ過ぎると効果よりも投入労力が大きくなってしまうので効率が悪い。
  • 最初は30秒(2-3センテンス)の音源で100%のシャドーイングを行う。1時間以内で100%が実践できるようになったら徐々に音源の長さを伸ばしていく。
  • 最終的には1分間の音源を1時間程度で100%にできるようになればOK

③7日間以上連続で行う

  • 7日間ほど連続で100%の精度のシャドーイングを行うと効果を感じられるようになる
  • 途中で実施しない日があると効果が感じられないので、実施するなら7日間以上連続で行うこと
  • ただし、7日間連続で行ってもその効果は1-2日しか継続しないため、効果が薄れたらまた7日間連続で実施する。2回目以降は徐々に効果が長続きするようになるが、いずれ消えてしまうため、消えたらまた実施することを繰り返す。

 

100%シャドーイングの具体的な実施手順(1日分)

ステップ0:音源とスクリプトの準備

  • シャドーイング用の音源は以下の条件が満たされていればどのような音源でも構わない
    • ①崩れていないフォーマルな英語
    • ②スクリプトがあること
    • ③ナチュラルなスピード
  • 何もなければ公式問題集の音源がこの条件をすべて満たしているので最適。
  • この音源を1分以内の長さ(慣れないうちは30秒程度)に区切る。1分以上の音源を使うとシャドーイングの効果が落ちる。公式問題集の音源はどれをとっても1分以上あるので、音声を分割するソフトなどを使って、必ず30秒~1分で切り取る。
  • 該当箇所のスクリプトを準備する。

 

ステップ1:スクリプトの内容完全理解

  • スクリプトを見て、全文を理解する。
  • シャドーイングの効果は、既に頭の中に入っている単語と、聞こえる音とをつなぐ脳回路を鍛えることなので、知らない単語をどれだけシャドーイングしても効果はない。分からない単語や構文はあらかじめ調べて理解する。

 

ステップ2:シャドーイング(スクリプト無し)

  • スクリプトを見ずに、音源だけを聞いてシャドーイングしてみる。これを3回ほど繰り返す。この段階では完璧でなくても大丈夫。
  • このプロセスの目的は、一旦単語を見ずに、単純にどう聞こえるかを確認すること。
  • 単語によっては自分が思っている単語の発音と実際の発音が違うことがあるが、スクリプトを見ながら音を聞くと、自分がこういう発音のはずだと思い込んでいる頭で聞いてしまうので、先入観なく聞こえた音が、どういう音だったのか、聞こえたままを発音するようにする

 

ステップ3:シャドーイング(スクリプト有り)

  • スクリプトを見ながらシャドーイングする。これも3回繰り返す。
  • このプロセスの目的はステップ2の段階で「何の単語か分からないが、ひとまず耳にはこう聞えた」という単語が、どの単語の発音だったのかを確認すること。スクリプトを見て初めて「ああ、この単語の発音だったのか」と認識した箇所は、自分が思っている発音と聞こえてくる発音とのギャップがあるということ。
  • この箇所については、聞こえてくる音が正しい発音なので、発音の認識を改めるようにする。いわば発音の辞書を作っていく作業

 

ステップ4:ワンセンテンスずつの発音練習(オーバーラッピングまたは暗唱)

  • ワンセンテンスずつ発音をする練習を行う。
  • 100%シャドーイングがなかなか完成しない理由は2つ。①100%聴き取れていない、②聴き取れているが口がついていかない、このうちの②を解消するのがこのステップの目的
  • 英語と日本語では使う口の筋肉が異なるため、筋肉を鍛えないとなかなかナチュラルスピードで英語が発音出来ない。いきなり全文詰まらずにしゃべるのは難しいのでワンセンスずつ分解して行う。
  • 実施方法として、最も効果的なのがワンセンテンスずつのオーバーラッピング。オーバーラッピングとは、スクリプトを見ながらで良いので、その代わり音源と同時に発音していく方法。音源と自分の声が重なるので、100%の精度で出来ているかがチェックしやすい。
  • ただ、ワンセンテンスずつ区切った音源を準備する必要があるので、それが面倒であれば、ワンセンテンスずつの暗唱でもOK。暗唱は一旦イヤホンを外して、音源を聞かずに、声を出しながら覚えていく作業。
  • このいずれかの作業を行いながら、ワンセンテンス詰まらずに発音できるようにしていく。

 

ステップ5:全スクリプトの発音練習(音読)

  • 全スクリプトを一度も詰まらずに発音していく練習。
  • ステップ4でワンセンテンスずつは発音できるようになっても、全センテンスだと、必ずどこかで詰まったり、音が出て来なかったりするので、全センテンス通じて発音できるようになるのがこのステップの目的。
  • シャドーイングやオーバーラッピングで行っても良いが、最初は音を聞かずに自分のペースで読める音読の形が良い。
  • 3回ほど実施する。1回目は一度も詰まらないようなゆっくりのスピードで全文音読をしていき、2回目は通常の音源通りのスピード、3回目は音源よりもさらに早いスピードで読めるように早口言葉で音読する。早口言葉レベルでしゃべることで、この後のシャドーイングのスピードについていきやすくなる。

 

ステップ6:シャドーイング(スクリプト有り)

  • 音読で一度も詰まらずに最後まで発音できるようになったら、シャドーイングに戻る。改めて音源のスピードで発音していく。最初はスクリプトを見ながらでよい。
  • 発音練習を挟んだことで、ステップ2や3のときよりも、精度は高くなっているはず。

 

ステップ7:100%シャドーイング(スクリプト無し)

  • スクリプトを見ないでシャドーイングする。これは100%の精度になるまで何回でも行う。
  • 30秒の音源でも慣れないうちは数時間かかるが、慣れてくると1分間の音源を使って、手順1~7を1時間ちょっとぐらいで終えられるようになる。

 

このステップ1~7を毎日違う音源を使って最低7日間連続して実施していきます。

100%シャドーイングを忠実に実施すると何が起こるか

劇的な効果が感じられる

  • 早い方ならば4-5日目から音源の聞え方に大きな変化が現れる。効果としてよく聞かれるのが以下の2つ。
    • ①音源がゆっくり聞こえる
    • ②1単語1単語がはっきり聞こえる
  • 変化として「何となく聞え方が変わったかな・・」というレベルではなく、「え!何コレ!」「全然違う!感動・・・」というレベルでの劇的な変化が感じられる。
  • この変化の理由は、脳内の単語リスト検索スピードがアップしたから。
  • 例えば、立ち止まっている人間のすぐ横を新幹線が通過したとき、速すぎてよく見えないが、新幹線と同じ方向に車や電車で移動している人間から見た新幹線はゆっくりに見える。
  • これと同じように、脳内の処理スピードが遅かったときは、とても速く不鮮明にしか聞こえなかった英語が、脳内処理スピードがアップした結果、ゆっくりに聞こえて、一単語一単語がクリアに聞こえる状態になる。
  • こういう変化を感じた場合、シャドーイングが正しく行われていたことが分かる。もし、こういう変化を感じられなかった場合は、シャドーイングの実施方法に何らかの問題があったと考えた方が良い。

 

効果の継続時間は短い

  • こういった変化を感じられた場合も、残念ながらその効果は長くは続かない。
  • 脳は鍛えられている間は、どんどん回路が発達していくが、鍛えるのをやめた瞬間から退化が始まる。
  • 初めてシャドーイングの訓練を行った場合、1週間のトレーニングに対して、効果はせいぜい2日で消える。
  • 効果が消えたら再び1週間のトレーニングを実施すると効果が3-4日続くようになる。しかし、やがて消えるので、その後、3回目のトレーニングを実施すると、効果は5-6日継続するようになる。
  • トレーニングを継続すればするほど効果が長続きするようになるので、その効果が出ているうちに受験をするのが効果的。
シャドーイングに関してよく頂くご質問

Q.「時間がかかり過ぎる場合どうすればよいか」

A. 1分間の音源を100%の精度にするのに3時間以上かかる場合は、音源を半分の30秒にして実施しましょう。

単純計算ですが、30秒にすれば完成までの時間も半分になるはずです。

慣れるまでは短い音源でシャドーイングを行うようにして、慣れてくれば1分間の音源に戻します。

 

Q.「1日で100%にならない場合、2日に分けて行っても良いか」

A. 理想は1日で1つの音源を100%に持っていくことです。もし時間がかかり過ぎるようであれば、まずは音源を短くすることから始めて下さい。

30秒(具体的には2-3センテンス程度)の音源であっても1日で100%にならない場合は、2日に分けても良いです。

しかし、あくまで1日で仕上げるのが理想なので、頑張ってなるべく1日で終えられるようにしましょう。

 

Q.「実施してみたが、効果が感じられない」

A. 1週間行っても効果が感じられない場合は、以下の3つのどれかが原因の場合が多いです。

①1分間の音源を使っていない

5分ぐらいの長い音源を使って実施した場合、100%になるまで時間がかかり過ぎ、精度も95%ぐらいで妥協してしまうことが多くなり、結果として効果が出ないことになります。

②手順をどこかアレンジしている

7つの手順のどこかを省略したり、アレンジしたりしていると、そのステップで目的にしていることが達成できずに効果が出ないことがあります。

③100%の精度の判定が甘い

100%にせずに95%ぐらいで妥協してしまうと、効果が薄いです。
「シャドーイングの効果が出ない」と仰っている方たちの大半は、これに該当します。

本人は100%出来たつもりですが、実際に録音した声を確認すると、スクリプトの80-90%ぐらいしか再現できていなかったりします。

長い単語の一部の音が抜けていたり、複数形のsが抜けていたり、冠詞のaが発音できていなかったり、リエゾンが発音できていなかったりします。

まずは自分の声を録音して、それを聞いてみて下さい。
録音した自分の声を聞くと、精度が100%に達していない箇所が多数あることに気づけます。

 

Q.「言われた通りにやっているが効果が感じられない」

A. 稀に100%のシャドーイングを行えていても効果が出ない場合があります。シャドーイングを行うと普通の人は、頭の中で音と辞書を結びつける回路が働くのですが、その回路を働かせずに英語を「音」として聞き取ってしまい、その「音」を忠実に再現できてしまう人です。

私の経験上、絶対音感の持ち主などは、これに該当することがあります。

こういった人たちにもう1つ上のレベルの方法があります。

それがスクリプトを見ないオーバーラッピングです。

シャドーイングは、聞こえた音源を0.5秒遅れぐらいで発音する方法ですが、オーバーラッピングはその時間差を作らず、完全に音源とシンクロさせて声を出す方法です。

これはもちろんスクリプトを暗唱していることが前提になる方法ですが、これを行うとより音源と一致しているかが明確に分かるようになります。

またそのときに、「音」を意識するのではなく、頭の中で単語を意識しながら発音するようにします。

そうすると音と辞書とをつなげる回路が働くようになります。

 

③「基礎スキル2:構文追跡力」向上のためのトレーニング

聴き取れた単語から構文を理解する精度とスピードを向上させるトレーニングについてまとめます。

構文追跡の精度が上がるとどうなるか

構文追跡力がつく前とついた後の聞え方の違いです。

 

英語が構文構造として聴き取れるようになる

  • Before : 単語は分かるが構文構造が意識できない
    After : 音源を一度聴いたら構文構造が認識できるようになる
構文追跡を阻害する要因

主に以下の2つが正確な構文追跡を阻害しています。

①単語の羅列を意味のあるまとまり(塊)で捉える力が弱い

  • 前置詞+名詞を1つの修飾語として塊で捉えることができずに、全単語を同じように聴き取ろうとしてしまう

 

②修飾語やパラレル、従属節が入ったときに主語と述語を見失う

  • 主語と述語の間に修飾語が入ったり、主語の前に長い従属節が入ったり、述語がandでつながれた2つのパラレルだったときに、文章の骨格が見えなくなってしまう
「①単語の羅列を意味のあるまとまり(塊)で捉える力が弱い」場合の対策

スラッシュリスニングで単語を塊で捉える

  • 英語を塊で捉える意識が弱い場合は、実際にスクリプト上で、塊ごとにスラッシュを入れ、そのスラッシュの位置を意識しながらの集中リスニング(スラッシュリスニング)あるいはオーバーラッピングを行うことにより、塊で捉える感覚を磨くことが出来る。
  • 最初はスクリプトを見ながら聴覚だけでなく、視覚の助けを借りて、意識を変えていく。
  • 慣れてきたらスクリプトから目を離し、聴覚だけでスラッシュ(塊)を意識しながら聞くようにしていく。
  • スクリプトを見ながらでも感覚が掴めない場合は、スラッシュが入るたびに手を叩くなど、体の動作も同時に入れていくと、より強く塊を意識することが可能になる。

 

スラッシュを入れた英文例

This means / that pedestrians / waiting on the pavement / to cross the railway line / don’t have to breathe / in car fumes.

 

スラッシュを入れる主な位置

  • 文頭の副詞の後
  • 節と節をつなぐ接続詞の前
  • 従属節の前後 : 接続詞+SV、関係詞節、分詞構文
  • 形容詞句・副詞句の前後 : 前置詞+名詞、不定詞(+目的語)、名詞の後ろの分詞/形容詞
「②修飾語やパラレル、従属節が入ったときに主語と述語を見失う」場合の対策

集中リスニング/オーバーラッピングで構文追跡力を鍛える

  • 英語の構文構造を捉える意識が弱い場合は、スクリプト上に、構文構造を示す書き込みを入れて、その構造を意識しながらの集中リスニングあるいはオーバーラッピングを実施する。
  • 最初はスクリプトを見ながら聴覚だけでなく、視覚の助けを借りて、意識を変えていく。
  • 慣れてきたらスクリプトから目を離し、聴覚だけで構文構造を意識しながら聞くようにしていく。

 

構文構造を書き込んだ英文例

This means 【that pedestrians (waiting on the pavement / to cross the railway line) don’t have to breathe (in car fumes)】.

 

構文構造の書き込み例

  • 主節の主語と述語には下線を引く
  • 修飾語(句)の塊は小括弧( )で囲む
  • 従属節の塊は大括弧【 】で囲む
  • パラレルの関係になっているものは⇔で結ぶ
構文追跡のためのトレーニングを行うとどうなるか

構文を捉えられる確率が上がる

  • 1週間ほど続けると2つの効果が現れる。
    • ①ある程度先を予測しながら余裕をもって次の単語を待てる状態になる
    • ②長い英文や複雑な構文を正確に理解できるようになる
  • シャドーイングほど自覚しやすい効果ではないが、塊や構文で捉えられるので、誤った理解をする確率が減る。
  • IELTSリスニングセクションで言えば、Part2やPart3での正解率が上がりやすくなる。
スラッシュリスニングやオーバーラッピングの注意点

短い音源を使う

  • シャドーイングと同様に、1日1つの音源について完全にスラッシュリスニングやオーバーラッピングを行えるようにしていく。
  • このため、1日の音源は短い音源を使い、シャドーイングと同様に1分以下の短い音源を使う。

 

スクリプトの内容は最初に完全理解しておく

  • シャドーイングと同様、実際にリスニングを行う前に、スクリプトの内容は完全理解する
  • このタイミングで、スクリプトにスラッシュや構文構造の書き込みを行う。

 

100%の精度を目指す

  • スラッシュリスニングやオーバーラッピングは100%の精度を目指す。
  • 全てのスラッシュを明確に意識し、塊で捉えることが出来たか、構文構造を意識しながら100%の精度でオーバーラッピングが実施できたかを厳しめにチェックする。

 

7日間以上連続で行う

  • これらのトレーニングを7日間以上連続で行う。
  • シャドーイングと同様、直後は効果が感じられるが、やがて薄れていくので、再び7日間以上のトレーニングを実施して、その感覚を定着させていく。

 

④「基礎スキル3:細部理解力」向上のためのトレーニング

構文の骨格以外の部分で、細かいニュアンスを聴き取る細部理解のためのトレーニングについてまとめます。

細部理解の精度が上がるとどうなるか

細部理解力がつく前とついた後の聞え方の違いです。

 

音源を聞いて必要な情報と必要でない情報の区分が出来るようになる

  • Before : 細かい情報を聞き逃し(あるいは聞き流し)大まかには理解できるが正確な理解ではない
    ⇒After : 前置詞や接続詞、時制、助動詞、単複など細部(上記の赤文字部分)を正確に聴き取り、正確なニュアンスが掴める
  • Before : 耳に入ってくる様々な情報すべてが気になり、本当に必要な情報が見極められない
    ⇒After : 正確なニュアンスを掴んだうえで、必要な情報(黄色のマーカー箇所)と必要ない情報(グレーのマーカー箇所)を判別することができる
細部理解を阻害する要因

主に以下の2つが細部理解を阻害しています。

 

①細部に対する聴き取り意識が弱い

  • 日常会話などでは大まかな意味が分かれば支障ないことが多いため、細かいところを気にせず、聞き流すクセがついてしまっている

 

②早く弱くしか発音されない細部が聞き取れない

  • 時制、助動詞、単複、前置詞などは発音が弱いため聴き取れていない
「①細部に対する聴き取り意識が弱い」場合の対策

集中リスニング/オーバーラッピングで細部に対する意識を強化する

  • 細部を聴き取る意識が弱い場合は、実際にスクリプト上で、気にしなければならない細部にマーカーを入れ、その細部を意識しながらの集中リスニングあるいはオーバーラッピングを実施する。
  • 最初はスクリプトを見ながら聴覚だけでなく、視覚の助けを借りて、意識を変えていく。
  • 慣れてきたらスクリプトから目を離し、聴覚だけで細部を意識しながら聞くようにしていく。

 

細部にマーカーを入れた英文例

Unlike many cities, where buses are quite common, the main options for getting around are the subway and taxis, as buses tend to be infrequent. Though the subway is the most convenient option, it’s been on strike this week, so you won’t be able to use it tomorrow.

時制注意 助動詞注意 前置詞・接続詞注意 単複注意

 

細部のイメージを持ちながら聴く

  • 細部は単に聴き取るだけでなく、「過去形ならば過去のイメージ」「可能性を示す助動詞ならば可能性を示すイメージ」を実際に想像しながら聴くことで、より細部に対する意識が高まる。

「②早く弱くしか発音されない細部が聞き取れない」場合の対策

スポットリスニングで細部聴き取り力を強化する

  • 細部が聴き取れていない場合、特に発音が弱い箇所だけを何度も集中的に聴き取るスポットリスニングを実施する。
  • 何度も集中的に聴くことで、聞こえないと思っていた細部もしっかりと聞き取れるようになる。
細部理解のためのトレーニングを行うとどうなるか

引っ掛け問題に引っ掛からなくなる

  • 1週間ほど続けると2つの効果が現れる。
    • ①経験から来る勘に頼らずに、土地勘がないテーマでも理解しやすくなる
    • ②難易度が高い選択肢問題の引っ掛け問題や地図問題で不正解を回避できるようになる
  • 細部を正確に聴き取ることで、勘に頼った回答ではなく、きっちりと根拠を持った回答ができるようになる。
  • 正確な理解により、メリハリの利いた聞き方ができるため、引っ掛け問題に引っ掛かることが減り、正解率が高まる。

 

⑤「基礎スキル4:自動解釈力」向上のためのトレーニング

単語認識、構文追跡、細部理解といった処理を無意識に行い、英文を文字情報よりも映像や情報として聴き取る自動解釈のためのトレーニングについてまとめます。

自動解釈の精度が上がるとどうなるか

自動解釈力がつく前とついた後の聞え方の違いです。

 

長い英語を聴いても疲れにくく、内容も忘れにくくなる

  • Before : 単語認識、構文追跡、細部理解を常に意識して行っている
    ⇒After : これらの処理を無意識にできるので意味の解釈に集中できるし、長い英文を聴いても疲れない
  • Before : 文字情報として理解しているので、細かい間違いに気づきにくく、記憶も残りにくい
    ⇒After : イメージや映像として理解できるので、理解も早く忘れにくい
自動解釈を阻害する要因

主に以下の2つが自動解釈を阻害しています。

 

①単語認識、構文追跡、細部理解のトレーニングの分量が少ない

  • 人間は経験した回数が少ない行動は意識しなければできないが、何度も繰り返し同じ行動を行うことでやがて無意識でも出来るようになる

 

②単語や構文を「文字情報」として捉えており、映像化ができていない

  • 聴き取れた英文を文字ではなく、イメージ・映像で捉えると、解釈までの時間が短縮でき、聞き取れた内容が記憶に残りやすくなる
「①単語認識、構文追跡、細部理解のトレーニングの分量が少ない」場合の対策

情報収集の目的意識をもって意味理解に集中する

  • これまで説明してきた各種トレーニングを繰り返し実施することで、「単語認識」「構文追跡」「細部理解」を無意識に行えるようにしていく。
  • それに加えて、音源で説明されている情報のうち、何か特定の情報だけを聴き取る、という目的を設定した上で、その情報だけを聴き取るような集中リスニングを行うと、意識を単語認識や構文追跡よりも、意味理解に集中させることが出来る。
「②単語や構文を「文字情報」として捉えており、映像化ができていない」場合の対策

英文を脳内で映像としてイメージする

  • 英文を聴きながら、説明されている景色の色や大きさ、人物の表情や行動、物体の形や動きなどを脳内で映像としてイメージしながら聴く集中リスニングのトレーニングを行う。

補助的に関連する映像や画像を探してきて、それらを見ながら英文を聴くことも有効です。

自動解釈のためのトレーニングを行うとどうなるか

先読みが間に合わない場合でも正解率が確保できる

  • 数週間ほど続けると解釈の速度が上がり、情報が記憶に残りやすくなる
  • 意味理解に集中し、かつ脳内で映像化しながら聴くことで解釈の正確性、速度、記憶への定着度などが改善し、設問先読みが間に合わなかった場合も、記憶に残った内容を頼りに回答することが出来るようになる

 

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