1-2)IELTSの「真の難易度」「6.5/7.0の壁」を理解する

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IELTS対策スタートにあたり、IELTSの難易度を正確に理解し、どのぐらいの時間を投入する必要があるかをイメージしましょう。

①IELTSの「真の難易度」を理解する

IELTSはどれぐらい難しいのか、その難易度を正しく理解することが成功の第一歩です。

難易度を正しく理解しないと痛い目に合う

難易度を過小評価している場合起こりやすい問題

  • 「1回の受験で目標スコアを出そう」と初回受験への準備が長引き、正確な実力把握が遅れる
  • 「出願締め切り3カ月前からIELTS対策開始」など、無理な計画を立ててしまい、あとから修正せざるを得なくなる。
  • 最初から十分な学習時間を確保せず、スコアが低迷し、結果的に受験期間が長くなる。

 

気付くのが早いほど有利

  • 多くのIELTS卒業生は、複数回数受験した後で初めて「想像以上に難しい」「最初からもっと本腰を入れるべきだった」と現実を実感する。
  • この現実をスタート前に受け入れ、対策に臨むことが重要。
公式スコアの説明では不十分

公式スコアの説明だけでは難易度は実感できない

  • IELTSではオフィシャルに各スコアの違いを以下のように表現している。
スコア評価
9.0エキスパートユーザー
8.0非常に優秀なユーザー
7.0優秀なユーザー
6.0有能なユーザー
5.0中程度のユーザー
4.0限定的なユーザー
3.0非常に限定的なユーザー
2.0散発的ユーザー
1.0非ユーザー

 

  • この表からスコアの違いを理解するのは困難。
  • 知りたいのは「問題は6.5とか7.0という水準が具体的にどの程度の難しさなのか?」「このスコアを獲得するために、どれほど大きな努力が必要になるのか?という点
他の英語検定試験との比較

他の英語検定試験との比較

  • IELTSの難易度をより分かりやすくするために、他の英語検定試験との比較をしてみる。
IELTSTOEFL iBTTOEIC英検
9.0118-120
8.5115-117
8.0110-114
7.5102-109
7.094-1011級
6.579-93950-
6.060-78850-945準1級
5.546-59550-845
5.035-45400-5452級
4.532-34-395
4.0準2級
3.5
3.03級
2.5
2.04級

 

  • この比較からIELTS7.0を狙うなら、TOEICでは950以上、英検で1級程度を獲得する努力が必要であることが分かる。
日本人の平均点とスコアの分布

日本人の平均点とスコアの分布

  • 日本人のIELTS受験者の平均スコアと分布を見てみる。

 

日本人受験者の平均スコア(2023-2024年)

リスニングリーディングライティングスピーキングオーバーオール
アカデミックモジュール5.96.15.75.55.9
ジェネラルトレーニングモジュール5.95.65.75.75.8

 

日本人受験者のスコア別分布(2023-2024年)

IELTSスコア
(オーバーオール)
アカデミック
モジュール
ジェネラルトレーニング
モジュール
8.0以上上位2%上位4%
7.5以上上位6%上位9%
7.0以上上位15%上位16%
6.5以上上位31%上位29%
6.0以上上位54%上位50%

(参考:https://ielts.org/researchers/our-research/test-statistics)

 

IELTS7.0は受験者の上位15%

  • 注意したいのは、IELTS受験者は、一般の日本人よりも学習目的が明確で、英語に本気で向き合っている人達が多い点。これらの数値は、日本人の中でも英語に関して高いレベルにある人達の中での数値である点。
  • IELTS7.0を狙うなら、これらのIELTS受験生の平均よりもさらに1.0以上高く、上位15%程度の中に入るだけの努力が必要。
英語以外の資格試験や活動との難易度の比較

英語以外の活動との難易度比較(主観的指標)

  • IELTSの難易度を、英語学習以外の資格試験や活動に置き換えて主観的に比較してみる。

IELTS
スコア
努力レベル他の資格で例えると他の活動で例えると
7.5一般人が辿り着ける上限
直接の知り合いにはなかなかいない
司法試験(司法予備試験)
個人競技で全国上位
オリンピック出場
SNSフォロワー10万人獲得
7.0これまでの人生で一番の努力
二度とやりたくないレベル
出来る人の方が少ない
司法試験(法科大学院)
公認会計士
医師国家試験
個人競技で都道府県代表
富士山登山競争
20キロ減量
SNSフォロワー1万人獲得
6.5気合いを入れた努力
常に辞めたい
出来ない人もたくさんいる
中小企業診断士
ITストラテジスト
大型自動二輪(一発)
学年で1位になる
フルマラソン完走
10キロ減量
SNSフォロワー5000人獲得
6.0通常の努力
継続・我慢はある程度必要
途中でやめたいと思う
ファイナンシャルプランナー1級
ITコーディネータ
クラスで3番になる
富士山登頂
5キロ減量
SNSフォロワー1000人獲得
5.5手軽な努力
学習を始めてしまえば届く確率は高い
むしろ学習始める壁の方が大きい
運転免許
日商簿記3級
高尾山登頂
SNSフォロワー300人獲得
  • 目標スコアが7.0であれば、それは人生で最も大きなチャレンジの一つになると覚悟し、計画を立てることが成功の鍵。

 

②実際の受験回数と受験期間

IELTS卒業生は、実際にどのぐらいの期間、何回受験して目標を達成したのでしょうか?

IELTS卒業生の平均データ

卒業生全チアの平均データ(IELTS卒業生20名)

初受験からIELTS卒業まで:

  • 平均13.9回受験、受験期間23.5カ月

 

条件を絞ったデータ(より事態に近いスコアの伸び)

初めてオーバーオール6.0を獲得してからオーバーオール6.5に達するまで:

  • 平均3.6回受験、受験期間5.8カ月

初めてオーバーオール6.0を獲得してからオーバーオール7.0に達するまで:

  • 平均11.2回受験、受験期間17.1カ月

 

  • 「思ったよりも受験回数が多く、受験期間も長い」と感じたかもしれないが、この実態を受け止めることが正確な難易度理解の第一歩。
  • この実態を受け止め、長期的な計画を立てていく。

 

③IELTSスコアの伸び方

多くの人が「勉強はすればするほど直線的に伸びる」と感じていますが、IELTSのスコアは必ずしもそうはなりません。

IELTSの「0.5点の重み」

4つのスコアに受験生の7割以上が集中

  • IELTSのスコアは5.5、6.0、6.5、7.0のわずか4つのスコアに全受験生の7割以上が集中している。

日本人受験者のスコア別分布(2023-2024年)

IELTSスコア
(オーバーオール)
アカデミック
モジュール
ジェネラルトレーニング
モジュール
9.00%0%
8.52%3%
8.04%5%
7.59%7%
7.016%13%
6.523%21%
6.024%20%
5.515%16%
5.06%9%
4.52%4%
4.0以下1%2%

(参考:https://ielts.org/researchers/our-research/test-statistics)

 

  • この密集したゾーンにおいて、わずかオーバーオール0.5点を挙げるのには、非常に長い時間を要する。
  • 勉強しても勉強しても同じスコアに留まり続ける、という状況がよく発生するのはこのため。
語彙カバレッジ98%の法則

語彙カバレッジとは

  • 言語学習における成長は、直線的ではなく指数関数的に伸びる傾向がある。この現象を理解する鍵が「語彙カバレッジ」
  • 「語彙カバレッジ」とは、言語学の言葉で、読む文章に出てくる語彙のうち、どのぐらいの比率の語彙を知っているかを表した指標。例えば100語の文章中95語は知っている単語、5語が知らない単語という場合、カバレッジ95%となる。
  • この語彙カバレッジに応じて文章の理解度が大きく変わる。
語彙カバレッジ理解度
98%以上スムーズな理解が可能(1ページに3-5語の不明語)
95%何となく理解が分かる程度
90%以下内容をほぼ理解できない状態

 

成長曲線は非線形

  • 単語を90%覚えても、実はほとんど成果が出ない
  • 95%になると少しずつ成果が見え始め98%を超えた瞬間に一気に読めるようになり「成果」が現れる。
  • 語学学習は、直線的な成長ではなく、「一定レベルまではどれだけ頑張っても成果がでないが、一定レベルを超えると急激に成果が現れる」という非線形な伸び方をする。

成果を出すためのキーワードは「徹底度」

  • スコアが6.0~6.5の壁で停滞しているなら、その原因はまさに「あと一歩の徹底度」の不足。
  • 新しい教材に手を出すよりも、今取り組んでいることの完成度を100%に引き上げることこそが、最短で目標にたどり着くルート。

 

④「6.5/7.0の壁」を突破する3つの戦略

多くの人が苦しむ「6.5の壁」「7.0の壁」が生まれる理由と、それを乗り越えるための具体的な対策を整理します。

壁が生まれる3つの理由

理由1:初期のスコアの伸びからの錯覚

  • 多くの受験者は、初回受験では実力が発揮できない。緊張もあり、試験そのものに集中しにくいため。
  • このため2回目の受験では、1回目の受験よりも0.5程度高いスコアが出ることが多い。これが本来の実力。
  • 受験者は少し勉強すれば0.5上がる」と錯覚し、その後の伸び悩みでモチベーションを失いがち。

 

理由2:大学受験水準からの限界

  • 日本の大学受験のレベルはIELTSだと6.0前後。大学受験経験者は、その知識で6.0までは比較的スムーズに到達する。
  • しかし、そこから先は大学受験時以上の取り組みが必要になってくるため伸び悩むことが多い

 

理由3:「学習の原体験」からの脱却

  • 言語学習はカバレッジが98%という閾値を超えたときに一気に成果が現れる。
  • それに対して、多くの受験者がもつ学習の原体験(大学受験など)では、90%程度の完成度で合格圏に到達できることが多い。
  • IELTSの取り組みにおいてこれらの原体験と同様の徹底度(カバレッジ90%程度)で学習してしまい、6.0前後のスコアで停滞するケースが多い。
壁を乗り越える3つの方法

①徹底度の追求(98%の習慣)

  • 6.5-7.0の壁を越えるために最も意識すべきは、学習の徹底度。
  • 「やるべきこと」に対して95%で満足せず、98%以上で成果が出て初めて満足する、という思考を持つ。

徹底度を追求する例

  • 単語:単語帳の正解率を80%から98%に引き上げる
  • リスニング:スクリプトに出てくる98%以上の単語を聞き取れるようにトレーニングする
  • ライティング:Task2の添削で文法ミスを5カ所以下にする
  • スピーキング:設問100問に対して98問以上即答できるように準備する

 

②自分の限界を伸ばす

  • 6.5-7.0の壁を越えるためにもう1つ意識すべきは、自分の限界を引き伸ばすこと。

限界を伸ばす例

  • ライティング:自分が知っている表現だけに頼らず、より自然で高尚な表現に積極的に触れ、真似して使ってみることで、表現力を広げる。
  • リーディング:難しい問題でも逃げずに挑戦し、正解に辿り着けるような精読のトレーニングを課す。

 

③マイクロゴールを設定する

  • 壁に当たってスコアが低迷している時期は、精神的にも厳しい時期。ここを乗り越えるために、日々の小さな前進を実感できるマイクロゴールを設定する。

マイクロゴールの例

  • リスニング:Part1やPart4の空欄補充で空欄をゼロにする
  • リーディング:時間内にすべて読み終われるようにする
  • ライティング:最後まで書き終えて文法チェックまで行う
  • スピーキング:沈黙をなくす

 

「1-3)自分に合ったスコア戦略を適切な受験タイミングで目指せ」に移る

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