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リスニング・リーディングで必要とされるインプット系文法について学習方法と重要なポイントをまとめます。
目次
①インプット系文法の重要性
文法の学習をする前に「なぜ文法を理解しなければならないか」「文法が分かるとどんないいことがあるか」について理解しておきましょう。
インプット系文法とは
- インプット系文法とは英文を読んだり(リーディング)、聞いたり(リスニング)したときに即座に正確に構文を理解するための知識。
- 逆に英文を書いたり(ライティング)、しゃべったり(スピーキング)するときに構文を即座に正確に組み立てられる知識のことをアウトプット系文法。
インプット系文法が弱いと起こる課題
- リーディングやリスニングで、使われているすべての単語が分かっているのに意味が理解できないことがある
- リーディングで返り読み、二度読みをしないと意味が分からない英文が多く、結果時間内に最後まで読めなくなる
- リスニングで選択肢問題が苦手
インプット系文法を極めた場合の効果
- リーディングで出てくる英文は100%構文分解ができる
- それゆえ、返り読み、二度読みの確率が減り、読解スピードや読解の正確性が上がる
- リスニングもそれに伴い、英語の語順で理解できる確率が上がり、意味が理解できることが多くなる
②インプット系文法の学習方法
リスニング、リーディングなどのインプット系文法の学習方法について書いてみます。
知っている構文パターンを増やせ
- 人間は自分が認識できている構文は瞬間的に理解できるけど、認識できないものは即座には理解できない。
- 「認識できる構文パターン」を増やしていくのが、インプット系文法の学習方針。
例えば
- I read the book.
という文章は、誰もが即座に意味を理解できるでしょう。
これは、「主語+述語+目的語」という単純な構文は、これまで何度も何度も見聞きしてきて、構文を意識すらしなくても意味が理解できる状態になっているからですね。
ではこちらはどうでしょう?
- I read the book that I bought yesterday.
これも、「関係代名詞のthat」という構文に慣れている方はいちいち構文を意識しなくても理解できますね。
でも関係代名詞という構文に慣れていない方は、一瞬戸惑います。
さらに次はどうでしょう?
- I read the book that I bought yesterday, studying at the library.
これも、「分詞構文」という構文に慣れている方は即座に理解できるでしょう。
でも分詞構文が分からない人にとっては何となく意味は分かるけど確信は持てない文章でしょう。
次はどうでしょう?
- I read the book that I bought yesterday, studying at the library, with my friend interrupting me.
だいぶ複雑になりましたかね。
このあたりになると理解できない人も増えてきます。
最後は「付帯状況」の構文でした。
分かる人はスッと理解できる構文だと思います。
ステップ1.苦手な構文を集める
- 公式問題集のリスニングスクリプトと、リーディングセクションを読んでいって、一度で意味が理解できない構文をどんどんチェックしていく。
- このときに「単語が分からなくて理解できない文章」と「単語は分かるのに理解できない文章」は明確に区分する。
- 前者については単語を調べて、その上でもなお分からない英文であれば「単語は分かるのに理解できない文章」として判別する。
- 理解できる、出来ない、については厳しめに判定する。ここの判定が甘いと文法の学習効果が落ちる。特に「何となく言いたいことは分かる」という構文は要注意。
- 主語、述語、修飾関係などがきっちりと明確に説明できない構文は「何となく言いたいことは分かる」と考えても実は理解できていない構文である可能性が高いので、「理解できない文章」として区分する。
- チェックした構文は、あとから分類作業をするので、一旦エクセルのような表記式のソフトに打ち込んでおくと便利。
ステップ2.構文を理解する
- ステップ1.で集めた英文の構文構造を正確に確認していく。
- この確認作業ではChatGPTを使うと良い。
- 英文を打ち込んで、「構文を解説して」「~の部分がよく分からないから構造を解説して」とリクエストすればほぼ正しく解説してる。
ステップ3.分からない構文を分類する
- これらの構文がなぜ理解できなかったのかを分類していく。
- 分類はこの後のセクション「④構文を捉えるための重要文法項目」を参考に。
ステップ4.一問一答形式にまとめる
- ステップ3.で分類した英文を一問一答形式にまとめていく。
- これはライティングなどでも有効な方法だが、人間は何かを覚えるのに最も有効な手段は「思い出そうとする」行為を何度も繰り返すこと。
- そのため、集めて分類した英文を、何度も何度も見直して、答えを思い出そうとする機会を人工的に作る。
- そのためにはノートが有効。ノートの左側に英文、右側に日本語訳や構文上のポイントをまとめていく。これを分類したタイプごとにまとめても良いし、ランダムで記載しても良い。
ステップ5.一度で理解できるまで繰り返す
- ステップ4.で作ったノートを見て、右側の日本語訳や構文上のポイントを手で隠して、左側の英文だけを見て、日本語訳や構文ルールを思い出すトレーニングをしていく。
- ノート形式にしておくことで、移動時間でも、寝る前の布団の中でもちょっとした空き時間に繰り返し学習することが出来る。
- そして新しい英文に触れたときに一度で意味が取れない構文に出会ったら、どんどんそのノートに追記していく。
- もうすべての構文を覚えた、構文を意識しなくても意味が理解できるようになった、と思えたらそのノートは卒業。その頃にはリスニング、リーディングのスコアもかなり上がっているはず。
③6.0-7.0獲得に求められる文法スキル
6.0-7.0獲得に求められるスキルマップの「IELTS基礎スキルマップ詳細編」でお伝えしたスキルマップに沿って、どのようなスキルを身につけるべきかを説明してみます。
スコア6.0から7.0の水準に向けて身につけるべきスキルがあります。
6.0レベルを目指すための重要文法項目
- 「単語から推測ではなく構文で読める」
- 「主語・述語が見分けられる」
- 構文を無視して単語から推測で読むのではなく、あくまで構文に沿って解釈すること、そしてその構文を理解するための第一歩として、文章の骨格である「主語と述語」を見分けられるスキルを身につける必要がある。
6.5レベルを目指すための重要文法項目
- 「パラレル」「That節」「It is構文」「同格・挿入」「関係詞」の見極め
- これらはIELTSリーディングレベルでは必須の項目で、それぞれ適切に見極めていく必要がある。
7.0レベルを目指すための重要文法項目
- 「分詞構文」「付帯状況」「独立分詞構文」の見極め
- これらは頻度は低いものの、それゆえにいつでも取り出せるレベルで理解しておかなければ本番の環境では見分けられなかったり、無理な解釈をしてしまうことにつながってしまう。
IELTS基礎スキルマップ詳細編では、これらのスキルを順にマスターするロードマップをお伝えしております。

まずは文法用語のおさらいです。
8品詞の違いを理解しましょう。
| 品詞名 | 説明 | 例 |
| 名詞 | 人や物の名前を表す語 | dog, pen, society |
| 代名詞 | 名詞の代わりに用いられる語 | it, this, they |
| 動詞 | 動作や状態を説明する語 | make, study, have |
| 形容詞 | 名詞を修飾して意味を追加する語 | high, beautiful |
| 副詞 | 動詞・形容詞・副詞・文全体を修飾して意味を追加する語 | economically, mistakenly, hopefully |
| 前置詞 | 名詞の前につけて方向や位置、時間などの意味を追加する語 | at, in, for, over |
| 接続詞 | 単語と単語、文と文をつなぐ語 | and, but, because, when |
| 冠詞 | 名詞の前について、その特定性や数量を説明する語 | a, an, the |
文章を構成する5つの要素を理解しましょう。
| 構成要素 | 説明 | 品詞 | 例 |
| 主語 | 文の動作や状態の主体となる語。通常、文の最初に置かれる名詞または名詞句。日本語では「~は」「~が」にあたる。 | 名詞 | She plays tennis in the park.のSheの部分 |
| 述語 | 主語の動作や状態を表す語。主語の後に出てくる動詞。日本語では「~する(動作)」「~である(状態)」にあたる。 | 動詞 | She plays tennis in the park.のplaysの部分 He is a friend of my class.のisの部分 |
| 目的語 | 動作の目的となる語。動作を示す述語の後に出てくる名詞または名詞句。日本語では「~を」「~に」にあたる。 | 名詞 | She plays tennis in the park.のtennisの部分 |
| 補語 | 主語や目的語の性質や状態を補足説明する語。状態を示す述語の後に出てくる名詞・名詞句または形容詞。 | 名詞 形容詞 | He is a friend of my class.のa friendの部分 |
| 修飾語 | 主語、述語、目的語、補語を詳しく説明する語。形容詞または副詞。 | 形容詞 副詞 | She plays tennis in the park.のin the parkの部分 He is a friend of my class.のof my classの部分 |
2種類ある動詞を理解しましょう。
| 動詞の種類 | 説明 | 例 |
| 自動詞 | 目的語を必要としない動詞。日本語では「(主語が)~する」という意味。 | rise, fall, happen, occur, dieなど |
| 他動詞 | 目的語を必要とする動詞。日本語では「(目的語を)~する・させる」という意味。 | raise, reduce, bring, have, useなど |
※同じ動詞でも、自動詞と他動詞の両方の用法があるものに注意
Population increased.「人口が増えた」(自動詞)
Economic growth increased population.「経済成長が人口を増やした」(他動詞)
The car moved to the town.「その車は町に移動した」(自動詞)
I moved the car.「私はその車を移動させた」(他動詞)
5つある文型を理解しましょう。
| 文型 | 説明 | 例 |
| 第1文型 | 「主語+自動詞」(S+V)の形 | Dogs swim.「犬は泳ぐ」 |
| 第2文型 | 「主語+動詞(主にbe動詞)+補語」(S+V+C)の形(主語=補語の関係) | He is a tall guy.「彼は背が高い男です」 |
| 第3文型 | 「主語+他動詞+目的語」(S+V+O)の形 | People need water.「人は水を必要としている」 |
| 第4文型 | 「主語+他動詞+目的語1+目的語2」(S+V+O1+O2)の形(teach, give, show, tell, sendなど) | This experience taught me the importance of preparation.「その経験は私に準備の必要性を教えてくれた」 |
| 第5文型 | 「主語+他動詞+目的語+補語」(S+V+O+C)の形(keep, see, call, think, makeなど) | Exercise keeps our body healthy.「運動は私たちの体を健康に保ってくれる」 |
節と句を理解しましょう。
| 区分 | 説明 | 例 |
| 節 | 2語以上のまとまりで、主語+述語(S+V)の形を含むもの | 「I play basketball」は主語+述語の形なので節 |
| 句 | 2語以上のまとまりで、主語+述語(S+V)の形を含まないもの | 「playing basketball」は主語+述語の形ではないので句 |
2種類の節を区分しましょう。
| 区分 | 説明 | 例 | |
| 主節 | 文章の中心となる節で、独立して意味が成立する節 | ||
| 従属節 | 付け加えの情報を表したり、文章全体の一部となる節(主節に依存している) | ||
| 名詞節 | 従属節全体が名詞の役割を果たす つまり従属節が主節の主語または目的語または補語になっている | I do not know where she lives. の主節は「I do not know」、従属節は「where she lives」でknowの目的語になっている | |
| 形容詞節 | 従属節全体が形容詞の役割を果たす つまり従属節が名詞の修飾語になっている | He is a man who came from Japan. の主節は「He is a man」、従属節は「who came from Japan」で名詞a manを修飾している | |
| 副詞節 | 従属節全体が副詞の役割を果たす つまり従属節が動詞の修飾語になっている | I like him because he is kind. の主節は「I like him」、従属節は「because he is kind」で動詞likeを修飾している |
④6.0レベルを目指すための重要文法項目
単語で読むのが初心者、構文で読めると脱初心者
- 初心者に見られがちなのが、英語を構文ではなく、単語で読んでいるケース。つまり、読み取れた単語の意味を勝手に組み合わせて適当に意味を解釈している。
- しかし、この読み方では正確な解釈ができない。
- あくまで構文を理解して、その構文の解釈の上で、意味を解釈していかなければならない。
日本語は助詞、英語は場所
- 日本語は「助詞」というものがあり、それがあることで主語か目的語かを区分できる。
- 「~は」「~が」という助詞がついたものが「主語」で、「~を」という助詞がついたものが「目的語」になる。
- 語順は関係ない。「私は本を読む」「本を読む、私は」「私は読む、本を」どの語順でも基本的には同じ意味になる。
- しかし、英語は「助詞」というものがない。
- その代わり語順で主語なのか目的語なのかが変わる。述語の前に置かれた名詞が主語、述語の後ろに置かれた名詞が目的語。
例えば
- I read a book.
であれば、Iが主語、a bookが目的語になるわけです。
もし
- A book reads me.
とあれば、どんなに意味がおかしくてもA bookが主語、meは目的語と判断しなければなりません。
日本語の場合、主語(A book)には助詞「~は」「~が」をつけて、目的語(me)には助詞「~を」をつけるので、敢えてこの英文を日本語にするなら
「本は私を読む」
でなくてはならないのです。
これをA book=本、me=私、という単語だけから適当に意味を作り上げて、
「私は本を読む」
と解釈してはならないのです。
このように自分にとって都合が良い解釈をしていると、正しい解釈が出来なくなってしまいます。
必ず構文優先で解釈する
- 英語は語順に厳格なので、以下のように徹底した構文優先の読解を行う。
- 語順と品詞を確認
⇒ 語順と品詞に従って主語・述語・補語・目的語・修飾語を区分する(構文分解)
⇒ 区分した構成要素に合った助詞をつけて日本語として意味を解釈する
主語と述語が文章の骨格
- 文章の中では「主語と述語を正確に捉える」ことは、文章の骨格を捉えるための第一歩。
- しかし、特に述語が捉えられないと一気に文章構造を捉えるのが難しくなる。
例えば
- Products sold in the shop provide many benefits to consumers.
というセンテンスにはsold, provideという2つの動詞がありますが、どちらが述語でしょうか?
ここで主語productsに対する述語がsoldだと考えてしまうとprovideは主語がない動詞になってしまいます。
よってprovideが述語であり、soldは過去分詞としてproductsを修飾する修飾語になっていることが分かります。
複数の動詞の中から述語を見極める方法
- センテンスの中に複数の動詞が含まれている場合、どれが述語になるかを即座に見抜くスキルは重要。
- 特に過去形と過去分詞が同じスペルになっている動詞が、主語の直後に置かれた場合、「主語を後ろから修飾する過去分詞」「過去形の述語」のどちらなのかが、見分けにくいことがある。
見分ける方法として以下の3つを考えます。
①主語と述語の関係を考えたときに、受動態が適切か、能動態が適切かを確認する
- Products sold in the shop provide many benefits to consumers.
主語がproductsなので、soldが述語だとすると、soldは「過去形」で「能動態」ということになります。
しかし、productsが主語でsoldが能動態の述語だと
「productsは(何か)をsoldした」
という意味になり、明らかに意味がおかしくなります。
soldが能動態の場合、主語は主に「人」や「企業」になるはずであり、productsが主語の場合は明らかに受動態にしないとおかしいことが分かります。
よってsoldは述語ではなく過去分詞であると判断します。
②主語と述語の単複が一致しているかを確認する
- The computers developed in a company until 1995 and a university after 1996 have a positive effect on many people.
主語computersに対してdevelopedは述語なのか過去分詞かは①の考え方では判別出来ません。
developedは自動詞で「発展した」という意味を持つので、computersに対する述語としても「コンピュータは発達した」という意味で成立しますし、過去分詞になってcomputersを修飾し「開発されたコンピュータ」という意味でも成立します。
しかし、developedが述語だと考えた場合、1995まででセンテンスが終わり、and以降がもう1つのセンテンスが続くという解釈になるはずです。
この解釈の場合、主語がuniversity、述語がhaveになるわけですが、もしそうであれば、主語と述語の単複が一致せず矛盾することになります。
haveは複数形なので、haveの主語は複数形名詞でなければなりません。
このことからhaveの主語は複数形名詞のcomputersであり、従ってdevelopedは過去分詞であることが分かります。
③後ろに名詞(目的語)がある動詞は過去分詞ではない
- Apples harvested in the field made people healthy.
主語はApplesですが、それに続く動詞としてharvestedとmadeの2つがあります。この2つの動詞は①の見分け方でも②の見分け方でも判別できません。
そこで3つ目の方法として、後ろに名詞(目的語)がある動詞は過去分詞にならない、という原則を適用します。
なぜ過去分詞の後ろには名詞(目的語)が置けないかというと、過去分詞は、which is+過去分詞と同じと考えるからです。つまり受動態と同じです。受動態の後ろには目的語は置けないので、従って過去分詞の後ろにも目的語は置けないことになります。
harvestedの後ろはin the fieldという修飾語があるのに対して、madeの後ろにはpeopleという明確な名詞(目的語)があります。
このことからmadeは少なくとも過去分詞ではないことが分かり、よってharvestedは過去分詞であることが分かります。
⑤6.5レベルを目指すための重要文法項目
パラレルとは
- パラレルとは「A and B」のように2つ以上の要素が並列で並べた構造。英文の中ではこのように2つ以上の要素を並べることがよくある。
- A and Bだけではなく、「A or B」「not only A but also B」「from A to B」など他の形もある。
- パラレルが出てきたときにAとBが何かを正確に認識できないと英文はかなり違った意味に解釈されてしまう。
解釈を間違うと大きく意味が異なってしまう例
例えば極端な例ですが
- The store is selling materials and vending machines.
この文章のandは何と何をつないでいるでしょうか?
もしstoreとvending machinesがandでつながれていると考えるなら
「そのお店と自動販売機は原材料を売っている」
という意味になります。
でも、materialsとvending machinesがandでつながれているなら
「そのお店は原材料と自動販売機を売っている」
という意味になります。
自動販売機は売っている側なのか、売られているものなのか、andの解釈次第で180度答えが変わることになります。
このときに「どちらが意味として有り得そうか」で決めてはいけません。
意味で考えると、
「そのお店と自動販売機は原材料を売っている」
の方が正しく見えるかもしれません。
でもこれは間違いです。
あくまで構文ルールに沿って考えます。この文章では
「そのお店は原材料と自動販売機を売っている」
が正解なのです。
パラレルを正しく理解するポイント
- 原則1:「A and B」という形は必ずAとBの形と概念が揃っている必要がある
- 原則2:Aはandの直前まで続き、Bはandの直後から始まる(ただし修飾語や挿入句は除いて考える)
先ほどの例文
- The store is selling materials and vending machines.
を見るとandの後ろは名詞のvending machinesしかありません。
A and BのBの部分が名詞になっているということは、「原則1」からAは名詞であるとしか考えられません。
さてここでandの前にある名詞と言えばstoreとmaterialsになります。
ここで「原則2」を考えます。
Aはandの直前まで続くはずなので、もしmaterialsがAだと考えた場合はそのままmaterialsだけがAという解釈が出来ます。
一方、storeがAだと考えた場合、andの直前までのかたまりである「The store is selling materials」をAと考えなければなりません。
そうなるとAは述語を含む「節」ということになります。
この例文でBにあたるvending machinesは「節」ではないので、ここで「原則1」に反することになってしまいます。
よって、このandはmaterialsとvending machinesをつないでいるという解釈になり、storeとvending machinesをつないでいるという解釈は間違いだと分かります。
分かりやすく括弧をつけて表現すると
- The store is selling (materials and vending machines).
こんな構造になっていて、sellingの目的語が2つある、ということです。
1つのセンテンスに複数のandがあるケース
- 原則1.原則2.に従えば正しく解釈できる。
こちらの文章を見てみましょう。
- The store is selling materials and vending machines and also, is receiving high evaluation from customers, and inevitably, this is raising the stock prices.
最初のandはmaterialsとvending machinesをつないでいることは分かりました。
2つ目のandは何と何をつないでいるでしょうか?
このandの直後にalsoという副詞が入っていますが、「原則2」ですが、andの直前、直後に修飾語や挿入句が入る場合はその部分を排除して考えますので、このalsoは一旦排除して考えます。
そうするとandの後ろはis receivingという動詞があることが分かります。
つまりこのandの直後(A and BのBの部分)は、動詞ということになります。
ということは「原則1」からこのandの前(A and BのAの部分)は動詞になっていることが分かります。
andの前で、動詞は
is selling
の部分しかありませんので、2つ目のandは、動詞と動詞をつないでいる、という解釈になります。
ところで「原則2」を考えてみると、A and BのAの部分はandの直前まで続いていなければなりません。
is sellingという動詞とandとの間にはmaterials and vending machinesという表現が入っています。
これは先ほど見たようにis sellingの目的語です。
つまり、A and BのAの部分は、この目的語まで含んでいると考えなければなりません。
となると、Bの部分はどうでしょうか。
Aの部分が動詞+目的語、という形であれば、「原則1」よりBの部分も動詞+目的語になっているはずです。
andの後ろを見てみると、is receivingの後ろに確かにhigh evaluation from customersという目的語があるのが分かります。
ということで、このandは
「is selling materials and vending machines」という述語+目的語と「also, is receiving high evaluation from customers」という述語+目的語をつないでいることが分かります。
ここでも分かりやすく括弧をつけて表現するとこんな形になります。
- The store 【(is selling materials and vending machines) and (also, is receiving high evaluation from customers)】~
つまり主語がThe storeで、この主語に対する「述語+目的語」が2つあって、この2つがさらにandでつながれているという構造です。
では最後に3つ目のandを見てみましょう。
- The store is selling materials and vending machines and also, is receiving high evaluation from customers, and inevitably, this is raising the stock prices.
andの直後にinevitablyという副詞があるので、こちらも一旦排除して考えます。
すると、直後にthisという名詞があります。
andの直後が名詞なので「原則1」からandの前には名詞があるはず、と考えて直前の名詞customersを候補の1つと考えることが出来ます。
ただcustomersとthisがandでつながれているとして解釈するとこうなります。
- 【The store is selling materials and vending machines and also, is receiving high evaluation from (customers, and inevitably, this)】 is raising the stock prices.
ここで、1つ困ったことが起こります。
This store ~ inevitably, thisまでが1つのセンテンスになってしまい、thisの後ろのisが、主語がない動詞になってしまうことです。
これはマズい、ということでこの解釈は違っていることが分かります。
このisは単数形なので必ず主語は単数形でなければなりません。
isの前にある単数名詞と言えば、The store、high evaluation、thisの3つですが、既にThe storeはis sellingとis receivingが述語で確定しています。
そしてhigh evaluationはis receivingの目的語です。
こう考えると、isの主語はthisしか考えられなくなります。
つまりthisは主語でisが述語となります。
ここで3つ目のandの後ろにあるのは名詞ではなく、「主語+述語」という形であることが分かります。
「原則1」より、A and BのBが「主語+述語」ならば当然Aの部分も「主語+述語」となります。
andより前にある「主語+述語」と言えば、
- The store is selling materials and vending machines and also, is receiving high evaluation from customers
の部分です。
つまり3つ目のandは節と節をつなぐandであったということが分かります。
この解釈で考えると、「原則1」「原則2」の両方を満たすし、文法的にも間違いありません。
ということで全体の構造を示すと
- <The store 【is selling (materials and vending machines)】 and 【also, is receiving high evaluation from customers】>, and <inevitably, this is raising the stock prices.>
という構造になっています。
全体訳:「その店は原材料と自動販売機を販売しており、また顧客から高い評価を受けている。そして必然的にこのことが株価を引き上げている。
3つ以上の要素がパラレルで並ぶ場合
- パラレルにはさらに3つ以上の要素をつなぐ場合は「A and B and C」ではなく、「A, B, and C」という形になる
- A and B and Cのように見えても、必ずどちらかのandは小さな要素と小さな要素をつなぐandで、もう一方のandは大きな要素と大きな要素をつなぐandになっている
例えば
- There are English and French dictionaries and notebooks.
という文章にはandが2つあり、いかにも
A and B and C
という形に見えます。
しかし、そうではありません。
もしそうであれば、
EnglishとFrench dictionariesとnotebooksが並列の関係になります。
「辞書とノート」はまだ分かりますが、「英語と辞書とノート」が並列と言われてもまったくバランスが取れません。
英語は目に見えない「言語」であり、辞書とノートは目に見える「モノ」だからです。
ここではEnglishはdictionariesと並列ではなくFrenchとandでつながれていると考えるべきです。
そして、EnglishもFrenchもどちらも形容詞としてdictionariesを修飾していると考えるのが適切です。括弧をつけるとこんな感じになる。
- There are 【(English and French dictionaries) and (notebooks)】.
That節には3つの種類がある
- A. 関係代名詞のthat
- B. 同格のthat
- C. その他名詞節を率いるthat
3つの見極め方
| 区分 | thatの位置 | thatの後ろ |
| A.関係代名詞のthat | 名詞の後ろ | 不完全な文章 |
| B.同格のthat | 名詞の後ろ | 完全な文章 |
| C.名詞節を率いるthat | 主語、目的語、補語として使われる | 完全な文章 |
A.関係代名詞のthat
- 名詞の直後に置かれ、その名詞を修飾する
- 直後に入る文章は、主語・目的語のいずれかが欠けて、述語が入った不完全な文章。
訳し方
- ①名詞+that+V (主語が欠けた場合)⇒「Vする(名詞)」
She bought a book that is very popular in Japan.「彼女は日本で人気の本を買った」 - ②名詞+that+S+V (目的語が欠けた場合)⇒「SがVする(名詞)」
She has a book that the store sold.「彼女はその店が売った本を持っている」
B.同格のthat
- 名詞の直後に置かれ、その名詞の内容を説明する。
- 直後に入る文章は、主語・目的語・補語などが揃った完全な文章。
訳し方
- 名詞+that+S+V ⇒「SがVするという(名詞)」
She agrees with an idea that he should bring it.「彼女は彼がそれを持つべきという考えに賛成している」
- 同格thatを後ろに置くことができる名詞は限られている。
- 同格thatを後ろに置ける代表的な単語
assumption, belief, conclusion, condition, decision, evidence, fact, idea, information, knowledge, likelihood, opinion, possibility, problem, proof, trend
- 同格thatを置けない代表的な単語
case, experience, instance, situation, system
C.名詞節を率いるthat
- that節全体として名詞の扱いで、主語、目的語、補語として使われる。
- 直後に入る文章は、主語・目的語・補語が揃った完全な文章。
訳し方
that+S+V ⇒「SがVするということ」
- ①主語として使う例:
That he did not come yesterday is a serious problem.
「彼が昨日来なかったということは重大な問題である」
※通常that節を主語にした文章は以下のように仮主語の文章に変換される
It is a serious problem that he did not come yesterday.
- ②目的語として使う例:
Scientists suggest that the substance is harmful.
「科学者たちはその物質は有害であることを示唆している」
※このthatは省略されることも多い。
- ③補語として使う例:
The claim of these people is that governments should spend money on the field.
「これらの人々の主張は政府はその分野にお金を使うべきということである」
It is構文には3つの種類がある
- A. 仮主語のit
- B. 強調構文のit
- C. 前の文章の名詞を指す代名詞のit
3つの見極め方
| 区分 | 違い |
| A.仮主語のit | 後ろに名詞節を率いるthat節/疑問詞節か不定詞がある |
| B.強調構文のit | it isの後ろが名詞でその後ろに関係代名詞があるか、 it isの後ろが副詞でその後ろに名詞節を率いるthat節がある |
| C.代名詞のit | A.B.以外 |
A.仮主語のit
- 後ろに名詞節を率いるthat節か疑問詞節か不定詞が置かれて、真主語になっている。
訳し方
It is+名詞/形容詞+真主語(that節・疑問詞節・不定詞)
⇒「(真主語)は(名詞/形容詞)である」
- It is important that he discovered the formula.
「彼がその公式を発見したことは重要である」 - It was not known where he came from.
「彼がどこから来たかは、知られていなかった」 - It was a great damage to fail the test.
「そのテストに不合格だったことは大きなダメージだった」
B.強調構文
- 後ろに「名詞+関係代名詞節」か、「副詞+名詞節を率いるthat節」のいずれかが続く。
訳し方
- It is+名詞+that/which/who+V ⇒「Vするのは(名詞)である」
It is Dr. Stone who discovered the origin of the tool.
「そのツールの起源を発見したのはDr. Stoneである」 - It is+名詞+that/which/whom+S+V ⇒ 「SがVするのは(名詞)である」
It was a special computer that he brought to the room.
「彼がその部屋に持ち込んだのは特殊なコンピュータだった」 - It is+副詞+that+S+V ⇒ 「SがVするのは(副詞)である」
It was when we met in Japan that he told me the truth.
「彼が真実を話してくれたのは我々が日本で会ったときだった」
C.代名詞
- A.B以外の形になっている。
訳し方
- It ⇒「それ」
It is efficient in solving the problem.
「それはその問題を解決するのに効率的である」
同格
- 直前の名詞を別の表現で言い換えたもの。
- 同格の表現は必ず名詞の直後に置かれ、その名詞と同じ概念を示す内容で言い換えられている。逆に言うと直前の名詞と同じ概念でない内容であればそれは挿入句であっても同格ではない。
同格の5つの形
- ①カンマ・括弧(カンマの使用は同格以外の場合もある)
I am living in Tokyo, the largest city in Japan.
「私は東京、つまり日本で最大の都市であるが、に住んでいる」 - ②ダッシュ(ダッシュの使用は同格以外の場合もある)
My dream – to become a writer – finally came true.
「私の夢、それはライターになることであるが、がついに実現した」 - ③of+動名詞・名詞
He gave up his habit of smoking.
「彼は喫煙という習慣をついにやめた」 - ④to+不定詞
There are some ways to solve the problem.
「その問題を解決するといういくつかの方法がある」 - ⑤that節
Some people have an idea that students should use computers.
「何人かの人たちは学生はコンピュータを使うべきというアイデアを持っている」
※①②は「それは~(であるが)」「つまり~(であるが)」と訳し、③~⑤は「~という~」と訳す。
例示・列記
- 抽象的な表現をした後に、具体的なものを列挙する表現
例示・列記の3つの形
- ①カンマ
I am good at some subjects, history and mathematics.
「私は歴史や数学のような科目が得意である」 - ②コロン
There are three items: a drill, a hummer, and a measure.
「ドリルとハンマーとメジャーという3つのアイテムがある」 - ③such as, like, including
I have some pets such as a dog, a cat, and a bird.
「私は犬、猫、鳥のようなペットを飼っている」
※例示・列記は「~という~」「~のような~」と訳す。
挿入
- 文章の途中に、カンマとカンマで囲まれた形で入るもの。
- 挿入は同格の場合もあるが、必ずしも同格の意味ではない場合もある。直前の名詞と概念的に同じではない内容だったり、of以外の前置詞+名詞、現在分詞や過去分詞、接続詞+節、副詞の形だったりするときは同格ではなく、ただの修飾語になるので注意。
- 挿入された文章が同格以外の内容で、かつ節として長くなると、元の文章の構造を見失いがち。その場合は、一旦カンマとカンマで囲まれた場所を排除して、本来の文章の骨格を探すようにすると良い。
- ①同格の挿入
The idea, ones he opposed to, was supported by many people.
⇒onesはideasを指すので、直前のideaという名詞と、ones (which) he opposed toとは同じ概念、よってこれは同格
「その考え、それは彼が反対していたものであるが、は多くの人に支持された」 - ②同格でない挿入
The idea, although he opposed to it, was supported by many people.
⇒ideaという名詞の後ろが接続詞+節という従属節になっており、内容的にも同じ概念ではないので、同格ではない
「その考え、彼はそれに反対したが、は多くの人に支持された」
関係詞
- 2つの節をつなぐ役割を果たす。ただし、どんな節でも関係詞を使えばつなげられるわけではなく、「共通する単語」を持つ2つの節でなければならない。
- 2つの節のうち、どちらかは主節になり、どちらかは従属節となる。
- 従属節の中で、「共通する単語」が「主語」か「目的語」として使われているのか、「形容詞」として使われているのか、「副詞」として使われているのかによって、使われる関係詞が変わる。
パターン1.関係代名詞のケース
- 従属節の中で共通する単語が主語か目的語として使われている場合
1)従属節の中で共通する単語が主語として使われている場合
【変換方法】
- ①従属節の主語を関係代名詞に変換する
⇒関係代名詞は先行詞(主節の中の「共通する単語」)が人ならwho、人以外ならwhich, thatを使う - ②次に従属節を先行詞の直後に置く
【例】
- 例1:I use a pen. + The pen has a blue line. = I use a pen which has a blue line.
- 例2:The pen was expensive. + The pen has a blue line. = The pen which has a blue line was expensive.
※ 関係代名詞の後は主語が欠けた不完全な文章になる。
2)従属節の中で共通する単語が目的語として使われている場合
【変換方法】
- ①従属節の目的語を関係代名詞に変換する
⇒関係代名詞は先行詞(主節の中の「共通する単語」)が人ならwhom(whoではない)、人以外ならwhich, thatを使う - ②次にその関係代名詞を従属節の先頭に移動させる
- ③次に従属節を先行詞の直後に置く
- ④目的語として使われる関係代名詞は制限用法の場合(後述)、省略しても良い
【例】
- 例1:I use a pen. + I bought the pen today.
= I use a pen which I bought today.
= I use a pen I bought today.(関係代名詞の省略) - 例2:The pen was expensive. + I bought the pen today.
= The pen which I bought today was expensive.
= The pen I bought today was expensive.(関係代名詞の省略)
※ 関係代名詞の後は目的語が欠けた不完全な文章になる。
3)1)2)のうち、先行詞がa thingの場合、a thing whichの代わりにwhatを使う
【例】
- A thing is holidays. + I really want the thing. = A thing which I really want is holidays. = What I really want is holidays.
※ Whatの後は主語か目的語が欠けた不完全な文章になる。
パターン2.関係形容詞
- 従属節の中で共通する単語が形容詞として使われている場合
【変換方法】
- ①従属節の中の形容詞を関係形容詞に変換する
⇒関係形容詞は先行詞(主節の中の「共通する単語」)が人でも人以外でもwhoseを使う - ②次に関係形容詞の直後に元々の形容詞が修飾していた名詞を置く
- ③次に「関係形容詞+名詞」を従属節の先頭に移動させる
- ④次に従属節を先行詞の直後に置く
【例】
- 例1:I chose the strategy. + The strategy’s advantage was really large.
= I chose the strategy whose advantage was really large. - 例2:My friend moved from oversea. + The job of the friend is a doctor.
= My friend whose job is a doctor moved from oversea.
パターン3.関係副詞(または前置詞付き関係代名詞)
- 従属節の中で共通する単語が副詞として使われている場合
【変換方法】
- ①従属節の中の共通する名詞(副詞ではない)を関係代名詞に変換する
⇒もし、1単語で副詞として使われている場合(thereなど)、一旦「前置詞+名詞」の形に変換した上で、名詞部分を関係代名詞に変換する
関係代名詞は先行詞が人ならwhom、人以外ならwhichを使う - ②次にその関係代名詞を従属節の先頭に移動させる(前置詞はそのまま残す)
- ③次に従属節を先行詞の直後に置く
- ④②で従属節に残した前置詞は関係代名詞の直前に移動しても良い
⇒この形を前置詞付き関係代名詞と言う - ⑤「前置詞+関係代名詞」は「関係副詞」に置き換えても良い
⇒関係副詞は先行詞が場所ならwhere、時間ならwhen、方法(way)ならhow、理由(reason)ならwhyを選択する - ⑥関係副詞を使う文章は制限用法の場合(後述)、先行詞と関係副詞のどちらかを省略しても良い
【例】
- Last week, we visited Osaka. + We ate okonomiyaki there.
⇒従属節の中の副詞thereを「前置詞+名詞」に変換 - Last week, we visited Osaka. + We ate okonomiyaki in Osaka.
= Last week, we visited Osaka, which we ate okonomiyaki in.(③の状態)
= Last week, we visited Osaka, in which we ate okonomiyaki.(④の状態)
= Last week, we visited Osaka, where we ate okonomiyaki.(⑤の状態)
※ 前置詞付き関係代名詞と関係副詞の後は、主語・補語・目的語などが揃った完全な文章になる。
制限用法と非制限用法
- 関係代名詞、関係形容詞、関係副詞すべてに共通して、「制限用法」と「非制限用法」がある。
- 形式的な違いとしては、制限用法は先行詞と関係詞の間にカンマがないもの、非制限用法は先行詞と関係詞の間にカンマがあるもの。
- 制限用法の例:
I agree with the idea that she suggests. - 非制限用法の例:
I play baseball, which is popular in Japan.
- 使用シーンの違いとしては、制限用法は先行詞の候補が読者の中で複数が想定されるもので、関係詞の条件によってその複数の先行詞候補を絞り込んでいるような場合。
例えば
- I agree with the idea that she suggests.
この場合の先行詞は「the idea」ですが、何の脈略もなく「the idea」と言われても、読者は世の中にある無数のideaの何を指しているのか分かりません。
そこで、that以下の条件があり、「世の中に無数にあるideaのうち、that節以下という条件を満たすidea」というように先行詞の候補をthat節以下の条件で絞り込んでいます。
こういった場合に使うのが制限用法です。
制限用法を使う場合は、必然的に先行詞が複数あることを著者も認めていることになるため、複数候補が想定できない先行詞である場合は、制限用法は使えません。
- I play baseball, which is popular in Japan.
この場合は、baseballが先行詞になりますが、もしこの文章をカンマ無しの制限用法にしてしまうと、著者は世の中には日本でpopularなbaseballとそうでないbaseballがあることを認めていることになってしまいます。
しかし、そういったbaseballは存在しないため、この場合は非制限用法となります。
別の言い方をすると、制限用法は関係詞節がないと文章として成立しません。
制限用法の文章で、関係詞節を除いた箇所だけを提示すると「どの?」「どんな?」と聞きたくなります。
例えば
- I agree with the idea.
とだけ言われたら、「どのアイデアに賛成?」「どんなアイデアに賛成?」と聞きたくなるはずです。このような場合が制限用法です。
一方、
- I play baseball.
とだけ言われたときには「どの野球をした?」「どんな野球をした?」とは聞きたくはなりません。この場合は非制限用法です。
制限用法の訳し方
- 制限用法の場合は、関係詞節を先に訳して「(関係詞節)である(先行詞)」という訳になる。
- I agree with the idea that she suggests.
「私は、彼女が提案したアイデアに賛成している」
非制限用法の訳し方
- 非制限用法の場合は、先行詞のある文章を先に訳して、関係詞節は「そして、それは~」といった形で訳す。
- I play baseball, which is popular in Japan.
「私は野球をする。そしてその野球は日本では人気のものである」
⑥7.0レベルを目指すための重要文法項目
分詞構文/付帯状況/独立分詞構文とは
- 分詞構文も付帯状況も独立分詞構文も、関係詞と同様に2つの節をつなげるための構文。
- どんな節とどんな節をどうつなげるかによって、関係詞、分詞構文、付帯状況、独立分詞構文が使い分けられる。
以下の4つの文章のどれとどれをつなぐかによって何を使ってつなげるかが変わります。
- He plays baseball.
- Baseball is popular in Japan.
- He chews a gum.
- His teammates cheer for him.
(i) AとBをつなげる場合
- Bの主語がAの目的語になっている。主節の目的語や補語が、従属節の主語や補語、目的語になっている場合は関係代名詞でつなげられる。
【例】
- He plays baseball. + Baseball is popular in Japan.
= He plays baseball, which is popular in Japan.
(ii) AとCをつなげる場合
- Cの主語がAの主語になっている。主節の主語と従属節の主語が共通の場合は分詞構文でつなげられる。
【変換方法】
- ①従属節の主語を削除し、述語を動名詞に変える
- ②主節の後ろにカンマを置き、従属節を置く
- ③動名詞がbeingの場合は省略しても良い
【例】
- 例:He plays baseball. + He chews a gum.
= He plays baseball, chewing a gum.
(iii) AとDをつなげる場合
- 関係詞でも分詞構文でもつなげられない。関係詞でも分詞構文でも繋げられない場合は付帯状況または独立分詞構文でつなげられる。
【変換方法】
- ①従属節の主語の前にwithをつけて、述語を動名詞に変える
- ②主節の後ろにカンマを置き、従属節を置く(付帯状況)
- ③②の形からwithを削除する(独立分詞構文)
- ④動名詞がbeingの場合は省略しても良い
【例】
- 例1:He plays baseball. + His teammates cheer for him.
= He plays baseball, with his teammates cheering for him. (付帯状況) - 例2:He plays baseball. + His teammates cheer for him.
= He plays baseball, his teammates cheering for him. (独立分詞構文)
分詞構文/付帯状況/独立分詞構文の見極め
- 文章の中で、分詞構文、付帯状況、独立分詞構文をきちんと見極められるかは、初心者と中級者以上を分ける1つの境目。
- 初心者の場合、分詞構文や付帯状況を見ても、修飾語かな?挿入句かな?といったいい加減な処理で終わってしまうことが多い。
- 中級者以上は、これらの構文を正確に見極めて、元々どういった節と節をつなげたものかが理解できる。
- IELTSリーディングで7.0以上と7.0以下を分けるスキルの1つが、分詞構文、付帯状況、独立分詞構文を正確に見極めるスキル。
分詞構文の見極め
- 形として、主節の後ろに「カンマ+動名詞」の形があればほぼ間違いなく分詞構文。この場合の見極めは比較的簡単。
- 分詞構文が主節の前に置かれる場合もある。この場合、形式上「動名詞」から文章が始まるので見極めがやや難しい。それは動名詞がそのまま主節の主語になっている可能性もあるから。最終的に、文頭にある動名詞が主語なのか、分詞構文なのかは、その後に動名詞を主語にした述語が来るか、それとも別の主語が来るかどうかを見るまで分からない。
例えば
- Studying English is easy.
という文章は動名詞Studyingから始まっていますが、その後にこの動名詞を主語にした述語「is」があるので、Studyingは主語だと分かる。
- Studying English, I also work as a nurse.
という文章は動名詞Studyingの後ろに述語はなく、「I」という別の主語が出てくる。
この場合、Studyingは分詞構文であったことが分かる。
元の文章を復元する
- 分詞構文であることが分かった場合、従属節の元の形を復元できると意味が理解できる。
- 分詞構文は元の従属節の主語が省略されて、述語を動名詞に変えることで出来上がっているので、その逆の作業をすれば元の形を復元できる。つまり、省略された主語(これは必然的に主節の主語と同じ)を戻して、述語を動名詞から元の原形に戻す。
- Studying English, I also work as a nurse.
の場合は、Studyingの主語は、主節の主語である「I」だったはずなので、
- I study English.
というのが元の従属節の形になる。
分詞構文の見極めが特に難しいケース
- 分詞構文で見極めが難しいケースがbeingが省略された場合。
- be動詞を使った従属節(第2文型や受動態)は、分詞構文にするとbeingが入るが、これを省略されるケースがある。
- Known as a famous singer, he lives alone.
という文章は、「Being known」の「Being」が省略された分詞構文である。つまり、元の従属節は
- He is known as a famous singer.
という文章であったことが分かる。
- Kind to everyone, he is popular.
こちらは、「Being kind」の「Being」が省略された分詞構文になっている。
元の従属節は
- He is kind to everyone.
という文章。
- このような文章は突然過去分詞から始まっていたり、形容詞から始まっていたりするので、文章として違和感をもつはず。
- このような違和感がある文章に出会った場合は、とりあえず「beingが省略されているのではないか?」と考えてあげると解決できることも多い。
- このbeingが省略された分詞構文が即座に理解できると上級者と言える。
付帯状況の見極め
- 形としては「カンマ+with+名詞+動名詞」の形になっている。これは形が特徴的なので比較的見極めやすい。
- 主節の前に付帯状況が置かれる場合があるが、Withから始まるので分かりやすい。
付帯状況の見極めが特に難しいケース
- 分詞構文と同様にbeingが省略されたときに若干分かりにくくなる。
- He is famous, with his book sold everywhere.
という文章は、本来は
- He is famous, with his book being sold everywhere.
というものであるが、beingが省略されたもの。
元の文章を復元する
- 付帯状況も意味を理解するためには、元の従属節の形に復元することが有効。
- 付帯状況は従属節の頭にwithをつけて、述語を動名詞に変えているので、その逆の作業をすると元の形が復元できる。つまりwithを削除して、動名詞を原形に戻す。
- He is famous, with his book being sold everywhere.
こちらの従属節を元に戻すと
- His book is sold everywhere.
となる。
独立分詞構文の見極め
- 付帯状況よりも格段に見極めが難しい。withが省略されただけで、一気に形が分かりにくくなる。
- 独立分詞構文がサクッと見極められたら、見極められない英文はないと考えられるぐらい、英語の中でも最難関の構文。
- ポイントは「名詞+カンマ+名詞」という形を見たときに独立分詞構文の可能性を考えられるか、というところ。
先ほど挙げた例文である
- He plays baseball, his teammates cheering for him.
が、長文の中で出てきたときに即座に独立分詞構文と見極められるかという話。
見極めのポイントは
「名詞+カンマ+名詞」
独立分詞構文は、絶対ではないですが、多くの場合「名詞+カンマ+名詞」という形を伴う。
上記の例文で言うと
- baseball, his teammates
の部分。
「名詞+カンマ+名詞」が現れるのは4つのケース
- そもそも名詞は、主語、目的語、補語以外で使われるときはすべて修飾語になるはずなので前置詞を伴う。
- そして、主語、目的語、補語として使われる場合も普通は「名詞+カンマ+名詞」という形にはならない。主語の場合は文頭に使われるか、その直前に接続詞がある。目的語と補語の場合は、その直前に動詞がある。
- このため「名詞+カンマ+名詞」は通常の形ではありえない形。
- 「名詞+カンマ+名詞」というのは主に以下の4つの形が考えられる。
- ①副詞句または副詞節の後の主語
例:When we play with the computer, we broke it. - ②「A, B, and C」といった3つ以上のパラレルにおける「A, B」の部分
例:We bought apples, bananas, and melons in the shop. - ③同格・挿入句
例:I lived in Tokyo, the biggest city in Japan. - ④独立分詞構文
- 文章を読んでいて「名詞+カンマ+名詞」の形が出てきたときはこの4つを疑う。
- このうち①についてはその前が副詞であることから、この副詞が終わったら主節の主語が出てくるはずと思いながら読んでいるため他と間違うことは少ない。
- ②③④は少し見分けにくいが、②と③は、その特性上、カンマの前の名詞とカンマの後ろの名詞は並列・同格の関係でなければならない。
- これで、①②③なのか、④なのかが見極められる。
- He plays baseball, his teammates cheering for him.
この文章で「baseball」と「teammates」はどう考えても並列にも同格にもなりえない。
⇒ここで、④の可能性を探る。
⇒すると、名詞の直後に「cheering」という動名詞が見える。
⇒これで独立分詞構文であることが確定する。
- このように独立分詞構文は慣れないうちは、なかなか見極めが難しい。
- 初心者に至っては、もはや疑問に思うことすらなく、「挿入句だろう」「何かが省略された文章だろう」ぐらいの解釈でスルーしてしまうことも多い。
- しかし、頻度は少ないもののIELTSでもこの構文は出てくるし、高得点域の問題では、独立分詞構文が見極められるかという問題も含まれる。
独立分詞構文の見極めが特に難しいケース
- 独立分詞構文でかつbeingが省略された文章は、さらに難易度が高い。
- この文章が、beingが省略された独立分詞構文であることが一度で分かればリーディング用の文法は卒業。
- He suggests the theory, his book explaining it supported by many scientists.
分詞構文、付帯状況、独立分詞構文の日本語訳
- これら3つは、明確に決まった訳はない。主節と従属節との内容の関係性を分析してから、適切に訳す必要がある。
- ただし、主に用いられるのが以下の3つ。
- ①同時成立:
従属節と主節の内容が同時に進行している動作を示す場合。
従属節の内容が成立していなくても主節は成立する場合。
⇒「~ながら」と訳す。asの代わり。 - ②因果関係:
従属節が原因で、主節が結果という因果関係になっている(つまり従属節が成立しなければ主節は成立しない)場合で、なおかつ、従属節が既に成立している事実になっている場合
⇒「~なので」と訳す。becauseの代わり。 - ③前提条件と結果:
従属節が前提条件で、主節が結果という因果関係になっている(つまり従属節が成立しなければ主節は成立しない)場合で、なおかつ、従属節が未成立の前提や未来の想定になっている場合
⇒「~ならば」「~のとき」と訳す。if/whenの代わり。
3つの解釈をどう判断するか
- 3つのうち最も多いのが、①同時成立。分詞構文の本来の意味は「同時成立」なので、これがもっとも基本かつ頻出の意味。
- ②因果関係、③前提条件と結果との大きな違いは、従属節の内容が成立しなくても主節の内容は成立する、という点。
- 日本語訳としてまず試してみるべきが「~しながら~」という訳。接続詞の「as」に近い訳。
- ①で考えてどうしても辻褄が合わない場合で、主節と従属節の間に明確な因果関係がある場合、②③の可能性を考えて「~なので~」「~ならば・のとき~」という訳を試す。
- 日本語としての自然さではなく、あくまで主節と従属節との関係性に着目する。
- 分詞構文の本来の意味は同時成立なので、もし主節と従属節の関係が同時に成立する内容であれば躊躇なく①を選択する。
- なお、②と③の大きな違いは、②は従属節が、既に起こった原因・変えようがない事実を説明しているのに対して、③は従属節が、まだ起こっていない原因・未来の想定を説明しているという点。②はbecause、③はwhen・ifの代わりに使われていると考える。
- He plays baseball, chewing a gum.
「彼はガムを噛みながら野球をしている」
この文章は「彼は野球をする」と「彼はガムを噛んでいる」という内容を見たときに、「ガムを噛む」が成立しなければ「野球をする」が成立しない、ということはない。別にガムを噛まなくても野球はできる。よって②や③ではなく、同時に進行していることを述べているに過ぎない。①の同時成立と判断して、「~ながら」と訳す。
- Studying English, I also work as a nurse.
「私は、英語を勉強しながら、またナースとして働いている」
こちらも「英語を勉強する」と「ナースとして働く」という2つの内容を見たときに、「英語を勉強する」が成立しなければ「ナースとして働く」が成立しない、ということはない。英語を勉強しなくてもナースとしては働ける。よって、②や③ではなく、①の同時成立と判断して、「~ながら」と訳す。
- He plays baseball, with his teammates cheering for him.
「彼は、チームメイトが応援する中、野球をしている」
こちらも「彼は野球をする」と「チームメイトが彼を応援する」という内容を見たときに、「チームメイトが応援する」がなければ「野球をする」が成立しない、ということはない。応援がなくても野球は出来る。よって②や③ではなく、①と判断する。ただし、「~ながら」だと日本語的に不自然なので「~中」と訳す。
- Kind to everyone, he is popular.
「彼はみんなに親切なので、人気がある」
「彼は親切」と「彼は人気がある」という内容を見たときに、明確な因果関係がある。「彼が親切」でなければ、「人気がある」は成立しない。また「彼は親切」というのは変えようがない事実であり、「もし親切だったら」という未来の想定ではない。よって②の因果関係が適切。
- He is famous, with his book sold everywhere.
「彼の本はどこでも売られているので、彼は有名である」
「彼は有名」と「彼の本はどこでも売られている」という内容を見たときに、明確な因果関係がある。彼の本が売られていなければ、「有名である」は成立しない。また「本が売られている」というのは確定した事実であり、「もし売られていれば」という未来の想定ではない。
よって②の因果関係が適切。
3つ以外の解釈になるケース
- 主節と従属節の関係性が①同時成立でも②因果関係でも③前提条件と結果でもない場合がある。この場合は、主節との関係性から適切な訳を探すしかない。
- Known as a famous singer, he lives alone.
こちらは「有名な歌手として知られている」と「一人で住んでいる」という内容が明らかに因果関係ではない。有名歌手として知られていなければ一人暮らしはしない、という関係性は成立しない。よって第1候補は①同時進行となるが、「~ながら」のような同時進行の訳を当てはめてもぴったり来ない。
その理由は内容的に「有名歌手として知られている」という内容と、「一人暮らしをしている」は、あまりに対照的な内容であるから。
「有名歌手として知られている」なら多くの人に囲まれた華やかな生活をイメージするのが一般的。そのイメージを覆すような「一人暮らし」という事実を説明している内容なので、この従属節と主節の関係性は「対比」と考えるのが自然。
「有名な歌手として知られているのに」「有名な歌手として知られている一方で」といった逆接、対比の訳し方がもっとも良い。
3つ接続詞が使われている場合は接続詞の解釈を優先する
- 分詞構文の前に補助的に接続詞がつけられる場合がある。
- これは著者がその接続詞の意味で解釈して欲しい場面なので、その場合は接続詞の意味を優先する。
- When considering the fact, I agree with the idea.
「その事実を考えたときに、私はその考えに賛成する」
⇒Whenが使われているので、前提条件を示す「~のとき」という訳をそのまま使って解釈する。
- I found this book interesting, so recommending it to you.
「この本は面白い。それであなたにお勧めする」
⇒soが使われているので、結果を示す「それで」を使って解釈する。

